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そう、士長は不快気に吐き捨てた。


「そして、彼には野心がありました」


「野心?」


「はい。いつの日か王位を自分のものに、自らが王に、という野心です。兄王に献身的に仕える姿など所詮偽りですよ」


ローレンは驚きに目を見開く。


「そんな…ッ!それは謀反を企むということではないですか!!」


「そうです。そんな彼にとっては陛下も殿下も邪魔な存在でしたから…そこが、その感情こそが、我々の好期でした…」


そう言って士長は笑った。今まで彼が纏っていた清く、神聖な雰囲気を消し去った不気味さで。

ローレンは心臓の音がいやに近くで聞こえてきた。どくん、どくん、とまるで周囲の音は無くなってしまったかのように、心音だけが耳についた。

それなのに、士長の声は消えない。


「簡単なことですよ。陛下と殿下を排除する機会を虎視眈々と狙っていた公爵は、ある日私の部屋の前を通りかかった時に偶然にも(・・・・)聞いてしまったのです。“北の森には魔女がいる。黒魔法を使う古の魔女が、ひっそりとに暮らしているのだ”そう聞いた公爵がどのような行動に出ると思いますか?彼は北の森の魔女に密かに会いに行き、取引をしました。陛下と殿下を消してほしい、その対価に二人分の魂を渡す、と。そうして魔女様と契約をしたのです。魔女様は公爵に陛下を操り、殿下を呪い殺しその後陛下自身も狂い死ぬというシナリオと実行に移す力を与えました」


「しかし、人の心を操るなどと、そんなことが…」


「出来るのですよ。魔女様のお力を持ってすれば。それに、陛下の心の内にもにも付け入る隙がございましたので」


「隙…?」


ローレンは話を聞くのがやっとだった。反射のように質問を返すが、全てを理解出来ているとは到底言えなかった。

そんなローレンに、王子がどこか楽しげに笑いかける。


「父上は玉座に酷く執着した。例え後継ぎにであろうと、その座を明け渡すことが惜しくなった。だが、もうじき私は成人し、父上は引退だ。それに納得できない愚かさ、欲深さ…それが隙だ。能力もないくせに…」


国の頂点に立ち、権力を振るう。好きなだけの金が、女が、望める地位。皆が頭を垂れるのを見下ろすその光景。欲深き王は、固執した。


「だから叔父は父上に囁き、幻影を見せた。“殿下がその地位を欲している。無能な者が王でいるべきではないと、兄上を玉座から引きずり降ろそうとしている。殿下はあなたを殺しにやって来る。明日かもしれない、明後日かもしれない…このままではきっと殺され、殿下に玉座は奪われるでしょう。私なら兄上を守る方法を知っております”と…。息子に王位を奪われるのでは、首を取られるのではと父上は疑心暗鬼になった。徐々に負の感情に満たされ、正常な判断が出来なくなっていったよ。だから、殺られる前に殺ってしまえと父上は私を呪い殺そうという案に乗ったのだ。」


そして叔父は父上に魔女から与えられたという呪具を手渡した。

ためらうことなく、それどころか喜んで後継ぎを亡き者にする計画に乗る父上を見て、叔父はとても愉快に笑っていたよ、と王子は彼こそが愉快そうに笑った。自分が父親と叔父に殺されかけたというのに、それを笑って語っているのだ。






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