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『宝石血液の記憶・序』
(深い闇。サファイア色のインクが紙に滲む音、そしてペン先の凍てつくような摩擦音だけが響く)
……日記、……○月○日。……空気は、……今日も、……痛いほど冷たい……。 ……文字を見れば、……わかる。……かつて、……ここに騒がしい者たちが……いたことを。
……青い、……私の冷たい手を……無理やり握って、……『あったかいね』と笑った、……泥だらけの女の子……。 ……知識としては、……知っている。……けれど、……あの子の体温を……私はもう、……思い出せない……。
……だから、……私はまた……筆を執る。
……この物語を、……物語として、……凍らせておくために……。
……さあ、……ページを捲って。……これは、……あなたが忘れてしまった……、……私たちが、……確かにそこにいた証拠……。
……始まりは、……春の陽だまりのような、……小さな鐘の音からだったわ……




