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巨大ウ○コ

 まあもっとも、僕が器用ならそのトラブルのほとんどを自分で何とかできるのかもしれない。でもやはりプロに任せた方が安心だし、それに何より僕がいない時間帯でも直接その部屋を訪ねて修理してもらうことが可能だ。これは本当に助かっている。

 ここでちょっと余談を一つ。

 以前、旅行で二、三日マンションを空けたことがあった。大阪を遠く離れた出先で温泉になど浸かりながらすっかり旅行気分に浸っていた時、携帯が鳴る。液晶表示は『205号○☓』。そういうことは割りとある。見た瞬間、胸焼けがする。正直、出たくない。でもそういうわけにはいかない。

 その時は「トイレの水が流れない、トイレが詰まったみたいで至急何とかしてほしい」と言う苦情だった。いや、設備の不備や故障ならいざ知らず、自分たちのトイレの使用方法が悪いのだから苦情と言う言い方はおかしい。水道屋さん曰く、うちの下水管はバブル期に大金を掛けて造られただけあって、見えない部分であっても、とても贅沢な造りになっていて他所のものより太い管が使われているらしい。だから普通に使っていれば詰まる筈がないとのこと。

 原因の大半は、大量のトイレットペーパーを流したり、ティシュや生理用品、その他の異物を流したり、あるいは……これも二十五年やっていてたった一度だけあった事件? だけれども、どうやっても詰まりが取れないので、最終的に便器を外して見たところ、なんと赤ん坊の顔ほどもある超巨大なウ○チの塊が出たことがあった。長い時間を掛けて蓄積された物だろうか。一回分とは考えられない。最初に見た時にはまるで泥か粘土かが固まった物かと思った。おぞましい!ちなみに居住者は三十代の女性だった。しかしそれ以来彼女は妙に優しくなったように思う。え? もしかして一回分なの? そうならまったく気の毒なことだ。

 しかし水道屋さんに取ってこう言うことはけっこうある事例らしく、大変失礼だけれども、その時僕は水道屋にならなくて良かったと心から思った。

 そして、ごくまれにではあるが、トイレの先の下水管、つまり室内(専有部分)ではなく、共有部分での配管詰まりを起こしていることがあった。そんな時はその並びの部屋も同じように排水が悪くなっていることが多い。流れるには流れるが、ゆっくりであったり、一気に大量の水を流すと逆流したりする。しかし特にはっきりと詰まりの原因が特定できない時は、修理代金を居住者に請求できないのでうちの負担となる。大抵は作業も大掛かりなものとなり、費用も驚くほど高い。

 その事故(ああ、巨大ウ○コの方ではないよ。共用部分の下水管の方ね)が起こって以来、うちでは二年に一度の割で、専門業者による全館の下水管に高圧洗浄機を使って強制排水作業を行っている。←ハイ、ここ大事。大家さんテストに出ます。まあそれは冗談であるが、今だから言うけれど、僕はこういう基本的な予防策があることすら、知り合いの大家さんに聞くまで知らなかった。

 費用は、十五世帯あるうちぐらいの規模のマンションなら大よそ十万円ぐらい(一戸約五~六千円)掛かり、半日から一日の所要時間を要する。但し当然ながら、全戸、室内に入っての作業となるので、十五世帯すべての住人立会いが必要となる。 

 したがって、前もって告知の上、皆の都合を合わせないといけない。これはけっこう面倒である。けれどそれによって厄介な悩みの種が一つ解消するのであれば安いものと言えよう。それを行うようになって、共用部分の配管の詰まりはなくなった。人間と同じで、マンションも生きている。加齢によって血管が詰まるようにマンションのパイプだって詰まるのだ。

                                     続く

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