夏祭り~流転転生~
なろうラジオ大賞4参加作品です。
夢か現か。
目の前に妻誾千代が現れた。
「あなた様」
懐かしいその声に宗茂は微笑む。
「来たか」
ゆっくりと頷く。
「はい」
微笑み返す誾千代。
「待っておったぞ」
「はい。私も」
誾千代の言葉に、宗茂は手を差し伸ばす。妻は夫の手を握りしめる。
静寂。
宗茂の手が畳に落ちた。
満面の笑みを浮かべながら逝く。
立花宗茂享年75歳、まさに大往生であった。
流転転生。
夏祭りの日。
友達とはぐれた立花千花は、不安気に人混みを歩いた。
メインの花火の時間となり、次々と打ち上げ花火が夜空へあがる。
背の低い千花は、込み合う中、頭上で輝く花火を見る事が出来なかった。
人をかきわけて、神社の境内裏を抜け、小高い丘にのぼる。
(はぐれた・・・けど、意地でも花火を見てやる)
そんな意地が、千花を奮い立たせ、眼下に煌めく町が見える丘へと着いた。
「わあ」
思わず呟く、頭上には黄金色の花火の輪。
気づくと隣にシルエットがある。
バーン。
大輪の花火が咲いた時、2人の顔を照らし出した。
目と目があった刹那、運命を感じた。
立花千花と高橋宗春。
ここからはじまる物語。
書いてみました~。