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ニケさんの机

作者: roboboa

暖かいところが大好きで、年中熱いお茶ばかり飲んでいた。

人や動物、生物、生物でない関わらず、優しいものが大好きだった。

ニケさんはそんな人だった。





ニケさんは机になった。





ちょうど私の部屋に遊びにきていた時で、

私がトイレに立って戻ってきたら

ニケさんが座っていたところに白い机があって、ニケさんはいなかった。

机は天板が長方形で、カドが丸く、

足は変な風にくにゃっと曲がっていて、細くて、

きゃしゃに見えるけれど、揺らしてみると意外にがっしりしていると分る。


「ああ、これはニケさんだ」

と私は思った。

とりあえず飲みかけで置いてあった、まだ熱いお茶をニケさんに勧めてみた。

机、つまりニケさんは、机としては当たり前だが、お茶を飲まなかった。

そのうちお茶はさめてしまった。

この机がニケさんなら飲めるはずだと思ったが、

さすがのニケさんでも机になってしまっては難しいようだ。


私はとりあえずお茶をいれ直して、

ティーカップの下にソーサーを敷かず、直接ニケさんの上に置いた。

ニケさんにお茶の熱さを伝えようと思ったからだ。

うまくニケさんに伝わったかは分らないが、

やっぱりニケさんは動くのが難しいらしく、ぴくりとも動かなかった。

そのうちお茶がさめてしまったので、私が飲んだ。


そのあと、机であるニケさんをどうしようか考えた。

ニケさんちに持っていって、「これがニケさんです」と言っても

多分信じてもらえないだろう。

第一、一人では二ケさんちまでなんてとても運べない。

だからとりあえず、私の部屋で机として使うことにした。

ちょうど机がほしいと思っていたところだ。

私はニケさんをよく陽の当たる方の壁ぎわにくっつけておいた。


さっそく外に出て、

ニケさんに良く似合うきゃしゃで白くてがっしりした椅子を買った。


部屋に戻ると、やっぱり机は机のままで、

ニケさんに戻っていたりはしなかった。

もし戻っていたらこの椅子をプレゼントしようと思っていたのだが。


とりあえず、またいれたての熱いお茶をニケさんの上に置いた。






それから私は、よく机に向かってすごすようになった。

机の上に、熱いお茶が入ったティーカップをソーサー抜きで置いて

ぬるくなってから飲む癖もついた。

最近たまに、私が飲む前にお茶がほんの少し減っている気がするのだが、

そんなときはやっぱり

ニケさんが机なりにがんばって飲んでいるんだろうな、と思う。




机になっても、ニケさんはニケさんだな、と私は思った。



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