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水羊亭日本古典文学集

小説・土蜘蛛草紙

作者: 綾乃弓彦

   1



 神無月も二十日をすぎた初秋の午后。


 紅葉狩りの帰路であった。


 源頼光(よりみつ)と渡辺(つな)が空飛ぶドクロの怪異を目撃したのは蓮台野(れんだいの)


 洛外の貧しき人々が死者の亡骸(なきがら)をうち捨てていく野ざらしの(わび)しき墓場であった。


 枯野をゆらす風の音に時おり腐肉をむさぼる野犬の気配がまじる。


 だれもがさけてとおる道だが、酔狂(すいきょう)なふたりの武士(もののふ)(おく)することなく馬をすすませていた。


 はじめに気づいたのは頼光(よりみつ)であった。


 おぼろな光をはなつドクロがひとつ、音もなく空を(はし)ると雲の中へ消えた。


 紅葉狩りの(きょう)は一気に()めた。


「見たかよ」


(しか)と」


「追うぞ」


御意(ぎょい)


 頼光(よりみつ)の言葉に(つな)がうなづくとドクロの消えた方角へ馬首をめぐらせた。


 平安京の守護者たる武士(もののふ)の血がわきたっていた。



   2



 源頼光(よりみつ)は清和天皇の後裔(こうえい)である。


 本来、供の者をひとりしかつけず気軽に出歩けるような身分ではないが、詩歌に(きょう)じるだけしか能のない脆弱(ぜいじゃく)な貴人ではない。


 腰に帯びた三尺の太刀(たち)は「宝剣十柄(ほうけんとつか)」に数えられる名刀〈膝丸(ひざまる)〉。


 あまたの戦場を血刃で駆けぬけた音にきこえし猛賁(もうふん)名将である。


 頼光(よりみつ)につきしたがう渡辺(つな)は、簡素なヨロイの腹巻を身にまとい、弓箭(きゅうぜん)を左右にそなえた武者姿であった。


 立烏帽子(たちえぼし)狩衣(かりぎぬ)と云う頼光(よりみつ)にくらべると、いかにも物々しい。


 頼光(よりみつ)は無粋な(つな)を紅葉狩りへつきあわせたつもりだが、(つな)頼光(よりみつ)の護衛任務としかとらえていなかった。


 美しい紅葉を愛でながらも、頼光(よりみつ)の身辺へ目をくばる生真面目さと無骨さに(つな)の人柄がにじみでていた。


 十人の郎党をひきつれるより、(つな)ひとりの方がずっと頼りがいがある、と頼光(よりみつ)は思う。


 いずれにしろ、名にし負う武士(もののふ)のふたりが怪異を見すごすはずもなかった。


挿絵(By みてみん)



   3



 風のように空を()くドクロの航跡があえかな光の道しるべを描いていた。


 雲の中へ見えかくれするドクロとその航跡を見失うまいと、ふたりは必死で馬を駆る。


 次第に高度を下げるドクロの航跡は神楽岡(かぐらがおか)までくると途絶えた。


「このあたりでございますな」


「うむ。そのようだな」


 (つな)の言葉に頼光(よりみつ)がうなづいた。


 手綱をひきしぼり馬上から周囲を見わたしていた渡辺(つな)が、


「お(やかた)さま。あれを」


 そう弓で指ししめすと、大きな古い屋敷があった。


 屋敷の内で蛍の光のようなあわい(またた)きをとらえた気がした。


「なるほど。そのようだな」


 頼光(よりみつ)が馬首を向けた。(つな)(くつわ)をならべて頼光(よりみつ)につづく。


 いつのまにか空はどす黒い血のような夕焼けに染まっていた。



   4



 源頼光(よりみつ)と渡辺(つな)は大きな古い屋敷の前で馬を下りた。


 空飛ぶドクロはこの屋敷へ消えたらしい。


「絵に描いたような(むぐら)の門ですな」


 渡辺(つな)が苦笑した。


(むぐら)の門」とは荒れはてた屋敷を指す言葉である。


 文字どおり棟門(むねもん)前には(むぐら)や雑草が鬱蒼(うっそう)とおいしげっていた。


 (つな)は手にした弓で雑草をはらいながら頼光(よりみつ)を先導した。


 雑草の露で衣の(そで)をぬらしながら棟門(むねもん)をくぐる。


「ほう」


 荒れ放題の庭園に足を踏み入れた頼光(よりみつ)が感嘆の声をあげた。


 おそらくは、それなりに由緒ある公卿(くぎょう)の屋敷だったのであろう。


 庭園の西には紅葉を植樹した築山が高雄を彷彿(ほうふつ)とさせる紅綿の彩りをみせていた。


 かつては、翠瑠璃(すいるり)の水をたたえていたであろう南の池は黒くよどみ、雑草にうもれて咲きみだれる菊や秋の花々がそこはかとない哀れをさそう。


「見事な庭であったのだろうな」


「たしかに」


 (つな)首肯(しゅこう)した。


 しかし、今やその場で鼻をつくのは猫の小便や腐肉のすえた(にお)いである。


 見れば、足元には動物の糞や小さな鳥獣の骨が散乱していた。


 (つな)は荒れはてた屋敷に栄枯盛衰(えいこせいすい)の無情をおぼえた。


 ふたりは庭園を縦断し中門をくぐった。


(わし)が屋敷の中を見てまいる。(つな)はここで待っておれ」


 こともなげに云う頼光(よりみつ)(つな)反駁(はんぱく)した。


「お(やかた)さま、危のうござります。斥候(せっこう)はみどもにおまかせくだされ」


 いかにも家臣らしい(つな)のもの云いに頼光(よりみつ)がニヤリと唇をゆがめて笑った。


「待つのは(しょう)にあわん。(つな)をここへのこすは何事か起きた時に退路を確保するためじゃ」


「……御意(ぎょい)。くれぐれもお気をつけて」


 (つな)があっさりひきさがった。


 子どもの頃から仕えてきたので彼の性格は知りぬいている。


 云い出したらきかないきらいはあるが軽挙妄動(けいきょもうどう)する(たち)ではない。


 頼光(よりみつ)へよせる信頼と忠誠心がよけいな口をきかせなかった。


「うむ。(つな)も油断するな」


 頼光(よりみつ)はあたりをきょろきょろと注意深く確認しながら屋敷へ向かっていった。


(まったく、子どものようなお人だ)


 (つな)が微苦笑した。頼光(よりみつ)の背中が冒険心をかくしきれず楽しげに踊っていた。



   5



 屋敷は長いこと放置されていたらしく、人の出入りした形跡はなかった。


 ほこりまみれの白ぼけた板敷(いたじき)にのこるのは小禽(しょうきん)の足跡と小さな糞ばかりである。


 見事な筆跡で描かれた水墨山水画の障子(しょうじ)をひきあけひきあけ奥の間へ進むと、頼光(よりみつ)は小さく眉をしかめた。


 貴人の寝所であったらしい。


 華麗な綿織物で(ふち)どられた畳の上に(ふすま)(昔の夜具)をひきかぶった女性の白骨死体があった。


 よくよく見ると頭の位置がおかしい。どうやらこれが空飛ぶドクロの正体であるらしい。


 頼光(よりみつ)は口の中で念仏を唱えた。


 死の充満した室内の空気がよどんでいた。


 頼光(よりみつ)が風をとおすべく四方(よも)障子(しょうじ)をあけはなつと、西へ位置する炭櫃(すびつ)のしつらえられた一間に、みがきあげられた包丁とまな板が置かれていた。


 その横へ不自然に置かれた几帳(きちょう)(すそ)の裏になにかがある。


 頼光(よりみつ)は〈膝丸(ひざまる)〉の太刀(たち)を音もなく(さや)からひきぬくと、太刀(たち)の峰で几帳(きちょう)(すそ)をまくりあげた。


 ごとりとにぶい音がしてまろびでたのは、まだ新しい男女の生首であった。


 頼光(よりみつ)はふりかえると〈膝丸(ひざまる)〉の太刀(たち)炭櫃(すびつ)をまさぐった。


 白い炭の下から焼けこげた人骨のカケラがでてきた。頭部はない。


(空飛ぶドクロは(にえ)となる人間をこの屋敷まで運んでいたようだな。……頭を喰らう化物と身体を喰らう化物が別にいると云うことか?)


 屋敷の外へ待機させている渡辺(つな)をよびよせるべきか思案していると、几帳(きちょう)に目かくしされていた台所へとつづく遣戸(やりど)がガタガタと鳴りだした。


 遣戸(やりど)の裏手から激しい人の息づかいと遣戸(やりど)をうちたたく音がひびく。


 だれかがとじこめられているようだ。


「待て。今あけてやる」


 頼光(よりみつ)の声に遣戸(やりど)をうちたたく音がやんだ。


 犬のように荒々しいあえぎ声が頼光(よりみつ)を無言で()かす。


 頼光(よりみつ)遣戸(やりど)をひらくと、(くら)い台所へうずくまる人影があった。


「きさまは何者だ。いろいろと説明してくれぬか?」


 誰何(すいか)する頼光(よりみつ)にうずくまる人影が、かふかふと空気のもれるあえかな声でこたえた。


「わらわは二九〇歳になんなんとす老婆にござります。この屋敷で九代の主君にお仕え申しあげました」


 台所の(くら)さに目のなれた頼光(よりみつ)が見たのは、この世のものとも思われぬ醜悪な白髪の老婆であった。


 白骨死体や生首を見ても(おく)することのない頼光(よりみつ)ですら、老婆の凄惨(せいさん)な姿には内心狼狽(ろうばい)した。


 めくりあげられた両目の赤い上まぶたが、それぞれ小さな(きり)のようなもので額へ打ちつけられていた。


 (くじり)である。本来はヒモの結び目をほどくための道具だ。強引にみひらかれた目からは涙のような細い血の筋がたえず流れている。


 口も(こうがい)のようなものでこじあけられていた。


 めくりあげられた唇がひきのばされ、襟首(えりくび)で縫いあわされていた。よだれが滝のように下あごを伝う。


 しなびてだらしなくたれ下がる乳房を前かけのようにひろげて(ひざ)までおおっていた。乳房は血とよだれで黒ずみべたべたに汚れている。


「このあたりには化物が()むとうわさされ、長いことだれも訪れる者はおりませなんだ。老いさらばえた我が身には、ほかにゆくあてもございませぬ。孤独にひとり耐えながら日々泣き暮らしておりまし……ひっ……ひっ……」


 それはあたかも与えられた台詞を棒読みする三文役者のように無感情な口調だったが、云いおわらぬうちに老婆が妙な声をあげ、ガクガクと痙攣(けいれん)しはじめた。


 老婆の表情が一変すると、必死の形相で頼光(よりみつ)懇願(こんがん)した。


「わらわを殺してたも! 殺してたも! ……死よりわらわの望むものなし……、殺してたも! 殺してたも!」


(哀れな……)


 頼光(よりみつ)は〈膝丸(ひざまる)〉の太刀(たち)(さや)におさめながら嘆息した。


 この老婆は空飛ぶドクロを使役する化物の呪縛で、(にえ)となる人間をさばく仕事を何百年もさせられてきたようだ。


 おそらくは、自分が人間を斬り刻む仕事をしていたことにも気づいていなければ、すでに自分が生ける(しかばね)であることにも気づいていない。


 無惨にめくりあげられた唇やまぶたは老婆を死なせぬための忌まわしき呪法である。


 老婆を殺さずとも、化物を退治すればおのずと老婆の魂も解放されるであろう。


(わし)に罪なき者は斬れぬ。しばし待っておれ。きさまの苦しみは(わし)がかならずおわらせてくれよう」


 頼光(よりみつ)(きびす)をかえすと、まだ探索していない東の奥の間へ足を向けた。


「殺してたも。殺してたも。殺してたも。殺してたも……」


 頼光(よりみつ)の背中に念仏のようにつぶやく老婆の声がいつまでもつづいていた。


挿絵(By みてみん)



   6



 屋敷から聞こえてきた騒々しい物音に渡辺(つな)は駆けだした。


 屋敷北西の角部屋が大きくあけはなたれており、台所へとつづく遣戸(やりど)の前で凄惨(せいさん)な姿の老婆が譫言(うわごと)のように、


「殺してたも。殺してたも。殺してたも。殺してたも……」


 とつぶやいている。


 (つな)は奥の部屋へ入ってゆく源頼光(よりみつ)の背中をのぞきみて、とりあえず安堵(あんど)した。


 どす黒い血のような夕焼け空が東のはてから濃紫に暮れる。まがまがしい色彩の宵闇(よいやみ)(くら)さを増すにつけて、ふきすさぶ風のいきおいも強くなる。


 やがて遠雷がひびいたかと思うと、屋敷の上へ暗雲がたちこめ、にわかに激しい雨が降ってきた。轟音(ごうおん)とともに稲妻が光の龍となって大地へ突き刺さる。


 (つな)は屋敷の外で激しい雨風にうたれながら身じろぎもせずに立っていた。


「退路を確保せよ」


 と云う頼光(よりみつ)の言葉を忠実に守っていた。


 この屋敷に怪異のあることは尋常(じんじょう)でない老婆の姿をかいま見ただけでもわかる。


 頼光(よりみつ)とふたりして化物にかこまれるよりは、頼光(よりみつ)へ襲いかかる化物を挟撃(きょうげき)する方がよい。


 (つな)が庭から屋敷内の気配へ目を光らせていれば、化物も外から襲いかかることはできまい。


(化物よ、くるならきてみろ。かえり討ちにしてくれる)


 ますます激しさを増す風雨の中で、(つな)双眸(そうぼう)は炯々(けいけい)とかがやいていた。



   7



 一方、屋敷の奥へとすすむ頼光(よりみつ)は、四方を障子(しょうじ)でしきられた一間(ひとま)へ足を踏み入れた。


 ()(部屋)の中央に一脚(いっきゃく)燭台(しょくだい)があり、ぽっと火がともるや否や、頼光(よりみつ)のあけた障子(しょうじ)が鋭い音をたててしまった。


 頼光(よりみつ)燭台(しょくだい)のともる一間へとじこめられた。


(……おもしろい)


 頼光(よりみつ)はニヤリと唇をゆがめて笑うと、燭台(しょくだい)の前に悠然と座し、瞑目(めいもく)した。


 どんな趣向を()らすつもりかと化物の出方を待つ。


 (くら)()の中で燭台(しょくだい)の灯りだけがゆらゆらと命あるもののようにゆれている。


 待っていたのが短い時間だったのか、長い時間だったのかさだかでない。


 突如、早鼓(はやつづみ)のような足音が鳴りひびくと、四方(よも)障子(しょうじ)が見えない力で乱暴にあけはなたれた。


 頼光(よりみつ)がしずかに目をあけると、()障子(しょうじ)をへだてて数かぎりない異類・異形の化物がぐるりをとりかこんでいた。


(……付喪神(つくもがみ)か)


 付喪神(つくもがみ)は百年を経た器物が霊性を宿した化物である。頼光(よりみつ)は周囲にむらがる化物を冷静に観察していた。


 付喪神(つくもがみ)には群れ集い、邪気をもとめてさすらう百鬼夜行とよばれる習性がある。おそらくは屋敷のまとう邪気にひかれてやってきたのだ。


 そもそも付喪神(つくもがみ)は霊性のひくい化物である。ちょっと人をおどかしてこわがらせるくらいが関の山だ。


 その証拠に周囲をひしめく化物たちは、頼光(よりみつ)のいる()へ入ってこようとはしなかった。一見、頼光(よりみつ)をおどかしているようで、おびえているのは化物たちの方である。


(こざかしい)


 頼光(よりみつ)が正面をにらみつけると、頼光(よりみつ)の全身から常人には感知することのできない光の粒が矢のようにはなたれた。


 光の粒にあてられた異類・異形の化物どもが、どおっと笑うと煙のように消え失せた。


 そのようすをあわててかくすかのようにすべての障子(しょうじ)が音をたててしまる。


 そして静寂が訪れた。


挿絵(By みてみん)



   8



 頼光(よりみつ)はふたたび瞑目した。


 ややあって「みしり」と遠くからなにかが近づいてくる気配を感じた。


 燭台(しょくだい)の灯りにてらしだされた頼光(よりみつ)の口元に小さな笑みがうかんでいた。この状況を心底楽しんでいる。


 正面の障子(しょうじ)がしずかにひらくと奇妙なモノがいた。


 ()いて云えば、人の姿をしていた。


(あま)〉である。しかし、異形であった。


 背がひくかった。三尺(約90センチ)ほどしかない。


(白楽天の詠んだ「道州の民」とはこのような者であろうか?)


 頼光(よりみつ)が場ちがいなことを思った。道州の民がこの〈(あま)〉の姿を見たら一緒にするなと憤慨(ふんがい)したはずだ。


 頭が異様に大きかった。紫の頭巾をかぶったその頭は、身の丈三尺にして二尺ほどもある。


 太々と描かれた眉にどぎつい頬紅。子どもの化粧のようにあどけなくぶざまだった。


 上半身は裸だった。燭台(しょくだい)の灯りに雪のような白い肌がうかぶ。


 糸のように痩せ細った腕をぶらりと下げたまま〈(あま)〉は真紅の長袴(ながばかま)をひきずりながらいざりよってきた。


 頼光(よりみつ)と目のあった〈(あま)〉が婉然(えんぜん)とほほ笑んだ。紅い唇からのぞく二本の前歯だけが鉄漿(かね)で黒い。


(あま)〉は燭台(しょくだい)のそばまでくると枯れ枝のような腕をのろのろと上げ、灯りをふきけそうとした。


 頼光(よりみつ)が無言でにらみつけると〈(あま)〉は陽炎のようにゆらめいて消えた。さきほど頼光(よりみつ)に追いはらわれた付喪神(つくもがみ)たちが化けていたのだ。


(……とどのつまり、今のはなんだったのであろう?)


 頼光(よりみつ)は苦笑した。


 こわがらせようとしたのか笑わせようとしたのか意味がわからなかった。


挿絵(By みてみん)



   9



 いつの間にか、外の嵐はやんだらしい。


(……そろそろ鶏人(けいじん)(あかつき)を告げる刻限であろうか?)


 鶏人(けいじん)とは宮中で時間を告げる役人のことである。


 どうやら頼光(よりみつ)はこの屋敷で一夜をあかしてしまったらしい。


(つな)には気の毒をした。この程度の〈()し物〉とわかっていたら、(つな)にも楽しませてやったものを)


 一晩中、激しい風雨にさらされながら、愚直に立ちつづけていたであろう渡辺(つな)を思って、頼光(よりみつ)はいささか後悔した。


 しかし、いまだ怪異の大元は割れていない。哀れな老婆を救うためにも、これ以上の犠牲者をださぬためにも、人を喰らう化物は見つけだして退治しなければならない。


(とりあえず、(つな)と合流するか)


 頼光(よりみつ)が腰を上げかけると足音がした。(つな)のものではない。化物にしては軽いように思われる。


 正面の障子(しょうじ)が細くひらいたかと思うと、すぐにしまる。そんなことが数回くりかえされた。


 障子(しょうじ)の向こうにかいま見えたのは可憐(かれん)な姫であった。


 恋する乙女がいたずらに部屋のようすをのぞき見る。そんな恥じらいさえ感じる所作である。


 頼光(よりみつ)は立ち上がると、障子(しょうじ)を両手で荒々しく左右へあけはなした。美しい姫はしずしずと歩みより、頼光(よりみつ)の前へ座した。


 絶世の美女であった。傾城(けいせい)(うた)われた楊貴妃(ようきひ)()夫人にもおとらないであろう美貌(びぼう)である。


 さすがの頼光(よりみつ)馥郁(ふくいく)たる色香に陶然(とうぜん)とした。


 化物の虜囚(りょしゅう)となっていた屋敷の女主人が、化物を退治しにきた頼光(よりみつ)(つな)へ感謝の意を表しにあらわれたものと錯覚しかけた。


 しかし、突如、屋敷の中へふきこんだ清冽(せいれつ)な朝の風が鼻腔(びくう)をくすぐると、頼光(よりみつ)の正気をよび()ました。


 化物の巣窟(そうくつ)と化したこの屋敷で、まともな人間が生かされているはずもない。


 身がまえる頼光(よりみつ)に、色じかけが失敗したことを悟った美女は、つと立ち上がり背を向けた。肩にこぼれ落ちるぬばたまの長い黒髪をかきあげながらふりかえる。


 燭台(しょくだい)にゆれる灯りをにらみつけた女の双眸(そうぼう)に炎が(うつ)りこんでいた。透き(うるし)()いたような瞳に灯る炎は頼光(よりみつ)への怒りと恨みに燃えていた。


 美女に弱いは(おとこ)の常である。理性が化物と告げているのに感情が邪魔をする。


 そんな頼光(よりみつ)の心の隙を女は見のがさなかった。


 女は(はかま)(すそ)を蹴り上げると、(まり)のような白雲のかたまりを十個ほど頼光(よりみつ)へたたきつけた。


 頼光(よりみつ)の視界がもやで白く染まる。


 しかし、頼光(よりみつ)は果敢に踏みこむと〈膝丸(ひざまる)〉の太刀(たち)を渾身の力でうちふるった。


 もやが晴れると女の姿も消えていた。


 頼光(よりみつ)太刀(たち)膝丸(ひざまる)〉は屋敷の板敷(いたじき)を斬りとおし、柱の礎石をうち割っていた。すさまじい膂力(りょりょく)である。


あたりにはおびただしい量の白い血が飛散していた。


「お(やかた)様、ご無事ですか!?」


 屋敷の外で待機していた渡辺綱(つな)が血相をかえて飛びこんできた。巨大な白雲が屋敷から飛び去ったからである。


「おお、(つな)息災(そくさい)であったか?」


「なにをのんきな。それはこちらのセリフでございます」


「うむ。化物が美女の姿であらわれての。ちと油断した。斬りそこなったわい」


 かっはっは、と頼光(よりみつ)が豪快に笑う。


 あきれ顔の(つな)の手をかり、板敷(いたじき)から〈膝丸(ひざまる)〉の太刀(たち)をひきぬいた。


「化物に深手を負わせたようですな。しかし〈膝丸(ひざまる)〉の太刀(たち)の切先が折れてございます」


 (つな)の云うとおり、太刀(たち)の切先がきれいに欠けていた。欠けた太刀(たち)にも白い血がしたたり落ちる。


「にげた化物の血の(あと)が点々とつづいております。これをたどれば化物の根城もわかりましょう」


「うむ。ゆくぞ、(つな)


御意(ぎょい)


 板敷(いたじき)()に点々とこぼれ落ちる白い血の(あと)をたどると、昨夕出会った老婆の台所へでた。


 老婆の姿はなかった。簀子(すのこ)縁側(えんがわ)のわたり廊下)から庭へと赤い血にまみれた二本の(くじり)(こうがい)がころがっていた。


「いきがけの駄賃に喰ろうたかよ」


 頼光(よりみつ)の奥歯がギリリと鳴る。


 哀れな老婆を救うすべは死よりほかになかった。喰い殺されたことで生ける(しかばね)としての(くびき)から解きはなたれたとは云え、魂まではうかばれまい。


(すぐに(かたき)はとってやる)



   10



 化物の白い血の痕は屋敷の外へつづいていた。


 ふたりは棟門(むねもん)をでて馬にまたがると、血の(あと)を追いながら西へと歩をすすめた。


 やがて山が見えてきた。


 頼光(よりみつ)(つな)は山に入ったところで馬を下りた。化物の白い血の(あと)は山の上へとつづいている。ここから先は徒歩よりほかはない。


 はじめは、かろうじて人の踏みかためたような山道がつづいていたが、次第に獣道(けものみち)とかわっていった。鬱蒼(うっそう)とおいしげる枝草をなぎはらいながらひたすら歩きとおす。


 山の奥深くまでわけ入ると、遠目に大きな洞窟が見えた。先を歩いていた頼光(よりみつ)が足をとめ、片手で(つな)を制した。


「いかがなされました?」


 (つな)がささやいた。


「見ろ」


 まがまがしく口をひらいた洞窟の両脇に異形の者が座りこんでいた。人の倍はあろうかと云う巨大さである。


 一匹は灼熱の溶岩さながらに赤い肌、もう一匹は冷めた溶岩に粉を吹いたような青黒い肌で、獣の皮を縫いあわせた粗末な腰布をまとっていた。


 額から生えた二本の角。獣のように鋭いかぎ爪。


 鬼であった。


 赤鬼青鬼は洞窟の両脇へもたれかかり、足元につまれた人間の身体をにちゃにちゃとしがみつづけていた。食事に夢中で木陰にひそむ頼光(よりみつ)(つな)には気づいていない。


「さしずめ門番と云うわけですな」


「……なるほど。人の(こうべ)をあの化物が喰らい、胴体をこいつらが喰らっていたわけか」


 頼光(よりみつ)がひとりごちる。


「お(やかた)さま、いかがなさいますか?」


 そう訊ねる(つな)の顔に不敵な笑みがうかんでいた。


 本当は訊くまでもない。


 頼光(よりみつ)は切先の欠けた太刀(たち)(さや)からしずかにひきぬくと云った。


「しれたことよ。たたき斬る」


御意(ぎょい)


「赤いヤツから狙え」


 頼光(よりみつ)は一言告げると、樹陰にまぎれて赤鬼の正面へ移動した。


 頼光(よりみつ)の位置どりを確認した(つな)が、たずさえていた強弓(ごうきゅう)をぎりぎりとひきしぼり、赤鬼めがけて矢をはなった。


 (ごう)っ! と大気をひき裂いて飛ぶ矢が無警戒だった赤鬼の眉間(みけん)へ深々と突き刺さる。


「がっ……!?」


 一瞬、自分の身になにが起きたのかわからなかった赤鬼がうめいた。


 矢に射ぬかれた衝撃で顔の上がった赤鬼が目にしたのは、太刀(たち)をふりかざし怒濤(どとう)のいきおいでせまりくる頼光(よりみつ)の姿であった。


「ぬん!」


 頼光(よりみつ)裂帛(れっぱく)の気あいで赤鬼の首へ横なぎに斬りつけた。


 岩のようにかたい赤鬼の筋肉へみしりと刃が喰いこむ。


 襲撃に気づいた青鬼が腰を上げかけたところへ、(つな)の矢が急襲した。


 青鬼は体を横倒しにして、間一髪、その矢をさける。


「でえいっ!」


 頼光(よりみつ)尋常(じんじょう)ならざる膂力(りょりょく)で赤鬼の首を斬り落とした。白い血しぶきが舞う。


 首をはねられた赤鬼の身体が痙攣(けいれん)して跳ね上がると、青鬼へ突進しようとしていた頼光(よりみつ)に向かって倒れこんだ。


「くっ!」


 棒立ちで倒れこんだ赤鬼の巨体をかろうじてかわした頼光(よりみつ)がバランスを崩して地面へころがった。


 樹陰(じゅいん)を移動しながら矢を射かける(つな)翻弄(ほんろう)されていた青鬼が、ころんだ頼光(よりみつ)に気をとられた刹那(せつな)(つな)の矢が青鬼の二の腕に突き刺さった。


「ぎひぃぃぃ!」


 その間に身を起こした頼光(よりみつ)太刀(たち)をかまえなおす。


 赤鬼への奇襲は成功したが、青鬼との戦闘は持久戦になりそうだった。暴れまわる巨大な青鬼の手足を一刀両断するのは、頼光(よりみつ)であっても容易(たやす)くはない。


 青鬼が頼光(よりみつ)に気をとられている隙をついて(つな)が射る。


 青鬼が(つな)に気をとられている隙をついて頼光(よりみつ)が斬る。


 そうやって徐々に青鬼の体力を奪っていくしかない。


 この場合、青鬼に姿をさらしている頼光(よりみつ)がおとりの役目を負わざるを得ない。


 青鬼と対峙(たいじ)する頼光(よりみつ)の身を案じて樹陰(じゅいん)からでてこようとした(つな)の気配を察して、頼光(よりみつ)が目配せした。


 死角からの弓撃をつづけよ、と。


 腕をふり、足を踏み鳴らす青鬼の攻撃をかわしながら、頼光(よりみつ)が青鬼の足へ斬撃をくりだす。あさい傷でも斬られれば痛みはある。


「ぐふうっ!」


 青鬼が小さくうめいた。頼光(よりみつ)へ気をとられた隙に、(つな)の矢が青鬼の背中へ突き刺さる。


「がああああっ!」


 苦悶(くもん)咆哮(ほうこう)をあげた青鬼が、(つな)のひそむ樹陰めがけて突進すると、あたりの木々を腕のひとふりでなぎ倒した。


 しかし、弓をはなつと同時に移動していた(つな)の姿をとらえることはできない。


 激昂(げきこう)した青鬼はふた抱えもある大きな樹を強引に地面からひきぬくと、青々としげる枝で地面を掃き飛ばすように、背後の頼光(よりみつ)へふりまわした。


 さしもの頼光(よりみつ)もかわすのが精一杯である。


 青鬼はひきぬいた樹の根元を頼光(よりみつ)へ向け、青々とした枝の方で身体をかくすようにかまえてふりまわした。


 (つな)の矢を防御しつつ、頼光(よりみつ)をたたきつぶす魂胆(こんたん)である。


「猿ならぬ鬼の浅知恵と云うやつじゃの。……こざかしい」


 太刀(たち)をかまえた頼光(よりみつ)の口元に笑みがのぞく。


 たしかに、頼光(よりみつ)ひとりであれば、青鬼の抱えた樹が邪魔で間あいへ入りこむことはむずかしい。


 しかし、頼光(よりみつ)はひとりではない。


 這々(ほうほう)の(てい)で青鬼の攻撃をかわすふりをした頼光(よりみつ)は、大きく自身の左側へにげた。いきおいづいた青鬼が頼光(よりみつ)へ身体をひらく。


 先刻は青々としげる枝ぶりで青鬼の身体がかくれていたが、今、(つな)のいるところからは樹を抱えた青鬼の腕が丸見えであった。


 即座に(つな)の矢が青鬼の右(ひじ)を射ぬく。


「げひぃぃ!」


 間髪入れず二の矢が飛ぶ。


 次に射ぬいたのは青鬼の右(ひざ)である。あまりの痛みに青鬼が(ひざ)をつく。


 一の矢がはなたれたあと、ひそかに青鬼の左側へまわりこんでいた頼光(よりみつ)が、青鬼の抱えていた樹へ飛びうつると、そのまま樹の太い幹を青鬼の肩口まで駆けあがり、大上段から青鬼の頭をたたき斬った。


 ふたつに割れた青鬼の頭部がだらりと力なく折れる。


 頼光(よりみつ)は青鬼の肩を蹴り、巨体をあおむけに倒すと、そのまま跳躍して地面へ降り立った。


 白い血にまみれた太刀(たち)を鬼の腰布でぬぐうと(さや)へおさめる。


「お見事にござります」


 (つな)がまだ使えそうな矢を拾いあつめながら頼光(よりみつ)を賛美した。


「なあに。(つな)の弓の腕があってこそじゃ。お主こそ見事であった」


恐悦至極(きょうえつしごく)にぞんじます」


「あいかわらずカタいの、お主は」


 破顔する頼光(よりみつ)(つな)が微笑と目礼でこたえた。


 頼光(よりみつ)はかるく伸びをして深呼吸すると、まがまがしい洞窟の入口へ向きなおった。


 洞窟の入口から白い血が細く流れている。彼らの追ってきた化物はまちがいなくこの先にいる。



   11



「さて。雑魚(ざこ)相手の余興も済んだことだし、そろそろ化物の親玉を退治てくれようか。参るぞ、(つな)


「……しばし、お待ちください」


 洞窟へ足を踏み入れようとした頼光(よりみつ)(つな)が制した。


「いかがいたした?」


「気になることがございます。……お(やかた)さまの御太刀(おんたち)切先(きっさき)にござりますが、あれは折れたのではなく折られたようにぞんじます」


「ふむ」


「中国は()国に眉間尺(びけんじゃく)と申す者の故事がございます。親孝行な彼はいかなる時でも両親を(まも)れるように、剣の切先(きっさき)をかくしもっていたと云います」


「ふむ?」


「つまり、化物がお(やかた)さまの御太刀(おんたち)を折ったのは、その切先(きっさき)をかくしもち、みどもらへの武器として使う魂胆ではないかと」


「なるほど」


「あえて、お(やかた)さまの切先(きっさき)をうばったのは、なんらかの呪術をほどこすつもりなのやもしれませぬ」


 (つな)の言葉に頼光(よりみつ)が苦い顔をして首肯(しゅこう)した。


 呪いたい相手の身体の一部(たとえば毛髪など)や、相手の身につけているものを用いるのは呪術の基本である。


 陰険な呪術を嫌悪する頼光(よりみつ)でも、その程度の一般常識はもちあわせている。


 平安貴族の世界は呪術の世界である。云いかえれば、京の都は魔術の都であった。


 和歌を詠み、太平の世を祈念する言霊(ことだま)信仰、鎮守国家や病気平癒(へいゆ)を祈念する加持祈祷(かじきとう)のような〈正〉の呪術がある一方で、陰ながら人を呪い殺す〈負〉の呪術もたびたび禁令がだされるほど横行していた。暗殺の常套(じょうとう)手段だったのである。


「空飛ぶドクロを使役し、哀れな老婆をむごたらしい姿で生かしておく化物の呪術は、そこいらの陰陽師以上の腕かと」


「同感じゃ」


「ここは藤や(つる)で身代わりとなる人形を作り、烏帽子(えぼし)狩衣(かりぎぬ)を着せ、前にたたせてすすむのがよろしいかとぞんじます」


「用心深いことだな。よかろう。(つな)の云うとおりにしよう」


 頼光(よりみつ)(つな)の提案をすなおに了承した。


 ほかの郎党(ろうとう)の提案であれば一笑に伏したかもしれないが、(つな)は決して臆病な(おとこ)ではない。


 頼光(よりみつ)は歴戦の強者である(つな)の直感をだれよりも信頼していた。


 ふたりはまわりの藤や(つる)を斬り、たばね、人のかたちに整えると、(つな)烏帽子(えぼし)頼光(よりみつ)狩衣(かりぎぬ)を着せた。


 身代わりの人形を押したててすすむ(つな)のうしろから、(つな)(えびら)(腰に下げた矢筒)へかるく手をそえ、切先(きっさき)の折れた太刀(たち)を肩にかけた頼光(よりみつ)がつづく。


 ふたりが洞窟へ足を踏み入れると、湿気を帯びた濃密な空気がじっとりと肌にまとわりついた。


 そこはかとなく鼻につく異臭も不快指数を跳ね上げる。足元も見えないほど(くら)い闇の中で、遠くかすかに小さな光がゆれる。そこが出口である。


 四~五町(約500メートル)すすんだところで、ようやく洞窟の出口へたどりついた。


 身代わりの人形を盾にしているとは云え、いきなり洞窟から飛びだすような真似はしない。壁面にはりつき、身を低くかがめて外のようすをうかがう。


 洞窟の外はすり鉢状の窪地(くぼち)で、奥に古びた倉が見えた。


 倉の屋根(がわら)の隙間からは松が生え、(かき)(こけ)むしていた。倉の上に濃いもやがかかっている。


「あの倉の中か……」


 頼光(よりみつ)がつぶやいた。


 白い血の流れは倉の中から細々とつづいていた。


 (つな)が倉を凝視(ぎょうし)すると、一匹の巨大な化物が倉の入口から頭だけだして横たわっていた。

 異形である。


 全身は倉の中にあって見えないが、全長は二丈(約6メートル)ほどあるらしい。


 頭は複雑な紋様の綿織物をかぶっているかのようであった。


 大きな双眸(そうぼう)が日月の光のようにギラギラとかがやいている。


 疑いようもない。この化物が(やかた)の姫の正体であった。


「なるほど。あれが(あや)しの美女の正体であったか。ざんねんなことよ」


 嘆息する頼光(よりみつ)(つな)が訊ねた。


「お(やかた)さま。よもや、あの化物とみだらな行為におよんだと云うことは……」


「見そこなうな、(つな)(わし)はそこまで色狂いではない」


 ふたりは小さく笑った。もちろん冗談である。


 強大な化物を眼前にひかえてなお、冗談を云いあうだけの余裕がある。


「しかし、あの倉はジャマじゃの。金の字と戦斧(せんぷ)があれば楽勝なのだが……」


 金の字と云うのは〈頼光(よりみつ)四天王〉のひとり、強力無双の巨漢・坂田金時である。


「まさかりかついだ金太郎、熊にまたがりお馬の稽古」と歌われる金太郎こそ、坂田金時その人である。


 山育ちの金時は薙刀(なぎなた)ではなく、特注の戦斧(せんぷ)を武器として使う。金時の戦斧(せんぷ)にかかれば、堅牢(けんろう)な城門であっても、うち破るのは容易(たやす)い。


「まったく図体ばかり大きくて、肝心な時に役にたたぬ(おとこ)でございます。……隙を見て、ふたりでひきずりだすしかありませんな。季武(すえたけ)がおれば、すぐさま妙案を思いつくのでしょうが」


 卜部季武(うらべ すえたけ)。〈頼光(よりみつ)四天王〉のひとりで知謀に秀でている。


「ふふ。さすれば貞光(さだみつ)の役まわりはなんであろうの?」


 頼光(よりみつ)が〈頼光(よりみつ)四天王〉最後のひとりの名をつぶやいた。


 碓井貞光(うすい さだみつ)。弓の名手である。


 坂田金時・卜部季武(うらべ すえたけ)碓井貞光(うすい さだみつ)の三人に(つな)をくわえて〈頼光(よりみつ)四天王〉と称される。


貞光(さだみつ)の弓であれば、この間あいからでも、化物の額を射ぬくことができるやもしれませぬ」


 しかし、(つな)の腕ではムリだ。万が一しとめ損なって、化物が倉へ()もれば退治するのがむずかしくなる。


 頼光(よりみつ)(つな)が化物を倉からひきずりだす算段をしていると、 突如、化物の顔がぐるりと回転して()えた。


「痛いぞえ、痛いぞえ。こざかしき人畜生(ひとちくしょう)にうけた(きず)がキリキリと痛むぞえ!」


 化物の叫びがおわらぬうちに、倉の上へうかぶ白いもやの中から、異様な光をはなつなにかが(つな)のもつ身代わり人形を刺しつらぬいた。


 ややあって、身代わり人形の上半身と下半身が「みしり」と裂けた。


 下半身とともに大地へ落ちたモノに頼光(よりみつ)瞠目(どうもく)した。


 身代わり人形を刺しつらぬいていたのは、刻折りとられた〈膝丸(ひざまる)〉の切先(きっさき)であった。


 切先(きっさき)のおもてに白い血で呪の書かれた痕跡(あと)が見える。


(……(つな)の読みどおりとは。やはり、この(おとこ)ただ者ではない)


 頼光(よりみつ)には思いおよばぬ智慧である。(つな)の〈戦場〉での勘の冴えをあらためて頼もしく思った。


 一方、今のが手傷を負った化物の渾身(こんしん)の一撃であったらしい。


 身代わりの人形を刺しつらぬいたことにも気づかず、頼光(よりみつ)が死んだと思いこみ、化物はギラギラとかがやく双眸(そうぼう)をとじると眠りについた。


「用心が役にたちましたな。化物は油断して眠りこんだようでございます」


 頼光(よりみつ)(つな)は息をひそめて、しばらくの間、化物のようすをうかがった。


 頼光(よりみつ)が屋敷で浴びせた一太刀(たち)がよほどの深手であったらしく、化物は眠りながら時おり苦悶(くもん)の表情をのぞかせていた。


 (つな)弓箭(きゅうぜん)をおろして身軽になった。


「さて。化物をひきずりだすかよ」


 頼光(よりみつ)(つな)が化物の眠る倉へ音もなく忍びよった。


 化物の全貌(ぜんぼう)を見てとったふたりは、あらためてその大きさに息をのんだ。


 倉の中へ横たわっていたのは、鬼のような頭にクモの胴体をもつ巨大な化物だった。八本の足が窮屈(きゅうくつ)そうにおりたたまれている。


「お(やかた)さま、こやつは……?」


「おそらくは、土蜘蛛(つちぐも)(山蜘蛛)じゃ。太古よりかの地に巣くう禍津神(まがつかみ)(すえ)であろう」


 頼光(よりみつ)は足元に落ちていた石を拾うと、(つな)へささやいた。


「左右のうしろ足から同時にたたき斬り、踏んばりがきかぬようにした上で、倉からひきずりだす。(つな)、反対側へまわって位置についたら、この石を投げろ。この石の落ちた音を合図にたたき斬る」


御意(ぎょい)


「倉の隙間はせまい。壁面にたたきつけられぬよう気をつけろ」


「お(やかた)さまこそ、御油断(ごゆだん)めさるな」


「わかっておる」


 頼光(よりみつ)が真顔でうなづくと(つな)が無言で移動を開始した。頼光(よりみつ)も土蜘蛛のうしろ足へ移動する。


 位置についた頼光(よりみつ)切先(きっさき)の折れた太刀(たち)をかまえて合図を待った。


 ほどなくしてヒュッと空気を裂く音がすると、倉のかたい石の床に石のあたる音がカツンと小さくひびいた。


「ふんっ!」


「でえいっ!」


 頼光(よりみつ)(つな)が土蜘蛛の一番太いうしろ足へ太刀(たち)をふりおろした。


 (つな)()太刀(たち)頼光(よりみつ)から拝領した「宝剣十柄(ほうけんとつか)」のひとふり〈鬚切(ひげきり)〉である。


 土蜘蛛の足がざくりと斬り落とされた。


 異常に気づいた土蜘蛛が目を覚ますと同時に白い血しぶきが舞う。


「ギキキィィ!」


 うしろ足を切断された土蜘蛛が耳ざわりな叫びをあげながら、せまい倉の中で体をゆすった。


 ふたりは倉の壁と土蜘蛛の巨大な体躯(たいく)にはさみつぶされぬよう、ぎちぎちとうごめくのこりりの足元をかいくぐりながら、さらに土蜘蛛の足へ斬りつけていく。


「おのれ! よくもよくも、この人畜生(ひとちくしょう)どもが!」


 土蜘蛛の頭が跳ねあがり、倉の天井をぶち破った。


 (かわら)や木や土くれがもうもうと舞い降りそそぐ中、頼光(よりみつ)(つな)が頭をかばいながら倉の外へ脱した。


 ガレキの山と化した倉の中で土蜘蛛が目をギラギラと光らせながら立ち上がろうともがいていた。


 しかし、左右にかろうじてのこった三本の足も深々と斬りまくられていた。土蜘蛛は足元をひたす自身の白い血の池に足をとられて立つことすらおぼつかない。


「さすがは化物。無茶をしよる」


 土蜘蛛から少しはなれたところで身体のほこりをはらう頼光(よりみつ)(つな)が訊ねた。


「さて。いかがいたしましょう?」


「くずれた倉のもとでは足場が悪い。やはり、ひきずりだしてとどめをさすべきであろう」


 頼光(よりみつ)切先(きっさき)の欠けた太刀(たち)を強引に地面へ突きたてると、土蜘蛛へ向かってずんずん歩きだした。(つな)頼光(よりみつ)の反対側へまわろうとしたが、


「ああ、よいよい。(わし)ひとりで充分じゃ」


 とかるく手をふった。


 土蜘蛛はガチガチと歯を鳴らし、射殺さんばかりに頼光(よりみつ)をにらみつけるが、頼光(よりみつ)はまったく意に介さず土蜘蛛の片側へまわりこむ。


 頼光(よりみつ)は一本だけのこった土蜘蛛の右足の傷口へ腕をつっこむと、そのまま小脇に抱えて巨大な土蜘蛛の身体をじりじりとひきずりだした。


「ゲヒィィ! ……おのれ……おのれ!」


 痛みに耐えかねて()える土蜘蛛が、これ以上ひきずりだされまいと精一杯の抵抗をみせた。予想以上の抵抗に頼光(よりみつ)はひとりごちる。


(ひとりで充分だと云ったが、こいつはなかなかに手強い。今さら(つな)に手を貸せと云うのも(しゃく)じゃ。はてさて、こいつはどうしたものかな?)


 ふたたび土蜘蛛をひきずろうと渾身(こんしん)の力をこめた瞬間、なにかがうしろから土蜘蛛の巨体を押す感覚があった。


 頼光(よりみつ)はそのいきおいを借りて、土蜘蛛の巨体を投げ飛ばすようにガレキの山からひきずりだした。


「……いやはや、これではどちらが化物かわかったものではありませぬな」


 ひきずりだされたいきおいそのままにころがって、あおむけに倒れた土蜘蛛の巨体を目のあたりにして、さすがの(つな)も目を丸くした。


「なんぞ云うたか?」


「いいえなにも。お見事にござります」


 頼光(よりみつ)は地面に突きたてた太刀(たち)をひきぬくと、へくへくと虫の息をしている土蜘蛛の首を躊躇(ちゅうちょ)せずにはねた。


 土蜘蛛の巨大な身体がビクリと痙攣(けいれん)して永遠に動きをとめた。


「……おわりましたな」


「うむ」


 (つな)が土蜘蛛の死骸(しがい)へ近づくと、腹のまん中に深々と斬り裂かれた(きず)があった。頼光(よりみつ)板敷(いたじき)とともにたち割った(きず)である。


 (つな)が土蜘蛛の(きず)へ手をかけて腹をひき裂くと、山のようなドクロがガラガラと音をたててころがりでた。


「よもや、これほどとは……な」


 頼光(よりみつ)が嘆息した。


 千はゆうに超える数であろう。これだけ大勢の人間がだれに知られることもなく化物の餌食(えじき)となっていたことに慄然(りつぜん)とした。


「お(やかた)さま、これを」


 ゴツゴツといびつにゆがむ胃の腑を上へ向かってひき裂くと、未消化の生首が二〇個もでてきた。屋敷の老婆のものもある。頼光(よりみつ)(つな)は合掌した。


挿絵(By みてみん)



11



「死者たちの魂を丁重に(ほうむ)ってやらねばならんの」


「なにか穴を掘る道具がないか、倉の方を見て参りましょう」


「うむ。頼む」


 頼光(よりみつ)がうなづくと、(つな)がガレキの山と化した倉へと走った。


 なおも頼光(よりみつ)が土蜘蛛の死骸を検分していると、土蜘蛛の下腹に異様な膨らみがあることに気づいた。


(……これは?)


 頼光(よりみつ)太刀(たち)をあてると、膨らみが()ぜて、中からなにかが飛びかかってきた。


「キシャアア!」


 喉元(のどもと)めがけて飛びかかってきたそれをはらい落とすと、ビチャッ! と白くはじけてつぶれた。


 仔蜘蛛(こぐも)である。仔猫ほどの大きさもある七~八匹の仔蜘蛛(こぐも)が足元をわさわさと這いまわっていた。


(つな)! 仔蜘蛛(こぐも)じゃ! 一匹でもにがすと面倒なことになろうぞ!」


 頼光(よりみつ)が足元の仔蜘蛛(こぐも)を斬りつけていたが、のこりりの仔蜘蛛(こぐも)たちが四方へ散りはじめていた。


 異常に気づいた(つな)が思わず(えびら)へ手を伸ばすが、弓や(えびら)は洞窟の出口へ置いてきたままである。


「くっ!」


 洞窟へ向かって駆けだした(つな)は足元の一匹をたたき斬ったが、すでに窪地(くぼち)の壁面をのぼりだした仔蜘蛛(こぐも)や、洞窟の出口へ向かっている仔蜘蛛(こぐも)がいる。


(まにあうか!)


 (つな)がそう思った刹那(せつな)、洞窟から矢が射かけられた。一番遠方の壁面にいた仔蜘蛛(こぐも)がはじけてつぶれる。


「お~、いたいた。お(やかた)さま、おさがし申しあげましたぞ」


 洞窟の中から野太い声がすると、大きな足が仔蜘蛛(こぐも)を踏みつぶしていた。


「金の字! 貞光(さだみつ)!」



 洞窟からあらわれたのは坂田金時、碓井貞光(うすい さだみつ)卜部季武(うらべ すえたけ)の三名であった。〈頼光(よりみつ)四天王〉である。


 頼光(よりみつ)の声に応えるかのように碓井貞光(うすい さだみつ)が二本の矢を一度につがえてはなつ。


 二本の矢はそれぞれ別方向へ向かって飛んでいき、見事、二匹の仔蜘蛛(こぐも)を射ぬいていた。まさに神業である。


「そいつでしまいじゃ!」


 (つな)の声に洞窟の右脇の壁を這いあがる仔蜘蛛(こぐも)卜部季武(うらべ すえたけ)薙刀(なぎなた)で刺しつらぬいた。


「一体なんでござるか、これは?」


「いや助かった」


「ご無事でしたか、お(やかた)さま?」


「しかし、お主らどうしてここが?」


「まったく、お(やかた)さまもお人が悪い。(つな)とふたりだけでこんなおもしろそうなことを……」


 頼光(よりみつ)と〈頼光(よりみつ)四天王〉の五名が同時に云った。


 おたがいの云ったことがききとれず、みなが(だま)ると、洞窟の中からおくれてのどかな声がひびいた。


「そなたらが昨日の午后よりふらりと姿を消したままお帰りにならないことを心配されて、卜部(うらべ)どのが私のところへ相談へ参ったのでございます」


 座した姿のまま、ふわふわと宙にういて洞窟からあらわれたのは、(ほう)に身を包んだ小太りの男であった。


 巨大な土蜘蛛の死骸やたくさんのドクロや生首のころがっている凄惨(せいさん)な現場に似つかわしくないほど柔和(にゅうわ)な笑みをうかべている。


「……おまえか、(おが)み屋」


「晴明さま!」


 頼光(よりみつ)が露骨に不快そうな顔を見せ、(つな)(えり)を正して目礼した。


 京の都でその名を知らぬ者はいない大陰陽師・安倍晴明である。


 陰陽の秘術に精通している晴明にとって、人さがしなど天地の精霊や式神を使役すれば雑作もない。


「なぜ、お前までこんなところへでばってきた?」


 頼光(よりみつ)(けん)のある口調で晴明へ訊ねた。


 生粋(きっすい)武士(もののふ)である頼光(よりみつ)陰険姑息(いんけんこそく)な呪術を嫌悪している。


 そのため妖しげな術を使う陰陽師も忌避していた。


 はやい話が偏見にもとづく差別である。


「金時どのと賭けをしたのでございます。私たちがつく頃に、おふたりの化物退治はあらかた片づいておりますゆえ、ものものしい戦斧(せんぷ)なぞ必要ありませぬとなんど申しあげても、おききわけくださらないものですから」


「なにやらこざかしいものがうようよと這いまわっていたではないか!?」


 坂田金時が大きな戦斧(せんぷ)をかつぎなおして鼻息も荒くつめよるが、晴明はなに喰わぬ顔で反駁(はんぱく)した。


「私は、あらかた片づいておりますゆえ、と申しあげましたよ」


「……あれをあらかたと云うのか?」


 金時は憮然(ぶぜん)としたようすで碓井貞光(うすい さだみつ)卜部季武(うらべ すえたけ)の顔を見まわすが、ふたりは肩をすくめただけだった。かれらは最初から晴明の言葉を疑っていない。


「ま、あらかたではあろうな」


 (つな)首肯(しゅこう)した。


 晴明ほどの陰陽師であれば、合流した三人が仔蜘蛛(こぐも)退治に間にあうことも承知していたのだろう。


 もとより知恵と弁舌で金時が晴明に勝てるはずもない。


「……それに頼光(よりみつ)様と四天王のみなさまだけで、一九九〇個のドクロと二〇個の生首をお(とむら)いされるのは大変でございましょう? 私の式神なら穴を掘る手間だけでもはぶいてさしあげられます」


 瞬時に正確な犠牲者の数を云ってのけた晴明に内心舌をまきながら、頼光(よりみつ)は強情をはる。


「よ、よけいなお世話じゃ」


「よけいなお世話でございましたか? ……先ほど化物をひとりでひきずりだすのも、いささか御苦労なさっておいでのようでしたが」


 晴明の目が意味ありげに笑っていた。


(よもや、先ほど土蜘蛛の巨体がなにかに押されるように感じたのは、(わし)の目には見えぬ晴明の式神が手伝ってくれていたと云うのか? ……まったくよけいな真似を。それならいっそ(つな)に手伝ってもらった方がマシだったわい)


 知らぬところで晴明に借りをつくってしまった頼光(よりみつ)が、苦虫を噛みつぶしたような顔で折れた。


「しかたあるまい。ここはお前の顔をたてて、式神とやらに手伝ってもらうとするか」


「恐れ入ります」


 晴明は慇懃(いんぎん)な態度で頭を下げると、宙に座していた足をくずし、地面へ降り立った。


 なにやら呪文をつぶやき手をたたくと、窪地(くぼち)の空をおおっていたもやが瞬時に晴れて蒼穹(そうきゅう)からまばゆい光がさした。


「おお!」


 頼光(よりみつ)の前で晴明への賛辞は禁句だが、さすがの〈頼光(よりみつ)四天王〉も思わず感嘆の声をもらす。


「たまっていた邪気を(はら)い、土蜘蛛の張っていた結界を解き申した」


 晴明はたもとから人型の小さな紙切れをとりだすと、右手で宙に五芒星(ごぼうせい)を描き、紙切れに小さく息をふきかけた。


 紙切れが晴明の手の中から消えると、窪地(くぼち)の一画が見えない式神の力によって、ごそごそと掘りおこされていく。


「穴を堀りおえましたら、犠牲者の亡骸(なきがら)を埋め、丁重にお(とむら)いしてさしあげましょう」


「うむ。頼む」


 頼光(よりみつ)がすなおにうなづいた。鎮魂や成仏は頼光(よりみつ)の云う〈(おが)み屋〉晴明の方が適任にちがいない。


「お(やかた)さま、この化物の首はどうします?  オレの戦斧(せんぷ)に突き刺して京の都へ運びましょうか?」


 晴明の鼻をあかそうと、なんとか戦斧(せんぷ)の使途をひねりだしたい金時であったが、頼光(よりみつ)(かぶり)をにふった。


「こたびの土蜘蛛退治は勅令ではない。退治た証拠も必要ない」


「もったいねえ。このデッカイ化物の首をもちかえれば、お(やかた)さまの名声もますますあがる上に、恩賞だって出るかもしれねえってのに」


「金の字。でる杭はうたれると云うことわざを忘れるな。(わし)武士(もののふ)がめだちすぎれば、朝廷でもその武力に脅威(きょうい)を感じ、(わし)らを排斥(はいせき)しようとする(やから)がでてこないともかぎらん。力は敵に誇示するもので、味方に誇示するものではない」


「はあ……そう云うものですか」


 金時がいたずらをとがめられた子どものように、大きな体をすくめてしょげた。


「さすがは頼光(よりみつ)さまでございます」


 晴明が深々と(こうべ)をたれた。


 陰陽師として朝廷や人間の深い闇をのぞいてきた晴明には、頼光(よりみつ)の言葉がよくわかる。彼自身、高名で強大な力をもつゆえに幾度となく命を狙われてきた。


(つな)! 金の字! 土蜘蛛らの死骸をガレキの倉ともども燃やしてしまえ。季武(すえたけ)貞光(さだみつ)も手伝ってやれ」


御意(ぎょい)


頼光(よりみつ)四天王〉は口々に返事をかえすと、きびきびとした動作で土蜘蛛らの死骸を始末にかかる。


 洞窟の外で退治した赤鬼青鬼の死骸も見えない力で運ばれてきた。晴明は何体もの式神を使役しているらしい。


 頼光(よりみつ)も四天王とともに仔蜘蛛(こぐも)の死骸を拾いあつめて、ガレキと化した倉へつみあげた。


 やがて犠牲者を埋葬する穴を掘りおえたと云うので、全員で一九九〇個のドクロと二〇個の生首を丁寧にならべて埋めた。


 

何体もの式神を使役している晴明までもが、および腰でドクロを運んでいる姿を見て、頼光(よりみつ)は意外に思った。


「それでは、まず先に犠牲者のお(とむら)いをおこないたいとぞんじます」


 すべての犠牲者を埋葬しおえると晴明が云った。いつの間にか埋葬したところに供物をのせた簡素な祭壇(さいだん)がしつらえられていた。


「……よろしく頼む」


 頼光(よりみつ)はそう云ったあとで、となりへ立つ(つな)へボソッとつぶやいた。


「まったく、(おが)み屋の術とはブキミなものだな。……便利ではあるが」


御意(ぎょい)にござります」


 すなおに感嘆しない頼光(よりみつ)稚気(ちき)を見すかした上で、(つな)が追従した。頼光(よりみつ)たちは無言で合掌し、晴明の鎮魂(成仏)の儀式をながめていた。


 小半刻にもおよぶ鎮魂(成仏)の儀式をおえ、額に玉のような汗をうかべた晴明が皆みなへ向きなおって云った。


「鎮魂の儀はとどこおりなくおえましてございます。あとはそのまがまがしき化物どもの(むくろ)を焼きつくせばしまいでございます」


 晴明が指を鳴らすと、土蜘蛛どもの(むくろ)劫火(ごうか)につつまれた。(ちり)ひとつのこさんばかりのいきいで(ごう)と燃える。その光景をながめながら頼光(よりみつ)(つな)へ声をかけた。


「……とんだ紅葉狩りであったの」


「なんの。紅葉狩りより、よほど有意義な狩りでござった。このような狩りであれば、不肖(ふしょう)渡辺綱(つな)、いつでもお供つかまつります」


「ふふ、云いよる」


 頼光(よりみつ)が笑った。


「ひでえよ、お(やかた)さま。どうしてオレもお供させてもらえなかったんですか?」


 ふたりの会話をきいていた金時が口をとがらせて訊ねた。


貞光(さだみつ)季武(すえたけ)は出仕しておったし、お主はまぐさの上で大いびきだったのでな。あんまり気もちよさそうだったので、起こすにしのびなかっただけじゃ」


 頼光(よりみつ)の言葉に(つな)たちがほほ笑んだ。馬小屋でのんきに昼寝している金時の日常がありありと目にうかぶ。


「しかし、三人ともよく参じてくれた。心から礼を云う」


「へへっ」


 と金時が笑い、


「もったいないお言葉、かたじけのうございます」


 と貞光(さだみつ)が頭を下げ、


「お(やかた)さまも()っぱではないのですから、でかける時は(やかた)の者へ行き先だけでもお伝えください」


 と季武(すえたけ)がさとす。


「うむ。以後、気をつけよう」


 頼光(よりみつ)がてれたように頭をかいた。最後に晴明のもとへ歩みよる。


「晴明も大儀であった。……そう云えば、先ほど金の字と賭けをしていたと云ったな。なにを賭けた? もとをただせば(わし)のためじゃ。金の字の負けは(わし)がはらおう」


「……みなさまとともに夕餉(ゆうげ)をとり、酒を()みかわしたいと云ったまででございます」


「そんなことか。夕餉(ゆうげ)ならばおまえの豪奢(ごうしゃ)な屋敷で、美しき御妻女とともにとればよいではないか。なにを好き好んで(わし)らのようなむくつけき男衆にまじりたがる?」


 頼光(よりみつ)が皮肉っぽく口元ゆがめて云った。


 有名な話だが、大陰陽師・安倍晴明は恐妻家なのである。


 晴明の妻女は美しく人あたりのよいことで知られているが、陰陽師の妻であるにもかかわらず、頼光(よりみつ)以上に陰陽道のふしぎな術がきらいときている。


 屋敷の中でこまごまと働く、目に見えぬ式神たちの存在がぶきみでしかたないらしく、屋敷内での式神使用は厳禁されている。


 そのため、晴明は子飼いの式神を屋敷内ではなく一条戻橋のたもとへひかえさせているほどである。


 頼光(よりみつ)の皮肉に晴明は()ねた瞳で答えた。


「あれは外面如菩薩内面如夜叉(げめんじょぼさつないしんにょやしゃ)でございます。なにをするにもいちいち細々とかしましく、屋敷では心休まるいとまもございませぬ」


外面如菩薩内面如夜叉(げめんじょぼさつないしんにょやしゃ)」とは、外見こそ美しいが性格は悪いと云うことだ。


 心の底から嘆息する晴明をいじめすぎたか? と頼光(よりみつ)は少し反省した。


「さすがにそれは云いすぎであろう。佳人と名高い御妻女を不当におとしめるものではない。……しかし、(わし)らがお前の御妻女同様、陰陽師を毛嫌いしていることは承知であろう。にもかかわらず、なにゆえ(わし)らにこだわる?」


 大陰陽師としての威厳をすっかり失った小太りの中年が、背中に悲哀をにじませながら忌憚(きたん)のない心情を吐露(とろ)した。


「霊力の高い頼光(よりみつ)さまの陰陽師としての資質に惚れこんでいる部分もあるかとはぞんじますが、人間として裏表がなく快活なあなた方のことがうらやましいのでございます」


「……おまえ、ひょっとして(わし)らを莫迦(ばか)にしておらぬか?」


 単純だと云われている気がする。


「人の有りさまとして正しいと云っているのでございます。金時どののように生きられれば、どれほどすばららしいことかと」


「金の字が手本か。やはり、おまえは(わし)らを莫迦(ばか)にしておるようじゃの」


 言葉とは裏腹に頼光(よりみつ)が笑った。


 みながみな坂田金時ほど直情でも軽挙でも困るが、頼光(よりみつ)も金時の無邪気さや人柄のよさは気に入っている。


(……孤独なのだな、この(おとこ)は)


 頼光(よりみつ)ははじめて、大陰陽師としてではなく、人としての安倍晴明をかいま見た気がした。


「あいわかった。今宵(こよい)(わし)(やかた)でおまえを饗応(きょうおう)しよう。たらふく()み食いさせてやる」


「まことにござりますか?」


「この頼光(よりみつ)に二言はない。……ただし忘れるな。今後もおまえとなれあうつもりはない」


 頼光(よりみつ)がふいに真顔で云った。晴明も真摯な面もちで応えた。


「……肝に銘じてございます」


 晴明には頼光(よりみつ)の云わんとすることがわかっていた。


 天下に(とどろ)く名将と大陰陽師が手をくめば、この国を手中におさめることもむずかしくない。


 性根いやしき権力の亡者どもにとって、かれらの関係が(みつ)になることはそれだけで脅威(きょうい)なのだ。


 少なくとも、京の都ではまわりにいらぬ敵をつくることとなる。朝廷とはそう云うところだ。


 土蜘蛛どもの(むくろ)が塵ひとつのこさず完全に燃えつきたことを確認すると、頼光(よりみつ)たちは洞窟へ向かった。


「お(やかた)さま。これはいかがいたしましょう?」


 一足先に洞窟へ向かい、自分の弓箭(きゅうぜん)烏帽子(えぼし)を拾いあげた渡辺綱(つな)が、頼光(よりみつ)に折れた太刀(たち)切先(きっさき)をかかげた。


「ふむ。惜しいがどうなるものでもあるまい。捨て置け」


頼光(よりみつ)さま。御太刀(おんたち)を拝借ねがえませんか?」


 頼光(よりみつ)の言葉に晴明が手をあげた。


頼光(よりみつ)が折れた太刀(たち)(さや)からひきぬき、(つな)が折れた切先(きっさき)を晴明へ手わたした。


 晴明が折れた太刀(たち)切先(きっさき)をあわせて両手でつつみこみ、口の中で呪文をつぶやくと、折れた切先(きっさき)が継ぎ目もわからぬほどきれいにつながっていた。


 よみがえった刀身へ指先でなにやら文字を書きつけると気をおくる。


「えいっ! ……これで二度と折れることはおろか、刃こぼれすることもございません」


 頼光(よりみつ)には、一瞬、刀身がぼんやり光って見えたが、ほかの者にはわからなかった。


「陰陽の術とはそら恐ろしいものだな」


 頼光(よりみつ)太刀(たち)(さや)へおさめ、かるい違和感に気づいた。太刀(たち)(さや)の中で少しひっかかっている。


 清明がそのわけを説明した。


「陰陽の秘術は無から有をつくりだすものではございません。有りようをかえる力にござります。ですから、その御太刀(おんたち)もまったく元どおりと云うわけではございません。三寸ほど短くなっております」


「万能の術ではない、と云うことか。(さや)もこしらえなおさんといかんな」


 晴明はうなずいた。


「生まれかわった太刀(たち)に新しい名が必要じゃ。晴明、なにか善き名はないか?」


 訊ねられた晴明の顔に喜色がうかぶ。


「……〈蜘蛛切(くもきり)〉がよろしいかと」


「〈蜘蛛切(くもきり)〉か。みなはどう思う?」


「善き名かとぞんじます」


頼光(よりみつ)四天王〉が異口同音に答えた。


「みながそう云うのであれば、まちがいあるまい」


 頼光(よりみつ)が満足げにうなづいた。


頼光(よりみつ)四天王〉も晴明と視線をかわして無言でほほ笑んだ。


 陰陽師を毛嫌いしていた頼光(よりみつ)が、戦場で命をあずける太刀(たち)の名を晴明につけさせたのは信頼の(あか)しであり、新たな絆の(あか)しであった。


「今宵は祝宴じゃ。とっとと帰って、大いに楽しもうぞ」


御意(ぎょい)


 もやの晴れた大空に太陽が白くかがいていた。



12



 ……云い伝えによると、頼光(よりみつ)と晴明が私的に酒を()みかわしたのは、あとにも先にもこの一度きりであるらしい。


(おが)み屋嫌い〉で有名な頼光(よりみつ)と大陰陽師・安倍晴明との間に私的な交流があったと云う記録はない。


 頼光(よりみつ)(つな)の土蜘蛛退治の一件は、どこからか朝廷の叡聞(えいぶん)にたっし、ふたりは報償をたまわった。頼光(よりみつ)摂津守(せっつのかみ)・正四位下、(つな)丹波守(たんばのかみ)・正五位下に昇叙(しょうじょ)される。


 また、別の話になるが、のちに頼光(よりみつ)は〈頼光(よりみつ)四天王〉らと、最強の悪鬼・酒呑童子(しゅてんどうじ)退治へいどむこととなる。


 その時、頼光(よりみつ)()いていた太刀(たち)の名を〈蜘蛛切(くもきり)〉と云う。


〈おわり〉

 この物語は鎌倉時代に描かれた『土蜘蛛草紙絵巻』[(重文)東京国立博物館所蔵]を元に小説化したものです。


『土蜘蛛草紙絵巻』は、平安時代のヒーロー、源頼光と〈頼光四天王〉の筆頭、渡辺綱が土蜘蛛と呼ばれる化物を退治する物語です。


 能の演目などで知られる『土蜘蛛』とはまた別の物語です。


 主人公の源頼光は、中世伝奇文学(?)の世界で、現代のハリウッド映画におけるバットマンやスパイダーマン級のヒーローでした。


 陰陽師・安倍晴明と名声を二分していたと云ってもよいでしょう。RPG風に云うなら戦士(剣士)の源頼光と、魔術師の安倍晴明です。


 安倍晴明は荒俣宏や夢枕獏のお陰で人気が再燃しましたが、源頼光の知名度は今ひとつと云ったところ(笑)。そんなこともあって、頼光の物語を書いてみたいと思いました。


 源頼光と〈頼光四天王〉最大のイベントは「大江山の酒呑童子退治」の物語です。それは『今昔物語』などの現代語訳で平易に読むことができます。


 しかし『土蜘蛛草紙絵巻』には読みやすい現代語訳がなかったため「入門編になればよいな」と云う願いをこめて小説化しました)。


 大筋は『土蜘蛛草紙絵巻』に沿っていますが、独自の解釈やアレンジをほどこした部分がたくさんあります。


 要らぬ誤解を与えないためにも『土蜘蛛草紙絵巻』との相違点を明確にしておいた方がよいかと思い、この章をもうけました。


 基本は『土蜘蛛草紙絵巻』の詞書(文章)を元に小説化していくのですが、詞書が失われていて、絵しかない場面もあります。


 この小説で云うと、頼光が荒れ果てた屋敷へひとりで突入し、女性の白骨死体や生首などを発見するくだりです。


 女性の白骨死体が空飛ぶドクロの正体だったとするのは、私の完全な創作ですが、こう解釈するとしっくりきます。


 作者が物語のきっかけとなる空飛ぶドクロの正体を曖昧にするはずもありません。


『土蜘蛛草紙絵巻』の中で最も想像力にとみ、陰惨な姿で描写されているのが、屋敷の老婆でしょう。


 なんの元ネタもなく、これだけインパクトのあるキャラを創造したのであれば大したものです(物語全体から若干ういている気もしますが)。


 また、絵巻の詞書の「髪を前へ掻い取りて、灯を睨まへたる眼、透き漆を差せるに似たり。火の光に輝き合ひたり。」に感心しました。


 灯火をにらむ化物の美女の美しい瞳が妖しく輝くと云う場面です。


 おそらく、この場面は美女の瞳に映った灯火が、美女の頼光に対する怒りも表現していると思います。高度で巧みな描写だと感心しました。


 こう云うところに気がつくと、何百年も前の名前もわからない作者と心がつうじあったような気がしてふしぎです。


 昔から「ただあった」物語ではなく、そのうしろには血肉をもった作者がいて、苦心惨憺しながら時間をかけて物語と向きあっていた息吹を感じます。


 ……まあ、当たり前と云えば当たり前の話なのですが。閑話休題。


 頼光と綱は身代わりの人形を押したてて洞窟を進みます。もちろん、この洞窟はアニメ映画『千と千尋の神隠し』同様、異界へとつづく通路です。


 ふつう異界で待ちかまえているのは壮麗な宮殿だったりするものですが、古びた倉があるだけと云うのは、妙なおかしみがあります。


 このあと『土蜘蛛草紙絵巻』では、詞書にない巨大な赤鬼と青鬼の姿が描かれています。異界を強調するための効果であり、絵師の遊び心でしょう。


 しかし、物語の展開を考えると、ここで赤鬼青鬼が現れるのはかんばしくありません。


 敵の最初の一撃を身代わりの人形がひきうけなければ、綱の妙案が台無しです。


 そのあと赤鬼青鬼をこっそりやりすごして、土蜘蛛を倉からひきずりだすのもムチャです。


 ただ、私は絵師の描いた赤鬼青鬼も登場させたいと考えました。


『土蜘蛛草紙絵巻』の詞書そのままに小説化すると綱の見せ場があまりにも少ないのです(絵巻と云う制約もあったのでしょうか?)。


 そのため、洞窟の手前で赤鬼青鬼と戦わせることにしました。もちろん『土蜘蛛草紙絵巻』にこんな場面はありません。


『土蜘蛛草紙絵巻』の詞書に、土蜘蛛は「長さ二十丈(約60メートル)」とあります。


 18メートルの実寸大ガンダムでも充分大きいのに、二十丈はやりすぎだと思います。絵巻に描かれた土蜘蛛は3~5メートルくらいでしょうか。とても二十丈には足りません。


『土蜘蛛草紙絵巻』では倉の中で居眠りした土蜘蛛を頼光と綱がひきずりだし、首をはねます。


 この時、なかなか土蜘蛛が動かないので、頼光が神仏に祈念すると力がわいてひきずりだすことができたことになっています。


 なんでも神頼みにしてしまうとご都合主義のそしりをまぬがれえない上にツマラナイので、この物語では頼光と綱に大暴れしてもらっています。


 神頼みのなごりを晴明の式神として表現しました。


 物語の最後で〈頼光四天王〉と陰陽師・安倍晴明を登場させたのも、私の遊び心です。


 特に、安倍晴明はオマケのオマケ(単なる道案内役)くらいのつもりで登場させたのですが、書きすすめるうちに、頼光との間にひとつのドラマが生まれ、〈頼光四天王〉のこりの三人より出番が増えてしまいました。


「キャラが勝手に動きだす」と呼ばれる現象ですが、こう云う時は、想定外のところで物語のつじつまがきちんと整っていくので、自分で書いていないような(物語自体に書かされているような)ふしぎな感覚におちいります。


 物語が私を超えていく時、物語をとおして私の知らない私の発想と出逢う時、物語を書くのは楽しいなあと思います。閑話休題。


 ちなみに、坂田金時が戦斧をふるい、卜部季武うらべ すえたけが知謀に秀で、碓井貞光うすい さだみつが弓の名手と云う設定も私の勝手な創作なので、鵜呑みにしないでください(……そもそも日本に戦斧なんてあったのでしょうか?)。


 頼光の名刀〈膝丸〉も、実はもうひとつの『土蜘蛛』の物語に登場するもので『土蜘蛛草紙絵巻』では言及されていません。


 もうひとつの『土蜘蛛』の物語を書くつもりはなかったので(物語後半の展開がほぼ重複)、頼光が名刀〈膝丸〉を所持していたことを紹介しておきたかったのです。


 しかし〈膝丸〉ってネーミングセンスもスゴイですよね。


『土蜘蛛草紙絵巻』で頼光の佩いていた太刀は三尺ですが〈膝丸〉は二尺七寸です。そのため、折られた太刀が研ぎなおしたことにすればよいと思ったのですが、太刀の切先を研ぎなおすことなんてできるのでしょうか?


 この件も安倍晴明のお陰でムリなくまとめることができました。


『土蜘蛛』の最後でも〈膝丸〉は〈蜘蛛切〉と改称されます。この物語では、そこへもうひとつドラマを盛りこむことができたので満足しています。晴明サマサマと云った感じです(小太りの中年なんて書いてゴメンネ)。


 機会があれば、頼光たちの物語をあとふたつ書いてみたいと思っています。


 もうひとつの『土蜘蛛』の導入部だけ拝借したまったく別の物語と「大江山の酒呑童子退治」です。


 安倍晴明も陰ながら頼光たちへ力を貸すことになるでしょう(あるいは敵になっているかもかも!?)。


 ただ、頼光たちの物語を『退儺師アスカ』の世界観と融合させ『退儺師アスカ』前史として書くくわだてもありますので、すなおにつづきを書くかどうかはわかりません。


 この物語をきっかけに『土蜘蛛草紙絵巻』や源頼光へ興味をもっていただければ幸いです。


 最後までおつきあいいただきありがうございました。

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