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当たってほしくないことほど、何故当たってしまうのか。ローレンは顔をしかめる。


……吐き気がした。


きっと先日の事件の前だったら、誰もこんな話は信じないだろう。


「公爵は、狡猾でした。誰も彼を疑いなどしませんでした。所詮侍女がひとり消えただけです。騎士たちも本気で動いてはくれませんでした。私はその時他国へ出向く用向きがあり、この国を離れていました。帰ってきてエミリアのことを聞き、心臓が止まってしまったかと思いましたよ」


「…士長様は、捜されたのですか…?」


「もちろん、すぐに捜索を開始しました。おおっぴらには出来ませんでしたので、術者は私一人でしたが。そして、見つけましたよ…エミリアは、冷たい土の中にいました」


背中に冷水を浴びせられたような気がした。

息をのみ目を見開くローレンを見つめながら、士長は感情が削ぎ落された様な声で話を続ける。


「王族しか入ることの出来ないあの温室、その片隅にエミリアは埋められていることがわかりました」


「……バーデナ―公爵が殺して、埋めた、ということですか…?」


「最初は私もそう思いました。しかし、いくら公爵といえど彼だけで人間ひとりの痕跡を消すのは難しいのではないかと思いました」


「それは、どういうことですか?」


「つまり協力者がいるのではないかということだよ。ローレン」


答えたのは士長ではなく、今まで口を開かなかった団長だった。正直、ローレンには未だに団長がこの件にどう関わっているのかわからなかった。だが扉越しに聞いた彼の激しい憎悪がまだ、耳に強く残ったままだった。

戸惑いながら、ローレンは団長に視線を向ける。


「侍女を攫い、監禁し、殺害し、そしてその死体を埋める。初めは部下にでも手伝わせたのかと思ったが、調べていくと共犯として浮かび上がったのはもっと最悪な人物だった」


「それは、まさか…」


はっと頭にある人物が浮かんだ。だがそれは、口にするのも躊躇う人物だった。

今度こそ、あたってほしくない…それなのに…。


「陛下だよ」


団長の吐き捨てるような声が容赦なく耳に刺さった。


「しかも陛下は最初から関わっていたらしい。公爵が目をつけたのと同じように、陛下もまた殿下の侍女であるエミリアに目をとめたんだ。そして自分と同じように公爵が彼女に執着していることを知り、ある計画を持ちかけた。彼女を人気のない場所へと誘導したのは陛下だ。・・・その後起こったことは、考えたくない」


おそらく、皆予想は付いているはずだ。

女が攫われ、その後殺されるような事態になるということは、二人によって彼女に何が行われたか…嫌でもわかってしまう。再び吐き気が込みあげてくる。


「団長は、いったい何故今回の件に関わっているのですか?」


ローレンは思い切って質問を投げかけた。

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