伍
犬神さんと別れた後、初めて聞いた暁さんのデレに顔を綻ばせながら神社へと帰ると、誰かが倒れていた。
「暁さん!!誰か倒れています!!」
そう言うと、暁さんは心底不思議そうな顔をした。
「は...、誰かが倒れてるなんて、日常茶飯事だろ。」
「なっ!?そ、それは...」
確かに、妖怪の世界では当たり前なのかも、でも私は人間だ。
「...私は人間ですから。」
そう言って、私は倒れている妖怪を支えた。
「大丈夫!?しっかりして!!」
意識がない、見たところ男の子のようだ。
このくらいなら私でも抱えることができる。
私は急いで中に運び、必死に手当てしようとする。
しかし、私はここに来たばかり、包帯や消毒の場所なんて知るわけもなく...
それに、暁さんは...
「......」
私が勝手にここに知らない妖怪を入れたのが悪かったのか、すごく不機嫌である。
隣の部屋にいるくらいだし、きっと聞いても教えてくれないだろう...
仕方ない、覚悟を決めよう。
私は、とある理由で使えなかったハンカチを使って、特にひどかった腕の傷を止血する。
「よし、あとは水で血を洗い流せば...」
私は桶の中に水を入れ、男の子についている血をぬぐう。
少し痛かったのか、男の子の目が開く。
「あっ!ごめん、痛かった?」
「いや...」
男の子はなにやら浮かない顔だ。
「アンタ、だれ?」
「私は優香。君は?」
男の子は起き上がって、胡坐をかき、名乗った。
「オイラは座敷童。座敷って呼ばれてる。...んで、アンタが助けてくれたのか?」
「え、うん。」
「...そ、なら姉御をしらねぇか?お菊って言うんだ。」
焦っているような顔でそう聞く座敷くん。
「...ごめん、知らないや。」
「そうか...」
あきらかにがっくりしている。
どんな子か聞いてみる。
「あのな!あのな!姉御はめちゃくちゃつえーんだ!普段は少し気が強いけど、おとなしいし、俺ら性格真逆だけど結構上手くいってんだ!」
「へぇ、すごいね!」
「だろ!?そんでな!そんでな!」
...この後、一時間も話に付き合う羽目になってしまっていた。
そして一時間後。
「って、こういうお方なんだ!姉御って!」
わかったこと、お菊ちゃんと座敷くんはいいコンビ。
そして、座敷くんはおしゃべり好き。
でもその子のことがよくわかった。
「へぇ、そんな子なんだ。もし、見つけたら知らせるね?」
「ああ!」
座敷くんの話をまとめると、お菊さんというのはお菊人形らしい。
黒髪で、黒い着物、菊の花のかんざしを付けているという。
そして、当の本人は...
「見つかるまでここにいていいか!?」
「ええっ!?」
と、いうことで、同居人が増えました。