陸
それから三日経ち…
「見つからないな…、姉御…」
まだお菊ちゃんは見つかっていなかった。
「…だ、大丈夫だよ!きっと見つかる!」
私は励ますも、暁さんの言葉で崩れた。
「…どっかでのたれ死んでるんだろ。」
暁さん!!それは言ってはダメです!!
案の定、座敷くんは言い返す。
「そんな事ない!!姉御は強いんだ!!姉御は今まで負けた事ないっ!!…絶対、生きてるんだぁ〜!!」
ついに座敷くんが泣き出してしまった。
「あああ、泣かないで!」
「…はぁ、これだからガキは…」
「暁さん!」
暁さんはやれやれと言った顔で言う。
なんとかなだめていると…
「優香ー!」
「あ、夢美!どうしたの?」
夢美がこっちに走ってくる。
「お、お兄ちゃんが!!」
「「え?」」
暁さんと私は顔を見合わせる。
そして、あわてている夢美をなだめて、話を聞く。
「とにかく来て!!」
そう言われたため、店へ行く。
そして、着いた時一番最初に見たものは…
「…薫…、さん…?」
傷だらけで休んでいた薫さんだった。
「薫さん!?」
声をかけると目が開いた。
「…あぁ、優香ちゃん。…ごめんなさいね、こんな姿で…」
「そんな事言ってる場合じゃないです!どうしてこんな事に!?」
「…アタシとした事が、やられちゃったのよ。…少しも気づけなかった。あ〜ぁ、しばらく動いてないからカンが鈍っちゃった。アンタと一緒に騒いでいたのが懐かしいわよ。暁。」
一人ハテナを浮かべていた私に、薫さんは笑いながら説明してくれた。
「あぁ、優香ちゃんはわからないわよね。昔は私と暁と犬っころ、あと二人くらいで暴れまくってたのよ。」
「へぇ…」
暁さんも…
ちょっと想像してみたが、今とあまり変わらなかったのでやめた。
でも薫さんは…?
「あー、あの頃が懐かしいわ〜…」
「…お前が気付かないとなると、かなりの強敵か…?」
「…うーん、鈍ってるし、はっきり強いとは言えないけど…、雑魚では無いわね。いくら鈍っててもまだ雑魚に負ける程では無いわ。」
口ぶりからして、昔はかなり強かったようだ。
「なんか手がかりは無かったんですか?誰か見たとか…」
「…うーん、風…、突風が吹いたわ。かなり凄いやつ。」
「おい、それって…」
暁さんが珍しく少し焦っている。
「…あの子では…、ないと思うんだけど…」
「あの子?」
私は二度目のハテナを浮かべた。
すると今度は暁さんが教えてくれた。
「神社の東に山があるだろう。その山にアイツ、烏天狗の翼が住んでいる。知り合いで突風を作ることが出来るのはアイツだけだからな。」
「なるほど…」
つまり、その人に疑いがかかっているのか…
「それと、女の子を見た気がするわ。なんか丸いものを持っている女の子。」
「!!」
座敷くんの動きが一瞬止まった…?
「…まぁ、とにかく翼の所へ行くのがいいだろう。」
「…そうね。…私は怪我で行けないけど…、優香ちゃんも行くんでしょ?三人で大丈夫なの?」
「そうだね。私もお兄ちゃん残して行けないし…」
心配する二人をなんとか安心させて、私達はその場を立ち去った。