第七話【転生】
――お迎えに上がりました。
とても良い表情をされていますね。
「あ、お疲れ様です。
とても幸せな時間を過ごすことが出来ました。
生前、抱いていたわだかまりも無くなってスッキリしました。
気持ちよく転生が出来そうです」
――それは良かったですね。
転生する場所までご案内致しますね。
ここが転生するための場所になります。
もう戻ることは出来ません。
あなたが第二の人生を幸せに暮らすことが出来ますように
心からお祈りしております。
「私の担当をしてくれて本当にありがとうございました。
あなたが私の担当で本当に良かったです。
至れり尽くせりして頂いて、とても嬉しかったです。
またいつか戻ってきたらお会いできますように。
では、行って参ります」
転生までの道は永遠に続く滑り台を滑っている感じ。
でも決して楽では無かった。
曲がりくねっていて本当に気持ちが悪かった。
これは確かに少量のご飯じゃ体力がなくなる。
私はしっかり食べていたので、体力の心配は無かった。
酔いが凄かったけど。
永遠に滑り続け、やっとゴールの出口らしきものが見えた。
それを通り抜けると見覚えのある風景に辿り着いた。
神様が言っていた通り、野良猫になっていて
建物や人など何もかもが大きく見えたが、間違いない。
私が生きている頃に住んでいた町だ!!!
しかも割と実家の近所!
そういえば、あの超絶イケメン神様が言っていたな。
(君が生きていた頃と同じ世界だよ)って。
これからどうしようかな…。
とりあえず、実家に行ってみよう。
歩いてみて思ったが、かなりスピードが遅い!!!
子猫の状態で転生したのだろう。
歩く人達も私を見て目がハートになっていた。
やっぱり子猫は人気だな。
なんて考えながら必死に実家を目指した。
しばらくして見覚えのある場所にやってきた。
あの横断歩道だ。
沢山の花が添えられている。
恐らく、ニュースにでもなったのだろう。
私のためにこんなにも沢山の花が添えられているなんて
思ってもみなかったから素直に嬉しかった。
しばらく眺めていると、見覚えのある人物を見つけた。
花を添えて泣いている。
忘れるわけがない。お父さんだ。
私は近寄った。
身体にスリスリすると父は驚いていた。
――君はどこから来たんだい?
可愛い子猫ちゃんだね。俺を励ましてくれたんだね。
娘のように優しい猫ちゃんだ。
ミャ――
(そうだよ、お父さん!志穂だよ!)
まぁ、そんなことを言っても伝わるはずがなく…。
――ごめんよ。
是非とも我が家に来てほしいが、妻が猫アレルギーでね。
君を飼うことが出来ないんだ。
ミャ――?
(えっ?お母さんって猫アレルギーだったの?)
――素敵な飼い主に出会えるといいね。
保護してやれなくてごめんな。慰めてくれてありがとう。
またね。
そう言って父は家に帰って行ってしまった。
どうしよう、まさかお母さんが猫アレルギーだったなんて…。
家族に飼われる夢はあっけなく散っていった。
飼い主探しを頑張らないと。