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それから数年、森での魔女との語らいは続いた。
気のない返事を返していた魔女に、僅かながら変化が生まれる。
数年間、ずっとその名と成長を聞いてきた。会ったことはないが同じ姿で永い時間を生き続ける魔女にとって、エミリアの成長していく様子は何かしら心に響くものがあったのかもしれない。
いつしか士長と共に自分も、彼女のことを見守っているような気分になっていた。
そして、エミリアが十五の年。
「あの子の母が、亡くなりました…」
「そうか」
「我が家に引き取ることは出来ませんでしたが、城で働けるよう紹介状を手配しました。もちろん、後見人としての私の名は明かせませんが。今までより、近い場所からあの子を見守ることができます。チャルナ様、いつか、いつか必ずあの子と共にここを訪れたいと思います。その時は、どうかエミリアに会ってやってください」
「…良いだろう…私も、会ってみたい」
「!ありがとうございます」
魔女の言葉に、士長は驚き、そしてうれしそうにほほ笑んだ。
しかし、その約束が叶うことはなかった。
エミリアは城で侍女として働きはじめ、後に幼い王子付きのひとりとなった。
士長は陰ながら見守っていたが穏やかに過ぎていく日々の中で、エミリアの姿が消えたという知らせは、彼が城を離れていた時にもたらされた。
手を尽くし、漸くその行方がわかった時には、もう彼女は手の届かない冷たい場所で眠っていた。
狂いそうな気持ちを抱え、士長の足は自然と北の森へと向かう。そこで魔女に全てを吐きたしたのだ。
怒り、憎しみ、苦しみ、悲しみ…。
込み上げてくるそれらが、行き場を無くして身体中で渦巻いている。
本当に、今すぐにでも狂ってしまいたかった。
そして、魔女の中にも負の感情がわき上がる。久しく感じていなかった荒れ狂うような怒りだった。
(許さぬ……ッ!!)
魔女と士長の心が一つになる。
選んだのは、復讐だった。




