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「何度悔やんでも悔やみきれません…。なぜ私は、エミリアを守れなかったのか。結局あの子のことも、あの子の母のことも、私は幸せには出来なかったのです」
そう言い、項垂れる士長の身体は小さく震えていた。
その士長に、団長が駆け寄る。
「それはッ、我々も同じです!士長様…。私は城にいたのに…ッ!エミリアが消えた時の絶望。士長様が全てを語ってくださり、そして復讐を持ちかけていただいた。その時漸く俺は自分の出来ることがわかったのです。エミリアが味わった以上の苦しみをあいつらに与えてやらなければならない。それが、俺が出来る彼女に対する唯一の償いだ…」
「…私と魔女様はまずはじめに味方を見つけることにしました。エミリアを大切に思い、そして今回のことを悲しんでいる人物…それを魔女様と共に探し、そして見つけたのが―――」
「殿下と、団長だった…と?」
「私も深い後悔に苛まれて日々を過ごしていたよ。あの男がエミリアに目をつけた時点で、何らかの手を打つべきだったのだ」
皆、当時の自分たちの無力さを悔やみ、苦しみを顔に浮かべている。
彼らがどれほどエミリアという女性を大切に思っていたか、ローレンにも痛いほどわかった。
「そして、我々はついにあの二人を死に追いやることが出来ました。奴らの魂は死後もなお苦しみ続けることでしょう」
「死後、ですか…?」
「はい。それが魔女様との契約です」
士長の言葉にローレンははっとなって佇む魔女を見上げると彼女は頷き、口を開いた。
「復讐に、手を貸すことに依存はなかった。だが術を、それも呪いを行うとなれば私の力だけでは実行できない。呪いには、対価というものが必要だったから」
「対価?」
「そうだ。強い術を使おうとするならば、それに見合った対価を差し出さなければならない」
いわゆる、供物のようなものだと魔女は言った。
呪いを行うということはその時、理を多少なりとも歪めることになる。その歪みが術者本人に向かって来ないよう、代わりに対価を差し出すのだ。
「呪いは完成した。王子が元の姿を取り戻したことで完全になったのだ」
それは、つまり―――――――――…
呪いに倒れ苦しんだ殿下も、呪いを行い死んだ陛下も、歪んだ望みにのまれた公爵も、公爵の首をその手で刎ねた団長も、そして魔女を招き入れた士長も…
全て…全て……
「そう。全ては計画通りだった。二人分の魂が呪いの対価だと、契約で言った通り」
公爵が魔女との契約で対価は『二人分の魂』と聞いた時、彼はそれを『王』と『王子』のことだと解釈した。しかし、それは間違いだった。
呪いはもっと前からはじまっており、公爵との契約など魔女の掌の上の出来ごと。
契約の対価は『王』と『公爵』だったのだ。




