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ある魔女女の横顔を見つめていた視線を、ゆるゆると士長に戻した。


「北の森の魔女の話は代々、魔術士長という任を受け継ぐ者に語り継がれるもの…それは以前お話しいたしましたね?軽々しく口にしてはならない大きな秘密に、当時若くして魔術士長に就任した私は驚きと混乱に襲われました。白魔法とは正反対の黒魔法。古に滅んだと言われていた恐ろしい魔法が、魔女が、生きている…?連日私の頭の中を占め、胸の内にくすぶり続ける秘密に、ついに私は我慢が出来なくなりました。私も、若かったのです…。」


ある日、とうとう士長は北の森に足を踏み入れたのだ。

薄暗い森は噂通りに不気味で、小さな物音にもびくりと身体をすくませてしまった。

それでも、遂に開けた場所に出る。そこには白く美しい木があった。

しばし呆然とその光景に見入っていると、不意にその木の根元に動くものが視界に入る。

真っ黒な塊がごそりと動き、士長は身構えその黒いものを見据えた。

全身を真っ黒なローブで覆った身体。

見間違いかと思ったが、間違いではない。そこから放たれるオーラでわかる。


そこにいたのは小さな魔女だった。


魔女の姿かたちは伝わっていないが禁忌の術を使う者の生き残りだというのだからどんなに凶悪な姿の者かと思っていれば、そこにいたのはひとりの小柄な少女。

木にもたれかかりながら空を見上げる様子は、まるで時を忘れてしまったかのように静寂に包まれ、まるで人形のようだと士長は思った。

だが気配に気がついたのか、静かに魔女は士長の方へと振りえる。目深にかぶるフードによってその視線は遮られているはずなのに、士長は射抜かれたように動けなくなった。

立ち尽くす士長に何を思ったのか、魔女はおもむろに立ち上がり、何と自ら士長の方へと近づいてきたのだ。

驚き息をのむ士長の耳に、サク、サク…と草を踏む軽い音が響いてくる。あと三歩ほどの距離まで近づき、魔女は足を止めた。向かい合うように正面に立った魔女に、士長は自分の心臓が早鐘のように鳴りだすのを全身で感じ取っていた。

何も言えない士長と、何も言わない魔女。しばらくの間沈黙が続いたが、やがて唐突に魔女が口を開いた。


「…お前が、新しい魔術士長か」


問いかけというより、確認のようだった。




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