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少々不快な描写が入ります。

ご注意ください。

「娘?しかし、士長様には後継ぎである男児しかいらっしゃらなかったはずでは…」


そのような存在を聞いたことがなかったので、ローレンは訝しげに訊き返す。


「ええ。正式には、息子がひとりです」


「正式には…?」


「お恥ずかしい話なのですがエミリアは、私が若く、まだ妻と結婚をする前につき合っていた女性との間に生まれた子なのです。その女性は異国の血を引いていて、結婚が許されませんでした。なのでエミリアは母親と二人で暮らしていたのですが、母親は流行病でエミリアが15の年に亡くなりました。正式に籍は入れられなかったとはいえ、私はエミリアも彼女の母親のことも愛していました。ひとりになってしまった彼女を引き取ろうと思ったのですが、エミリアはそれを拒み、働くことを選びました。ですから私は侍女の仕事を紹介したのです。父親とは…エミリアが受け入れなかったので名乗れませんでしたが。…それが、あんなことに…!」


士長は苦しげに顔を歪め、唇を噛み締める。ここまで感情を露わにした士長を、ローレンは初めて見た。

王子と団長も痛ましげに士長を見やった。


「…異国の血が混じるエミリアの容姿は、親の欲目だけではなく美しかった…母親に、よく似ていましたよ。彼女もまた美しい人でした。そしてエミリアはよく気の付く優しい子で、いつも笑顔で仕事に励んでいました」


しかし…とまたも士長は言葉を詰まらせる。言葉を繋いだのは王子だった。


「彼女は、当時私付きの侍女になったばかりだった。私の母は正妃だったが、父は私が生まれてすぐに側妃に心を移し、母の存在を疎んじ離宮へと追いやってしまった。父は後継ぎの王子としての私しか必要としていなかったからな、父親なんて存在になろうとはしなかった。…正直、幼い私は寂しかったよ。そんな日々の中で、エミリアに会った。私は6歳、エミリアは16歳だった。私は優しい彼女を姉のように慕ったよ」


王子の目は懐かしむように僅かに緩んだ。だが、その空気もすぐに鋭さをはらんだものへと変化する。


「いつも私と一緒にいてくれた彼女に、目をつけたのは叔父のバーデナ―公爵だ。あの男が、噂通りの傑物ではないないということは私もなんとなくだったが感じていた。奴は私の部屋へあいさつに来る度、そばにいたエミリアを舐めるように見ていたよ。嫌な目だった。そしてしばらくして、エミリアは…姿を消した…」


「失踪、ですか…?」


どことなく感じる嫌な予感に、ローレンは眉根を寄せながら尋ねる。


「失踪か、確かにそう処理された。貴族の娘でもない侍女が一人消えても、その程度の扱いしかされない。もっとしかっりと探すべきだったのに…ッ」


王子は今にも爆発しそうなほどの激情を抑えようと、両の拳をきつく握り締めた。その手は力が入りすぎているためか、小さく震えていた。


「一体、何が…」


ただならぬ王子の様子に、思わずローレンの声がかすれる。


「バーデナ―公爵はエミリアに目をつけ、彼女を自分の愛人にしようとしました。だがエミリアはそれを拒みました。彼女には当時、恋人がおりましたから…。初めは甘い顔で甘い言葉を吐いていた公爵も、次第に自分の思う通りにならない彼女に苛立ち、とうとう強硬手段をとりました」


「まさか…」


苦しげに目を伏せる士長の姿に、最悪の状況がローレンの脳裏をよぎる。

どうか、はずれていてほしい…。

しかし―――――――


「公爵はエミリアを攫い、監禁しました。さんざん拒まれた彼はその頃にはもうエミリアを愛でる気などなく、ただ彼女を己の欲望のままに嬲り、弄んだッ!!」



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