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第九話【不思議な生活】

~ご飯を買ってくるから家で待ってて。

すぐに帰ってくる。


(お世話になります、気を付けて行ってらっしゃい)



~ただいま!

猫なんて飼ったことが無いから何がいいか分からなくて

店員さんに相談していたら時間が掛かってしまった!


遅くなって本当にごめん!


とりあえず、店員さんが言うには

子猫の場合は餌よりもミルクの方が良いって言っていたから

ミルクを買ってきたよ。

作り方もしっかり店員さんに聞いてきたから安心して。


今からすぐ作るからちょっと待っててね。



そう言って彼は私のミルクを作り始めた。

彼がご飯を買いに行ってる間に少しばかり部屋の中を探索したけど

好きなアニメ、一緒なんですけど!?


あの頃にお互いが素直になっていたら

絶対にめちゃめちゃ仲良くなれていたはずなのに!!

ご飯を食べて落ち着いたら

彼にその話を打ち明けてみよう。



~出来たよ!!はい、どうぞ。


(ありがとう、頂きます)

意外とミルクだけでもお腹がいっぱいになった。

まだ子猫だから少量で足りるのだろう。


~お前、相当お腹空いてたんだな。

そんなに飲むと思ってなかったから驚いたよ。


(うるさい、転生するまでの道程が長すぎて

体力が減っていたんだと思う)


~転生までの道ってどうなってんの?


(曲がりくねった永遠に続く滑り台って感じ。

めちゃめちゃ気持ちが悪かったよ。)


~俺、乗り物酔いとか凄いからもし転生するってなったら

大変なことになりそうだな。

そんな辛いことを乗り越えてこの世界に戻ってきてくれたんだな。

ありがとう。


(感謝されることではないと思うけど。

素直な神崎って何かまだ慣れなくて気持ちが悪いなぁ。)


~ちょい、失礼すぎるだろ。

俺はすげぇ後悔したから再会できた今は絶対に素直でいようと

思ってるのにさぁ。


(ごめんって。冗談です。

ちなみに神崎がご飯を買いに行ってくれてる間に部屋を

探索したんだけど、フィギュアとか全部

私の好きなアニメのキャラクターだったんだけど。)


~マジで?お前、このアニメ好きなの?


(うん、いつも仕事終わってから見てた。)


~このキャラ良いよな!!!

俺、お前と一度でも良いから好きなアニメの話がしたかったんだ。

もっと早く素直になっていれば

いっぱいアニメの話が出来てたかもしれないのにな。


(気にしない、気にしない。

今日はアニメについて語り明かそうぜ!!)


その日はずっとお互いの推しについて語り合った。

昔の後悔を埋めるように…。


共通の好きなアニメはもちろん、お互いが知らないアニメも

語り合った。

彼は私が勧めたアニメは必ず、見てくれた。


あの頃は本当に腹が立つ奴だったけど、根は優しくて

良い奴なんだろうな。


~お前が勧めてくれたアニメも本当に面白いな!

こんなにもお前と話するのが楽しいと思わなかったよ。

夢が叶って本当に嬉しい。


(私もこんなに楽しいと思わなかったよ。

私自身、神崎は最低な奴だって勝手に思ってたから正直、驚いてる。

あの時に素直になってたら色んな所に行けてたかもしれないね)


~あぁ、そうだな。

お前と推し活、行ってみたかったよ。

猫になってしまった今はもうその願いは叶わないけど。


(後悔しても生き返ることは出来ない。

猫として私が出来ることはあなたの心の傷を癒すことだと思う。

お迎えが来るまで私はもう急にあなたの傍から居なくなることはしない。

だから心配しないで)


~ありがとう。

こうしてまた違う形になってしまったけど

お前と再会できただけで俺の心の傷は大分、癒えてるよ。


俺は志穂、君を大切に育てる。

今度は絶対に守ってあげると約束するよ。

もう痛い思いはさせないから。


(ありがとう、これからよろしくね)


~あぁ、末永くよろしく。

そろそろ寝ようか。


(そうだね、いっぱい喋ったから私も疲れたよ。

おやすみなさい。)



朝、目が覚めると彼はまだ寝ていた。

彼の寝顔を見る日が来るなんて思いもしなかったな。

本当に変な感じ。


慣れるまで時間が掛かりそうだな…。


しかし、昨日は本当に濃い一日だったな。

まさか神崎が私を好きだったなんて。


私はこうして神崎に拾われて生活していくことになったけど

もしも家族に飼われることになっていたら

どうなっていたんだろうか?


家族にも私の声は届くのだろうか?

届いたとしても昨日のような濃い一日にはならなかったと思う。


あの時、確かに父は泣いていた。

私の死を乗り越えることはまだ出来ていない。

きっと家族に飼われることになっても三人を見て私が辛くなっていただろう。

これで良かったのかもしれない。




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