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どうやら解呪の儀は成功のようだ。
王子の身体から徐々に不気味な文様が消えていくのを見て、士長は胸を撫で下ろす。
だがまだ終わりではない。自分と副士長の役割はこれからだ。
緩んだ気を、士長は今一度締め直す。
(いくぞ、今だ…!)
「かはッ!」
魔女の声が頭に響いてくるのと同時に、黒い煙のようなものが王子の口から飛び出してくるのを確認し、士長と副士長は自分たちの魔力を放出する。二人の魔力は見えない壁となり、煙が逃げようとするのを防ぐ。そして魔女が小さな小瓶を取り出すと、煙はその中へと吸い込まれていった。
全ての煙が無くなると、部屋の中が静寂に包まれる。
「終わり、ましたか…?」
副士長が恐る恐る呟き、士長も問うように魔女を窺う。
(解呪は成功した。呪いは封じた)
淡々とした声で、儀式が終了したことを告げられた。
「魔女様、ありがとうございました」
士長は深々と頭を下げたが、魔女はただ黒い煙の入った小瓶をじっと見つめていた。
――――――
「士長様」
部屋の扉を開けると、廊下に団長とローレンが待ち構えていた。
「殿下は…」
ローレンが不安げに問いかけると、士長はひとつしかっりと頷いた。
「大丈夫です、殿下の呪いは解かれました。お身体の文様も徐々に消えていくでしょう。これも全て、魔女様のお陰です」
士長の柔らかな声を聞き、ローレンはほっと息をついたが、すぐにその表情は硬くなる。
「そうですか、よかった…。皆様、すぐに移動いたしましょう。殿下をお部屋にお運びしなければなりませんし、お話しなければならないこともありますので…」
「では、やはり」
士長の表情も曇っていく。それは恐れていたことが現実となってしまったということだった。
――――――
謁見の間に、再び王族や貴族たちが集められる。
重苦しい雰囲気が漂う中、士長と魔女が現れ、王の前へと進み出た。
「魔術士長、報告を」
はい、と落ち着いた声で返事をした士長は、深々と下げていた頭をゆっくりと上げる。
「解呪の儀は成功し、殿下の呪いは無事解かれました」
士長の言葉に集められていた者たちから、おぉ、と声が漏れた。無事を喜ぶ言葉も聞こえてくる。
「そうか。二人とも、ご苦労だった」
王もまた安堵したのだろう、部屋の空気が緩んだ。しかし、士長の表情は厳しかった。
「陛下、報告にはまだ続きがございます」
「続き、とな?」
「はい」
申せ、と王が促すと士長はうなずき、ぐるりと周囲を見回した。
「殿下を呪った犯人は、この中におられます」
ざわり、と空気が揺れ、皆に動揺が走る。
混乱したようなざわめきが、大きくなっていく。
「それは、どういうことだ。魔術士長」
王も表情を強張らせる。
「魔女様がそのようにおっしゃっております。魔女様は殿下の呪いの元を取り除かれました。しかし、呪いを完全に消すには呪い返しをせねばなりません」
「呪い返し…」
「はい。呪いを、それを行った者へと打ち返す術でございます。おそらく、明日には犯人が知れることでしょう。その者は大罪人…裁かれなければなりません 」
「…そうか」
「はい」
それきり、王は黙り混み、集められた人々も戸惑うしかなかった。
士長は王に一礼し、まだ王子の容態を見るためにその場を後にした。




