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岬鷺宮「僕らが明日に踏み出す方法」(メディアワークス文庫)感想

1 僕らが明日に踏み出す方法

(岬鷺宮/2017年6月/メディアワークス文庫)


 高校生男女(他校)が協力しつつタイムループ。


 ストーリーが非常によくできていました。

 適度な間隔で伏線を張り、終盤に一本ずつゆっくり回収。


 始まりは七月十日。


 ピアノに打ち込むが、六日後のコンクール本番まで

もっと練習したいと苦悩し、今日を何度もやり直したいと

願う主人公の少年。


 一方、「仲良しの友達枠」だった同校男子イケメン

から最近、恋愛対象として告白され動揺、六日後に返事を

せねばならず、今日を何度もやり直したいと願うヒロイン。


(このイケメンと主人公は別人です。念のため。)


 この二人が、それぞれ「同じ一日を繰り返す」ように

なるところから話は始まります。


 翌朝、目覚めると、日付は七月十日へ戻っているのです。

 前日に自分がやったこともリセット。周囲や世間も、

同一の言動を取ります。


 やがて、その他の法則も判明していきます。


・戻れるのは「今日一日」だけ


・本人の記憶は消えず、蓄積される。取得した能力も

蓄積(ただし、疲労などダメージはリセット)


・物体もリセットされるため、メモ類は残せない。

スマホのデータも一日前の状態へ戻るため、メアド等も

頭で暗記するしかない


 このループ現象を、主人公はピアノ練習用に、

ヒロインは遊び用に充てます。


 特にヒロインの発想が見事(笑)。

 同じ日を何回も繰り返せて、リセットされる以上、


・今回は豪遊(飲み食いしまくっても、記憶のみ残り、

お金は元通り)、次回は一日家でゴロゴロ、も可


・恥ずかしい格好で遊んでも、誰の記憶にも残らない


・知人から重大情報も聞き出せる(翌日には聞いた事実も

リセットされ、知人の記憶にも残らずに済む)


 などもできるわけです。なるほどなあと。

 もし私が同じ状況になっても、思い付かなかったかな(笑)。


 そして、ループが起こらず翌日へ進む条件は、後悔なし

の満足な一日を過ごすこと。


 さて、七月十二日、主人公とヒロインはバッタリ出会い、

互いが「タイムループ仲間」だと知ると、協力関係に。


 ルールも統合され、今度は「二人とも満足しないと、

次の日へは進めない」ことになります。つまり、どちらか

一方だけが先へ進むことはできない。


(二人が会う前までは、バラバラだった。例えば、ループ

二日目、七月十一日を主人公は五回、ヒロインは八回

繰り返してから翌日へ進んだ。)


 私は、これを「作者は手を抜いたな」と感じました。

 満足した者が一人でどんどん先へ進む設定にした方が、

パラドックスも発生し面白くなるのにと。


 ところが、浅はかな私の大間違い。

 しっかり理由があったのです。これも、前述の「ちゃんと

回収される伏線」の一つ。


 他にも要素は盛りだくさんで、


・二人による、ループを利用した悪ふざけ


・三角関係の行方


・主人公がピアノに打ち込む理由


・告白の返事にヒロインが迷う理由


・ピアノコンクールの行方


・なぜ二人同時にループが起きたか


・そもそも、なぜループが始まったか


 等々、謎やお楽しみは尽きません。


 全ての伏線にケリがついてゆく終盤、私は三回ほど

泣きそうになりました。


 納得と感動の娯楽作品。これは本当にすごい。おすすめ。

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