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閑話 第二録 動的平衡について

 樹蟲ユグレナたちは、世界樹ユグドラシルを単なる森の呼称としているが、ぼくは少し異なって具体的な定義を示したい。


 一般的な森林をなす生態系の構成子は、植物、虫、鳥、獣、土壌、その他もろもろと多種多様だ。だが、それらは生物と環境の互恵ごけい関係によって形成、維持され、一体物として存在しているのだ。


 そして世界樹ユグドラシルにおいては、外界と区別され動的な平衡へいこうを維持する一個体――――つまりは「生命」をなしている、とぼくは考える。


 *


 生命は、その基本原理である生存本能によって、他の生命と競争を行い、栄枯盛衰えいこせいすいを繰り返すなかで、一時的な均衡きんこう状態である「生態系」を形成する。


 自然摂理に現れる一時的な平衡へいこうの集積は、生命定義に相似して、その差異は「ホメオスターシス」が機能し持続的であるか、によるのだ。


 ホメオスターシスとは、生物の体内環境を平衡へいこうに維持する機構――――いわゆる「恒常性こうじょうせい」のことである。つまり勘案すべきは、世界樹ユグドラシルという閉鎖系において、恒常性維持ホメオスターシスは果たして存在するのか、そしてそれはなんによってなされているのか、なのだ。


 *


 植物は菌と共生している。そしてその植生は、相互に利得をもたらし合う感染状態――――「相利そうり共生」によって維持されている。もちろん、この森にも共生菌は存在して、多様な植生を形成、維持している。


 植物の根に共生して「菌根きんこん」を形成。菌根きんこんは根外へ菌糸を伸ばし、土壌の栄養分を吸収、植物が生成した栄養分と交換することで、みずからに必要な栄養分を得ているのだ。さらに、それだけではない。


 菌根きんこんを形成する菌「菌根菌きんこんきん」は、土中に伸ばされた他の植物の菌根菌糸きんこんきんしと結合して連絡する。植物種を問わず、菌根きんこん同士が回路を形成し、交信しているのだ。


 *


 菌根きんこんは土中の菌糸を用いて、植物の特性に合わせ、「実生みしょう」の成長を操作する。


 実生みしょうとは、発芽して間もない植物のことであるが、ある菌根菌きんこんきんは、実生みしょうの成長を阻害することで多種を共存させる。また別の菌根菌きんこんきんは、実生みしょうの成長を促進し同種を密生させる。それらを多様な植物種の菌根きんこんが併存させて、複雑で広大な森林を形成するのだ。


 いわば植物に適した生育環境を、菌根菌きんこんきんが整備するのだな…………で、本題はここからだ。

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