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「…俺は……エミリアは、俺の恋人だった」
「ッ!!」
その瞬間感じた衝撃を、どう表わせばいいだろうか。
あまりにも残酷な事実に、ローレンは頭の中が真っ白になる。言葉も出ない口はただぱくぱくとまぬけに小さく開閉を繰り返した。
「突然だったよ。あの日、仕事が終わり二人で逢うため待ち合わせ場所に向かった。だが、時間になっても彼女は現れず、どれだけ待ってもとうとうその日は逢えなかった。仕事が長引くこともあるにはあるが、何故かその日は、胸騒ぎがしたよ。次の日、エミリアの姿が見えないと同僚の侍女が教えてくれた。もちろん探したよ。必死に、探せる所は全て。だけど見つからなくて…遠方の仕事から帰ったばかりの士長様に相談したんだ」
当時のことを思い出し、団長は片手で顔を覆い隠した。しかし声には後悔と、そして深い悲しみが滲んでいた。
「突き止めた時にはもう…ッ!エミリアは王族しか立ち入ることの出来ない温室の土の中だった。私たちではその場所を掘り返すどころが、立ち入ることも出来ない。ハッ…!よく考えたものだ…」
最後の方は絞り出すような、掠れた声だった。表情は見えないが、小さく震えるその身体から彼の感情が痛いほど伝わってくる。
「私にとっても突然だった。母を遠ざけられ、今度は姉のように慕う存在までも、あの男は私から奪っていく。しかも殺していたなんて!信じられなかった…信じたくなかったッ!!」
王子も心の内を吐き出すように叫び、唇を強く噛みしめた。
「…今回の、この一連の出来事は、復讐だったということですか…?」
答えはわかっていたが、それでもローレンは確かめずのはいられなかった。どこかで、まだ否定してほしいという微かな望みを抱いていた。だが―――――――
「ええ、そうです。我々はエミリアの復讐のため、魔女様と協力しあの二人の命を刈り取ったのですよ」
帰って来たのは士長の肯定の言葉だった。
わかってはいたが、ローレンの胸に苦い思いが込みあげてくる。
「魔女様と、協力とは…?」
「計画のはじまりは、殿下に呪いが現れるさらにひと月ほど前にからでした。バーデナ―公爵という人物は武術に優れ聡明で、気さくな人柄で国民にも慕われておりました。しかしながら高い地位にあった彼は、その立場に溺れず驕らず、兄である陛下に忠誠を誓っていました。その態度に、彼の国民間の人気はさらに高まっていきました。だが、本当の姿はそうではありません。エミリアのことでもわかるように狡猾で、自己の欲を満たすことだけを考え、他人など虫けら程度にしか感じていません。だから人を殺すことなど、なんとも思っていないのです。…残酷で残忍な人物でした」




