①七世への取材
チャプター① 七世への取材
・雑踏(午後)
シーン①
一人の男(七世)が通行人から何かをひったくる様子が撮影されている、それについてディレクターとカメラマンが話し合っている
カメラが雑踏の中にいる男(七世)をアップで盗撮風に撮影している
カメラマン『ちょっとまってくださいよ、あ、いま、アップになってます、』
カメラが男(七世)を捉える、この時に男(七世)の表情が見える
ディレクター『あんまり、他の歩いてる人の顔、映んないようにしてください』
ディレクターの指示に従い、他の通行人の顔が見えないように男(七世)の下半身が画角のメインになる
カメラマン『はい、で、これで、、、(まあ、最悪他の人の顔が見えたらモザイクとか、)』
男(七世)を追いかけていると、男(七世)はスリをする(スリをした瞬間にしたのセリフ)
カメラマン『あ!やります!いきました』
ディレクター『撮れてる?あ、いい、良い感じかも』
カメラマン『いいっすか』
ディレクター『あ、全然ありですね』
スリをしたことに通行人からは気づかれずに去っていく七世
~カット割る~
シーン②
ディレクターがマイクを持ち、アナウンサー風に喋っている
ディレクター『私はただいま、○○駅前の交通量の多い交差点にいます、このような人の行き来の多い雑踏の中、道行く人から財布を盗むスリ師の男がいました、なんとこの男性なんですが、かつて世界的な大活躍をされていたあの大怪盗某三世直系の怪盗を自称しておられます、某三世から四世五世六世と世代を受け継いだ現代の大怪盗七世を名乗っておられます、しかしながらこの格式高い怪盗一族も時代の流れに逆らえず依頼の減少や後継者がいない事に大きく頭を悩ませているそうです、今回はさきほどの映像でとらえましたこの七世という怪盗に密着取材を行うことになりました、そこから見えてきた現代の怪盗のありようは私たちのイメージしていた物とは少し違ったものでした、時代の変化とともに廃れてしまったエンターテイメントとしての大怪盗、忘れ去られたその‘今‘に密着です!』
カメラマン『はい、オッケーです』
ディレクター『ありがとうございます、大丈夫そうですか?』
カメラマン『撮れてます、大丈夫ですよ』
~カット割る~
シーン③
七世『お兄さん?、お兄さん、ちょっと待って、これ、、、落としたんちゃうよ、あの、今スリましたんで、ごめんなさいね、もう今返しますんでね、中身もそのままですから、ちょっと確認して頂いてね、
、、、あのごめんやけどコレ、、、見てもらえる?わかる、俺、免許あるから、こっちも仕事でやってますんで警察とか動かないんで、』
通行人『え、僕、僕の財布、あ、落としましたか?なんか盗られたんですか、、、え、全然いつ盗られたのとかって気づかなかったです、、、あの、これ、あ、僕の財布ですね、、、えーどこですか?、、、えーこの取材で今、盗られてたんですか、いやわからなかったですね、、、、あ
ありがとうございます、、、ありがとうございますってのも変ですね、僕から盗ったわけですもんね、、、はああ、こういう、お仕事、お仕事というか免許が、あるんですね、、、、いやあ、はい、まあ、頑張ってください、、頑張らない方がいいか、僕ら的には頑張らない方が良いですね、はあすいません』
~カット割る~
ディレクター『あのさきほどお見せしていたのは』
七世『ああ、これ、まあ、あんまり映るとよくないんだけど、ほれ、顔のところはモザイクいれてや』七世、免許を取り出す
ディレクター『これなんですか』
七世『怪盗の免許、ほらここ、LICENSE TO STEELってかいてある、これあるから、、俺別に盗みしても大丈夫なんだよね、、これちゃんといろんな国が認めてる、certifiedって、ニッポンとアメリカとロシアとか、書いてあるよね、アメリカで作ってもらってんねん』
ディレクター『え、これ本物ですか?』
七世『本物、本物というか、うーん、まあ、本物とか偽物とかっていう概念が僕らには薄いけどね、あるのは価値だけだから、、、これがあることによって納得する人は多いよね、で、それはまあ、みんなもそうやん、法律があることによって納得できるみたいなね、そういう意味で価値はあるよね、さっきの人も納得してましたし』
ディレクター『はあ?、、、怪盗って、こういう免許があってやられてることだったんですか?』
七世『まあ、これもぶっちゃけパチモンっちゃパチモンっすよ、その偽造してるとかっていみではないですけど、あのようは僕らの稼業って、その最初に認められたのあの江戸時代なんですよ、だから江戸時代の免許があるんですよホンチャンの、ニッポンの、だから、これは便宜上人前出す用にアメリカの人に最近作ってもらったパチモンっちゃパチモンなんすよ、作ってるのはあのちゃんとしたガバメント、政府がつくってますけどね、江戸時代に発行されてるものが本物というかちゃんとした怪盗の免許ですね』
ディレクター『江戸時代の免許があるんですね』
七世『そうそう、それを盗まれたのよ、ニッポン人が、フランス人の海外の怪盗に、まあ、そのフランスの怪盗は親日派って言ってるんだけど、日本が好きみたいなことを言ってるんだけど、結局、その免許が狙いだったと思うよ、王族とか支配層が公的に文書という形で盗みを認めてるっていうそんなものは当時、世界に日本に一枚だけしかなかったんで、だって盗みって文明以前からありそうなもっとも基本的な犯罪でこれを許すって社会システムのモラルの根幹が否定されかねないような事ですからね、、だからそれは宝ですよね、だからそういう権威を利用することでその怪盗というものを稼業として成立させたわけですよ初代の方がね、今は僕がその免許を持ってるんで、初代の方は僕の大先輩ですよね』
ディレクター『その本物の免許っていうのも見せてもらえたりするんでしょうか?』
七世『いいよ、まあ、そうなると思ってたんで今日はちょっと特別に取材っていうことで、ちょっと張り切って持ってきました、これはもう、世界中の怪盗が夢にまで見るっていう時代もあった、本チャンのやつです』
ね、なんやったけ、徳川、徳川、まあでも多分犬の人やと思います、、それぐらいファンキーな人じゃないと認めないでしょうこんなことは』
『捕まんないよ、いやほら書いてあるでしょ、この者が依頼者の求めに応じ、行う物品の窃盗行為の罪過そのすべてを免ず、ほらこれ英語、ここ英語でおんなじこと書いてあるから』
『いや、そりゃ、三世さんがすごかったのよ、本当に、本当にすごかったのよ、三世さんは、だってみんな知らないでしょ、三世さんの仕事とかね、いや、それ知ってたら、こんなペラペラな免許、国側からしたら痛くもかゆくもないぐらいのメリット与えたからねあの人、たぶん犯罪許可証とか何枚でも出させることはできたと思うよ三世さんは、だってあの人何回か戦争止めてるからね、あの冷戦とか冷戦が冷戦のまま終わったの多分、三世さんのおかげだからね、いやそれぐらい本当にあの人はやりてで、各国のセキュリティガードとかの概念がまだ甘かった時代はなんでもやってたからね、どこにでもいたから、どういうタイミングでどこの国が何考えてて、どう動くかっていうのを全部考えてて、で現場出て先手うっちゃう、、、たぶん何発かはミサイル止めてるし現場で、資料の流しで首脳陣の思惑コントロールしたりしてたよね、すごい難しいバランス感覚の時代で、、、五世さんが三世さんとあってて、もう五世さんの話なんだけど、結局綱渡りが好きなんだって、そのスリルなんだってやっぱ原動力は、落ちそうででも絶対に落ちない、落ちそうなんだけど、ギリギリしのげる、なんなら落ちてもいい、その感覚、落ちてる途中のスリル感をめっちゃ大事にしてるって、だから三世さんとかおじいちゃんなってもめっちゃギャンブルやってる、ギャンブルもただお金とか賭けるわけじゃなくて、お金はもう十分あるから賭けてもスリルがないから、、、なんか、、、なんだろうなあ、本当にやりたくないこと賭けてたって言ってましたね、まあ五世さんよく三世さんにギャンブル誘われて、、、負けたら例えばNHKの集金人のフリして10人から契約とるまで帰れないとか、そのギャンブルで負けた金額の分だけNHKの集金の契約でその金額にたっするまで帰れないとか、だから負けたら、もうずっとっ夜までずっとっ集金それをそのままNHKの人に契約とりましたってその当時はボランティアで勝手に集金人やっても全然良いっていう制度があったらしくて、ただ契約とってただNHKに流すみたいなね、、、で三世さんとかそういうの賭けたギャンブルで結構負けてたらしくて、だから最後の方は普通にもうお客さん怖くなっちゃってて、何回ピンポンおしても断られるとか、それで心折れてでも帰れないから、もう最後泣きながらもう頼み込んで、ようやく一件、一日で終わらないから、であれ土日もできるじゃん、だからもうずーーっと一週間NHK、でギャンブル負けたらそれとか、、、なんかそういうほんとに自分たちがやりたくないことをやるかやらないかっギリギリっていうレベルのギャンブルぐらいじゃないともう綱渡り的なスリルが楽しめないって、もう三世さんレベルはそういう風になってるって言ってましたね五世さんとかね』
ディレクター『今回はこういった依頼を受けてもらえたのって意外といいますか』
七世『まあ、他に依頼もない時期でしたんで、、、』
ディレクター『それにしたって、こんな事実といいますか、こういう仕事が実在しているということが世間に公表されるっていうのはちょっと勇気の必要な決断ではないでしょうか』
七世『そうですね、まあ表稼業といいますか、その完全な堅気の仕事ってわけではありませんから、ただ、ただ、やっぱり背に腹は代えられないところがあるといいますか、怪盗の稼業は基本表にはなりづらい仕事ですから、昔は噂みたいなもので広めてもらってたんです、駄菓子屋とかタバコ屋とか、そういうところで僕らの活躍を話して広めてもらってたんです、だって新聞とかに載せられないでしょ、そんな公にするのはそれはメンツがたたなくなるからって角がたつからねこの仕事、それで、噂みたいな形でね、こう怪盗が出たらしいみたいなねご近所付き合いで広まるような、そういう認知のされ方をすることだったんです、それがねテレビ、テレビだとかね、インターネットだとかがね、出てきてね、その怪盗の話をする場がなくなってしまったじゃない、そのせいで、こう、もう、いないって思ってるんじゃない、今の若い子は、怪盗が、サンタクロースとかその領域に思われてしまってるというかね、それでもう認知されないことには依頼もこないし、そうなると活躍も広まらないし、どんどんそれでデフレスパイラルしてますよ、あとこの業界に入ってくる若い子がいないからね、だからなんていうんだろう、人の入れ替わりは激しいというか危険がつきものなんでこの稼業、もうどうにか僕の次の代を探さないといけないしね、そのストックがないと、もう本当になくなるからこの稼業が、だからこういう取材でもなんでも僕の代からはこっちから営業かけてどんどん受けてこうっていう考えが時代に合うのかなとそういうところですね』
ディレクター質問集
① 偽物の免許について
ディレクター『あのさきほどお見せしていたのは』
七世『ああ、これ、まあ、あんまり映るとよくないんだけど、ほれ、顔のところはモザイクいれてや』七世、免許を取り出す
ディレクター『これなんですか』
ディレクター『あのう、これ本物ですか?』
ディレクター『はあ?、、、怪盗って、こういう正式な免許があってやられてることだったんですか?』
② 本物の免許について
ディレクター『江戸時代の免許があるんですね』
ディレクター『その本物の免許っていうのも見せてもらえたりするんでしょうか?』
③ 三世さんについて三世さんのすごさ
ディレクター『あのう、こういう免許があるからと言ってそれが本当に有効というか機能するんでしょうか?だって数百年前のものということになりますよね?』
④ 稼業の現状と存続について、取材の意義
ディレクター『今回はこういった依頼を受けてもらえたのって意外といいますか』
七世『まあ、他に依頼もない時期でしたんで、、、』
ディレクター『それにしたって、こんな事実といいますか、こういう仕事が実在しているということが世間に公表されるっていうのはちょっと勇気の必要な決断ではないでしょうか』