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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

乙女ゲームの世界なんて御免です!~「二度あることは三度ある」なんて、冗談じゃない!~

乙女ゲームの世界なんて御免です!~「二度あることは三度ある」なんて、冗談じゃない!~【2ST・If】

作者: 匿名希望さま

とあるユーザー様よりいただきました!

蒼咲猫の宝物です!

『乙女ゲームの世界なんて御免です!~「二度あることは三度ある」なんて、冗談じゃない!~【2ST・IF】』






 一度ならまだしも、二度。

そして世の中には二度あることは三度起こりうると言う、古くから言い伝えられている、まるで呪いの言葉のように、【私】フラウ・ララナ・シュトレアナは乙女ゲームの世界にまたもや転生してしまいました。


 一度目は善良な令嬢を目指し、二度目は無事に終幕を終えて研究者として生きていたのに、やっぱり【世界の強制力】は役割から解放してくれるどころか縛り付け、愛おしい最愛の人や生きる希望を奪い、生まれ落ちる世界を憎ませようとしてきた。


 けれど、もう私はそんな手には乗らないし、乗ってやるものですか。

 世界だって憎んでやらないし、この子達以外に愛を向けたりなんかしない。

 目の前には庭で思いっきり走り笑顔を振り撒く愛おしい愛おしい私だけの双子の息子と娘。この子達は私が前世で道連れにした«あの子»の魂を受け継いでいる子供達。

 息子は銀色の髪に紫の瞳、娘は金色の瞳に紫の瞳。


 私は黒い髪に赤い瞳という異質な容姿だけれど、この子達は間違いなく私が腹を痛めて産んだ子達。

 だから大切に、そして厳しく、優しく、逞しく、人に阿ることのないように教育を施している。


 例え、ゲーム通りに攻略対象の侯爵に嫁ぎ、悪女、毒婦と世間に流布されようが、蔑まれ、夫となった人から愛されなくとも、私はこの子達を守る為ならば下げたくもない頭を下げ、いわれのない罪を被り、流したくもない涙を流し、怖気が走るくらい囁きたくもない愛を囁き、愛を欲する。


 今日も今日とてあのヒトからは甘い香りが漂ってくる。

 頭が痛くなり、吐き気を催すくらいには嫌悪していた時代はとうの昔に過ぎ去り、今では背中を向けて会話すらない冷えきった夫婦関係。


 涙で夜な夜な枕を濡らした私を抱きしめ、背中を撫でてくれた人はもういない。

 こちらが恥ずかしくなるくらいに甘い言葉を囁き、微笑んでくれた人はもういない。

 私が恋した人は全てヒロインが奪ってゆく。

 ならば、心を無にして愛さなければ哀しくなんてない。

 そう結論付けたのが、今の夫であるあのヒトと結ばれて一年が過ぎた日のこと。



 なのに、ねえ。

 どうして涙なんて溢れるのよ。

 判り切っていたことじゃないの。

 この世界でも私は【悪役】で、最後は断罪される側だってわかっていたはずなのに。

 どうして私はまた絶望感と悲しみを感じているの?


 はらはらと頬を滑り伝う涙の向かいには、あのヒトと他の攻略キャラ達が一人の少女を囲い、幸福そうに微笑んでいる景色があって。


「は、ははうえさま?どうしてちちうえはぼくたちをみてくれないのですか?」


「りのったら、ばかね。ちちうえはははうえのことがおきらいなのか、きっとめのごびょうきなのだわ」


 子供達の体温が辛うじて私をこの世に繋ぎ止めていてくれるのでしょう。

 きゅっと結び直された二つの幼い手に勇気づけられた私は、一度大きく息を吸い、覚悟を決め、足を踏み出したところで、キラリと光る何かを視界の隅に認め、その方向に視線を移した瞬間には、駆け出しておりました。


 まだ前世の記憶が甦っていなかった頃の私は、外を駆け回り、樹に登り、剣を振り回すくらいには活発でお転婆でした。

 その頃には素直にあのヒトに甘えられていましたし、好意を寄せていましたし、優しく接してもらっていました。



 おかしいですよね。

 普段あのヒトなら殺気にすぐ気が付くはずなのに。

 けど、きっとこれもゲームの強制力で世界の意思。


 愛しくて、大好きで、大切だった兄とも、父ともそして運命の相手とも想った方に抱き付き、鈍く煌めいた矢じりを背中に受け、ゆっくりと地面に崩れ落ちました。


 胸の奥が焼けただれるように熱いですが、不思議とそれほど哀しかったり辛かったりしません。


 ふふふ、と、思わず笑ってしまった私はさぞかし狂った女に見えたことでしょう。

 でもいいのです。

 ざまぁみろ です。


 これであのヒトが独眼になるルートは潰してやりました。

 優しい優しい紫の瞳を守ることができたのです。

 私に後悔が残るとしたのならば。


「ああ、愛された、かったなぁー。もっと、生きたかった、」


 生きて、笑いあって、手と手を握りあって、三人目の子も、健康に産んであげたかった。


 その思考を最後に、私の意識は深い闇に沈みました。

 だから私は知らないのです。

 旦那様が瞳を大きく見開き、顔を青ざめさせ、血の気が引いていく私を信じられないと喘いでいることも、子供達によって三人目の存在を知らせられ、後悔の雫を流していることも。


 そんなことも知らない私は、もう二度と生まれ変わりたくないと強く願っているのでした。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 泣いてしまうほどストーリーが良かったです。 [気になる点] 特にありません [一言] これからも、がんばって下さい!
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