転生したが為に未来が無いことを知ってしまった話
なんか勢いで書いてしまった駄文です。
ライラック暦1026年
フォード王国王都ガルティア
俺がこの世界に何の因果か転生を果たして10年が経過した。生前の自分についての事は何一つ思い出せないが、地球の日本で生活していたことは覚えている。
今日はフォード王国の王都ガルティアの教会で祝福の儀が行われる。祝福の儀とはこの世界の人たちは10歳になると教会で祈りを捧げることで神からの神託を受け祝福を授かる。この祝福の内容については様々あり、スキルによって未来が決まるといっても過言ではない。
なお、この国フォード王国の初代国王アルス・フォードは勇者のスキルを持っていて建国の際に大きく貢献したらしい。と、まあ俺はそこまで勤勉では無いのでこの国の歴史については大まかにしか知らないし興味もない。
祝福の種類の中には剣士や弓士、商人など一般的なものから珍しいところでは勇者はもちろん、遊び人や絡繰士といったよく分からないスキルまである。祝福の儀では毎回王国軍から逸材確保のため偉い人が来るらしい。ここで有用なスキルの獲得ができスカウトされれば、王国の英雄道まっしぐらだ、と夢見るのが俺と同年代の男子達だ。
特に現在、隣の帝国レイヴンから賢者が誕生し数年後にはその賢者率いる帝国軍が領土拡大のため戦争を仕掛けて来るんじゃないかと噂になっている。噂になっている以上王国側も市民に隠す気もなく、王国軍の戦力拡大のために躍起になっているんだと思われる。王国側としては賢者に対抗出来る祝福者が欲しいところなのだろう。
「これより祝福の儀を始める!神ルインの名の下に祈りを捧げよ!」
教会の神父が告げる。この教会で今回祝福を授かるのは俺を含め30名程だ。1人ずつ祈りを捧げていく。そして俺の番が来た。
ルイン神の像の前で片膝付き、手を組み祈るだけだ。特にややこしい作法とかはない。そして祈りを捧げると頭の中に響くらしいのだ。こんなふうに。
『お前には鑑定士が似合いだろう。がんばれ』
「そこの者、獲得した祝福を告げよ。」
「えっと…鑑定士です。鑑定した対象の情報が分かるみたいです。」
そして俺は王国軍で鑑定士として逸材を見抜き集め、帝国軍との戦争のために王国各地を奔走することになった。
王国軍としての仕事なので給金は良いのだが休みが不定期なので金は貰ってもあまり使える暇がない。
王国の西から東、南から北。嘘か本当かも分からない噂のために今日も俺は数年先の未来で王国が戦争に勝利するための逸材獲得のため走り回っている。
5年後、ライラック暦1031年、ついに帝国軍が賢者を筆頭に攻めて来た。フォード王国はというと、賢者と渡り合える逸材、ましてや勝る者が現れることもなかった。
そして賢者の大魔法になす術もなく、王国軍は敗北した。俺はというと、ぎりぎりまで探し回っており、たまたま戦争地帯に近い場所に居たこともあり、賢者の大魔法に巻き込まれたところまで覚えている。
たぶん、俺は死んだ。
という夢を見た。っていう夢オチだったらどれほど良かったかと思うが、俺は15年前のライラック暦1016年に転生していた。しかも今回はなんと王国ではなく、帝国だった。そして10歳を迎える頃には何故か帝国ではなく王国で賢者が誕生しており、あとは何も変わらなかった。
そして俺は産まれる国は違えど、死に戻りを繰り返し必ず敵国で賢者が出現し蹂躙されるシナリオを永遠と繰り返している。2度目の転生時に自身に対して鑑定をしたら、鑑定のほかに転生スキルがあった。そして転生するたびに未来に絶望した。祝福の儀を受けようが受けまいが、必ず賢者の大魔法に巻き込まれて死ぬのだ。回避の出来ないクソシナリオだ。俺には未来が無い。