起きてよ、母さん
初作品ななつめです。よくあるすれ違いの出来事です。
私は娘であり、妻であり、母親である。
3年前に祖父母を亡くしてから孫と呼ばれることはなくなった。
私には夫と2人の息子がいる。夫はアルコール中毒でギャンブル狂いだが、まだちゃんと働いてるだけマシであると思う。息子達も思春期なのか最近、とても冷たい。
夫への愛情は日々の行動で徐々に冷めていき、それを感じたのかわからないけれど旦那が浮気をしている。
なんとなく妻はもういらないのね、と心の一部がパリンッと割れた気がした。
実の両親が死んだ。母親は病気で、父親は後を追うように亡くなった。娘を心配してくれる人がいなくなり、娘はもう廃業なのね、とまた割れた気がした。
大学受験前の長男がグレている。家で物を投げつけては壁に穴が開き、私をババァと呼び、弁当を目の前で捨てられる。1週間も帰ってこないことはよくある。
それでもまだ次男がいると、いつものように弁当を作る。長男のことで落ち込んでいて、うざかったのだろうか。次男からも弁当はいらない、恥ずかしいと言われた。そうか、もう母親はいらないのね、と割れて壊れる音が聞こえた気がした。
自分は何のために生きてたんだっけ…意識が暗転していく。
~~~長男視点~~~
3日ぶりに家に帰ると弟だけがいた。
弟は電気もつけずソファに座っていた。訳を聞くとぽつりぽつりと話し出した。そこで初めて母親が脳梗塞で倒れたと聞いた。父親は浮気で遅く、俺はいつ帰るかわからないためおらず、弟が部活から帰ると倒れていて、夜遅かったため発見が遅れて心拍は取り戻すも意識は戻らないらしい。
弟が何もない空間を見つめて懺悔しだした。男友達に母親の弁当をからかわれ、さらに兄の弁当を作ってないのだから自分のも作らなければ楽になると思って言ったけど、このまま目を覚まさなかったら母さんの料理がもう食べれないなんて嫌だ。まだ親孝行してない!と泣いている。
俺は現実味のないまま、弟を置いていき教えられた病院に向かうと病室に父親がいた。
俺の存在に気づくも母親を見続ける父親。ぽつりと父親も懺悔をし始めた。苦労ばかりかけているため、母親がいつか父親を捨てるのではないかと不安になり、愛を確かめて取り戻したくて浮気したんだと。
男って馬鹿ばっかりなんだな、っと思った。無くしてから取り戻そうとしても遅いんだと気づいた。
母親が倒れてから数年が経ち、自宅療養に切り替えた母親を眺める。
俺は母親の手を握り、話し出した。
母さん、ババァなんて言ってごめんな。髪黒くしたんだ。二流だけど大学行って就職できたんだよ。父さんは飲んだくれてたけど、兄弟で元気出させようとしたんだよ。父さん、毎日母さんに一本の花を贈るってキザだよね。弟は一流大学に行ったよ、医者になるんだって熱く語ってたよ。今どき熱いやつとか恥ずかしいやつだよね、あいつ。大学で彼女できたんだって、母さんに似たぽっちゃりの優しそうな子だった。マザコンなんだな、あいつ。
なぁ、母さん、俺反省したんだ。信じてないけど、いるかもしれない神様にも願ったんだ。これからも家族で生きていきたいんだ。ねぇ、母さん。寝坊助なんだね、母さんって。疲れたら休んでもいいからさ、そろそろ起きて話してくれよ、母さん。俺、まだ、なにも、親孝行してないんだよ。起きてよ、母さん。母さんが起きてくれないと、謝ることもできないんだよ。許してくれなくてもいいから、苦笑いでもいいから、小言でもなんでも受け入れるから、お願いだ母さん。
母さん、はやく帰ってきて…
end
お読みいただきありがとうございました。




