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最終話です。

 真っ青な空に真っ白な雲、眩しいくらいの太陽の日差し。風は湿気を含み、余計な体感温度を上げてくれる。

でも、私はご機嫌だ。隣にいる凰士を見上げ、ちょっと幸せを噛み締めちゃったりして。あぁ、らしくない。

「昨日は楽しかったね。」

 誕生日パーティーの翌日、つまり昨日。私達は初デートに出掛けたが、本気で三人が着いてきた。余程の暇人と再確認。

最初はこそこそ隠れていた。まぁ、バレバレだったけど。探偵にはなれないな。

何度も撒くために走ったり、お店に隠れたりしたが、GPSでも付いているかのように追いかけてくる。もう無視する事を決め、食事や買い物など歩き回るが、気になって仕方がない。甘い時間が台無しだ。

でも、手をつないだり、陰でキスしたり、それなりに甘かったが。

まだ始まったばかりだし、今回は許そう。そんな風に思える私は、どうなのだろう?

 

 苛立ち半分諦め半分で、今日を迎えた。会社の前で凰士と偶然会い、こうして二人で社内に入ってきたが、視線が痛い。しばらく御無沙汰だったが、急に増加している。何かあった?社内掲示板に人垣が出来ているけど、私達とは無関係だよね?

「何だろう?」

 凰士と二人、人波を掻き分け、一番前に出る。

「えぇ?」

 そう、そこには写真付きスクープ記事。それも昨日のデート、こっそりキスしたのも映っている。ありえないだろう。

「これって?」

「白雪、ごめん。あそこ、見て。」

 悲壮感漂わせる凰士の声を受け、紙の左端、見出しと同じ大きさの文字で『白馬のおう様より』と書かれている。これって、つまり、凰士のお父さん、おじ様が用意したの?書いたのは別人だと思うけど。

「もう帰って良い?」

「ダメ、俺一人で噂の渦中に放り込まれるのは嫌だ。」

「じゃあ、凰士も帰ろう。あとは美人に任せれば大丈夫。」

「そうも言えないらしい。」

 凰士が頭を抱え、スクープ記事の横を指す。A四判の用紙に『今日も頑張って仕事をしましょう。凰士、白雪ちゃん、スクープしちゃってごめんね。でも、昨日限りで、芸能レポーターみたいな事は辞めるから、許して。ちなみに本日サボろうと考えているのなら、O氏に追いかけさせ、激写します。覚悟してください。白馬のおう様より』なんて書かれている。

あぁ、おじ様って、こんな性格だったっけ?頭痛くなってきた。

「うっ。」

 周りの視線が突き刺さる。

「白雪。」

 凰士が私の手を握り締め、ここから抜け出させてくれる。事務所に逃げ込むが、痛い視線の数が減っただけ。

まぁ、人の噂も四十九日、これじゃ法要になってしまう。人の噂も七十五日。、二か月ちょっとの我慢だ。それだけで終わればいいんだけど……。

「おはよう、ご両人。」

「おはよう。」

 沙菜恵と美人が意味深な笑みを浮かべながら、挨拶を投げ掛けてくる。

「おはよう。」

「おはようございます。」

「いやぁ、参ったね。」

「本当に、参った。」

 オヤジ臭い、この下手な演技。何を企んでいるんだ?

「私達の目を盗んで、あんなディープキスしているなんてね。」

「それだけでも驚きなのに、凰士くんのお父さん、社長に写真を撮られているなんて、本当に参っちゃうわねぇ。」

 本当に帰ってもいいですか?あぁ、数か月前の静かで平和な会社に戻りたい。

「でも、お熱くて羨ましいわ。」

「本当に。私も付き合い始めた頃のラブラブな時期に戻りたくなったわ。」

「あっ、賛成。」

 もう勝手に話していて。

「まぁ、そのヘンは良いとして、二人ともこれからも仲良く付き合ってよね。会社全体が応援しているんだからね。」

「そうよ。争奪戦に勝利したからって、気を抜くとほかの女に奪われちゃうから。」

 この二人は本当に私達の味方なのだろうか?時々、友達である事さえ疑いたくなる。

「大丈夫ですよ。俺、今までの人生で誰よりも白雪を愛していますから。」

「私だって。」

 思わず返してしまったが、赤面モノ。

「言ってくれるわね。」

「本当、熱い熱い。」

 ふと顔を上げると、赤い顔がぶつかり合う。照れ臭いような恥ずかしい気持ち。でも、凄く幸せ。

凰士がそっと私の手を握り締める。

「もう夏ね。」

 投げ遣りな沙菜恵の声に、そっと空を見上げた。真っ白な雲が歪なハートに見えるのは、もしかして、私が凰士を好きになって、凄く幸せだからかもしれない。いつまでもこの気持ちが薄れませんように。遠くにいるだろう縁結びの神様にそっと願った。

「さぁ、毎日恒例の仏様の念仏を聞きましょう。仕事、仕事。」

「仏様って、部長の事よね?あれは仏様というより、ゾンビ?」

「あぁ、そっちの方がぴったり。あのやつれた感じがゾンビっぽい。」

 凰士が苦笑を零し、女三人がくだらない話に興じる。

やっぱりこの時間も幸せなんだよね?ちょっとおかしくなって、私らしくないかな?

まぁ、良しとしよう。凰士が私の傍にいてくれるから。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

感想や評価などいただけると、とても嬉しいです。

次回から、『白馬のおうじ様誘惑作戦』を連載したいと思っています。続編です。

こちらも読んでいただけると嬉しいです。

これからもよろしくお願いします。

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