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あの事件から数日がたったが暗殺者も部下であった男も牢につながれ、尋問は未だ続いている。


(たが殿下の容態は随分と回復してきているようだ)


呪いを解かれた殿下はもう起き上がれるまでになっているらしいが、体力が低下していることもありもう数日は部屋で安静にすごすよう医師が言っていた。


(それにしても、何故団長が殿下のお部屋に…?)


ローレンは任務についての相談のため団長の姿を探していたのだが、詰め所にも団長室にも見当たらなかった。近くにいた女官に尋ねたところ、殿下の部屋に向かわれたと告げられた。


(バーデナ―公爵や陛下のことでまだ何か問題が…?)


首を傾げながらもローレンは真っ直ぐに殿下の部屋に向かった。

しかし、部屋が見えてくると異変に気づく。


(警備の兵が、いない…?)


殿下の部屋の扉の左右に、本来なら兵が交代で警備にあたっている。あんな事があった後だ。警備の者たちにはより一層気を引き締めるよう言ってある。それなのに……。


(持ち場を離れたのか?何故…、いやそれより殿下は部屋の中にいらっしゃるのか?団長は…)


胸騒ぎを覚え、ローレンは急いで部屋の前まで駆け寄ると、小さく開いた扉の隙間から用心深く中の様子をそと窺った。

そこには団長の背と、ベットの上で身を起こす殿下の姿、そして士長の白いローブが確認できた。別段襲撃を受けたり、何者かが侵入した様子もない。ローレンはほっと胸をなでおろした。

そして団長に声をかけようとしたその時――――――――。


「うまく事が運んでよかった。皆、礼を言う」


「礼などと、殿下。そんな事をおっしゃらないで下さい。殿下の協力があったからこそ、我らの願いを叶えることが出来たのです。一番危険でお辛い‘呪いにかかる’という役割を引き受けて下されたからこそ…あの者たちを葬りされたのです」


ローレンは扉を開きかけた手をぴたりと止めた。

聞こえてきたのは王子と魔術士長の声。だがその内容に、ローレンの心臓はどくりと嫌な音を立てた。


「私など、呪いにかかってからは寝ていただけだ。皆が苦労してくれたからこそ、父上と伯父上…陛下と公爵に復讐することが叶ったのだ」


(復讐、だと…?)


王子のぞっとするような冷たい声が脳に届いた。どういうことなのだ、とローレンを激しい動揺が襲う。


「団長殿も、恨みを晴らすことができましたか?」


「ええ、士長様。この手であの憎き公爵の命を奪えたこと、感謝しております。出来れば王の首もこの手ではね飛ばしたかったですが…」


聞きなれたはずの団長の声が、恐ろしい言葉を紡ぐ。


「まあそれは仕方がないことです。あそこで陛下に公爵の罪を公にしていただかなくては、仮にも王族公爵を打つ大義名分が得られませんから。だからこそ、陛下には完全に狂わないでおいてもらったのです。これも全て、魔女様のお力のおかげです」


「ああ、本当に魔女殿には感謝している。あなたがおらねば今回の計画は成立しなかった。改めて礼を言わせてもらう」


ローレンが身をひそめる扉からは死角となっている場所に向かって士長と王子が語りかけた。


(魔女、だと…!?彼女もこの計画を知っていたのか…?)


ローレンの混乱は益々深まるばかりだ。


「礼はいい。私は私の意思でこの復讐に手を貸した」


部屋の中から初めて聞く女の声がした。淡々とした抑揚のない口調のその声は――――。


(これは、魔女の声か…?しかし魔女はしゃべれないはずでは―――)


「話せるぞ」


「――ッ!!」



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