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時計の針の音が、部屋のなかに響いている。

魔女は師長を見、そしてまた王子に視線を戻す。

じっと王子を見つめた魔女は、静かに寝台へと近づき、すっと手をかざした。

白い手が額の上から徐々に足の方へと下がっていき、途中、胸の辺りで手を止める。

その手からほわんとした光が現れると、突然王子の目がカッと見開かれ、激しく苦しみ出した。


「う、うぁぁぁぁぁぁぁ!!」


のたうち回り、獣のような声を上げながら暴れだす王子の姿に、師長は無意識に後退る。


「ま、魔女様…」


震える身体を叱咤しながら呼び掛けると、魔女は王子の胸から手を引いた。

するとその途端、王子の身体は一気に弛緩しぐったりとベッドに沈みこんだ。

死んだように動かなくなった王子に、師長はあわてて駆け寄る。

胸が小さく上下し、耳を寄せてみれば呼吸も聞こえてきたので、師長は安堵の息を吐く。

そして未だ全身を覆う紋様は消えていないものの、少しだけ王子の呼吸が穏やかになっていることに気がついた。


「こ、これは…!?殿下の容態が落ち着いた…?これは魔女様のお力ですか?」


驚きの目を向けてくる師長に、魔女はまたひとつ頷いてみせた。

師長の眼差しに期待がこめられる。


「で、では!やはり魔女様のお力をもってすれば、殿下をお助けすることが可能なのですね!?」


興奮する気持ちを押さえながら、師長は魔女に確認する。


(どうか…頷いてくだされ…!)


固唾をのんで魔女の返事を待つ。そして――――

コクン、と彼女は頷いた。


「あぁ…ありがとうございます、魔女様」


感極まったように師長は膝まずきながら魔女を見上げる。すると魔女は静かに右手を持ち上げ、人差し指をすっと師長の額に突きつけた。


「魔女様?」


何を…と言いかけたが、それが続くことはなかった。


―――聞こえているか?―――


(これは、いったい…?)


頭の中にすぅっと何かが流れ込んできたような感覚がしたと思った次の瞬間、自分のものではない声が響いてきた。

他の意識などに干渉する魔術は、とても高度なものだ。師長でさえ、様々な手順と複雑な陣、そして長々とした呪文を唱えなければならない。

それを魔女は無詠唱でやってのけたのだ。

もう何度目の驚きか、師長は言葉を無くししばし呆然となる。


―――聞こえないのか?―――


「あ、いッいえ、聞こえております!!」


再び呼び掛けられ、師長はあわてて我にかえる。


―――この者の呪いを解呪するには新月を待たねばならない。そして準備も必要だ。それをお前に伝えるので用意を―――


魔女は必要な物を師長に事務的に伝えると、もう師長にも王子にも見向きもせず、扉へと向かって行った。

魔女の言った物を揃えるのに三日。さらに新月を待つのに五日がかかり、漸く解呪の儀が行われることとなった。


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