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Ep6-2 レイド結果報告

カトウと会話から少し遡った八月初旬、英太はノクターナルの拠点にいた――

「こんにちは」

「よう、英太か。期末試験はどうだった?」

「聞かないでくださいよ、ショーさん」

「ワハハ、ま、俺たちはもうとっくに通り過ぎた試練だからな。なあに、やってる間はしんどいが、過去になってしまえばなんてことないものだよ」

「ショーさんは勉強、得意なほうだったんですか?」

「勉強が得意な奴が傭兵なんかになるワケないだろう。英太は見る目も養わないとな」

 豪快に笑っているけど、ショーさんの笑い声にはどこか作ったような気配が混じっている気がした。

「ま、英太だからね。期待するだけ無駄よ」

「桔花ちゃん、おはよう。その様子だと桔花ちゃんはテスト、大丈夫だったみたいね」

 昼過ぎなのに業界人のような挨拶を片梨さんと交わすユナさん。

「当然でしょ?そこらのぽっと出のレイダーとは出来が違うのよ」

 ぐぬぬ。学年二位相手に言い返す言葉がない。俺に付き合って毎日遅くまで訓練していたのに、一体いつ勉強していたんだろう?

「あの程度の試験なんて授業中しっかり聞いていれば十分よ」

 俺が声に出さなかった疑問にニヤニヤしながら答える。

「へ、へぇ……」

 反発しても下手に出ても反撃にあいそうで、ふにゃっとした返事になってしまう。

「ははは、相変わらず桔花の切れ味はするどいな。そうそう、ラグナロクの知り合いが十代の小娘にいいようにあしらわれたって憤慨していたぞ」

 ショーさんが思い出し笑いをしながら語る。それってあの原子炉への通路で会った兵士みたいな人だろうか。根にもたれてなきゃいいけど、と余計な想像をしてしまう。

「そうだ、漣。この前のレイドの結果ってどうなったのよ?」

 うん、そう。俺も気になる。途中でミッション達成条件(メルクマーク)が変更になったから勝利条件が曖昧になってしまって最終的な勝利がどのチームになったのかはっきりしない。最初の達成条件なら俺たちがコアを持ち出したから優勝になりそうだけど、肝心のコアは脱出途中で行方不明になってしまい運営に届けることは出来なかった。そうするとミッション未達成という評価になってもおかしくない。

「優勝はラグナロクだ」

 やっぱり。うーんでも、猿島要塞を機能停止にするっていう点でも俺たちが果たした役割は大きかったはずだ。

「ええっ、なんでそうなるのよ。あたしたちのほうが先にM-13号をゲットしたし、原子炉を停止させたのもあたしたちじゃない」

「まさしくそのせいだ。運営の上層部から原子炉の存在に関して強い箝口令が発令された。俺たちの活動を評価しようとするとどうしても原子炉の存在に触れることになる。だから功績ごと握りつぶすことにしたってわけだ」

「なにそれ、信じらんないっ。断固抗議してやる!」

 片梨さんは憤懣やるかたないといった表情で漣に詰め寄っている。対してショーさんやユナさんは冷めた様子で決定を受け入れているようだ。俺はユナさんに事情を聞いてみた。

「優勝がラグナロクということは賞金も彼らが全部持って行ったんですか?」

「ええ、そうよ。もっとも、実際に現場で体張っていた連中は決定に猛反発したようだけどね。さっきショーさんが話していた知り合いっていうのも、手柄を横取りする形になったことをわざわざ詫びに来たそうよ」

 なるほど、それで。あの人、ちょっと強面のおっかない雰囲気だったけど、いい人だったんだ。

「男の人ってプライドにこだわりすぎるわよねぇ。もらえるお金はありがたく頂いておけばいいのに。あら、英太くんも男の子だったわね。ごめんなさい」

 データを整理していた端末から視線を外してニコリと微笑みかける。

「い、いえ。いいです、はい」

 なぜか顔が熱くなってうつむいてしまう。年上の女性は苦手だな。

「いいわけないじゃない。実際、こっちは賞金を逃してるのよ?申し訳ないと思うなら全額置いていきなさいってーの」

 バンバンと会議卓を叩く片梨さん。同年代の女性も苦手だな。うん。

「そのことだが、運営から別口で補償金が入った。色を付けて七千万クレジット。これは小型原子炉についての口止め料という性質が強いがな」

「ひゅ~」

 ショーさんが口笛を鳴らす。

「そ、ならいいわ。運営には怒鳴り込まないであげる」

 金額がラグナロクの賞金より多かったことで片梨さんは溜飲を下げたようだ。やれやれ、我らの怒れる女神ネメシスのご機嫌が戻ってほっと胸をなでおろす。

「というわけで、小型原子炉に関する一切の情報のリークは禁止だ。いいな?」

「「「了解」」」

 リーダーの念押しに全員が神妙にうなずく。

「それにしても運営も大変ですね。『天使の遺灰』のときも二チームに賞金を出したわけだし、こう何度も出費がかさむと大丈夫なのかなって心配になりますね」

「ワハハ、英太はまだ未成年だから実感はわかないだろうが、大きな組織ってのは高々一億かそこらの金じゃ揺るがないものさ。運営にしてみりゃ、はした金だ」

 ショーさんが首を回して後ろに座る俺にウインクをする。

 へ、へぇ、そうなんだ。大きな組織っていうのがどのくらいのものをいうのかもわからないまま俺はうなずいた。

「でも最近の失態は目に余るわよね。レイド中に条件を変えたり勝者を複数にしたり。レイドのランクが事後に変更になるだなんて、運営の怠慢よ」

 やっぱり腹の底では許していないのだろう、片梨さんが腕を組んでぷりぷりと怒っている。

「そうだな。運営も組織が肥大化して機能していない部分があるのだろう。こちらもあまり信用しすぎずに独自の情報収集は怠らないように」

 これはユナさんに向けた言葉だ。

「了解よ」

「さて、次のレイドはそんな運営が詫びの意味もあって用意した、いわばボーナスステージだ」


リーダーの漣から次のレイドの内容が告げられる――

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