第三話【転生前にすること】
――私の案内はここまでです。
ここからは転生担当の者に変わります。
「転生担当なんて居るんですね」
――はい、あなたの世界で言う会社と一緒ですね。
私は受付案内部署、こちらは転生部署
みたいな感じです。
こちらを真っ直ぐ進んでいただきますと、その転生部署に着きます。
そこでもう一度、お名前をお伝えください。
「あの世にも部署が存在してるなんて思いもしませんでした。
面白い世界ですね。
分かりました、案内ありがとうございました」
しばらく歩くと転生と書いてある場所に着いた。
ここが案内の人が言っていた転生部署か。
「ごめんください、こちらに案内されました。
名前は澤田志穂です」
――澤田志穂様ですね。お待ちしておりました。
こちらでは転生する前に必ずして貰うことがあります。
案内の前に、まずはその説明をしますね。
一つ目は誓約書です。
転生後、何になるかは神様によって決められています。
動物や人間、草や花などの場合もあります。
動物や人間に転生した場合、その生き物に納得がいかず
自ら命を絶ってまたこの世界に戻ってくる方がいらっしゃいます。
残念なことに最近、そのような方が増えてきています。
転生できたのにも関わらず、自ら命を絶つということは
神様を侮辱することになります。
転生は誰しもが出来るわけではございません。
ずっと転生が出来ず、この天国にいらっしゃる方や
地獄でずっと苦しみに耐えている方などもいらっしゃいます。
転生とは、神様が二度目の命を与えて下さったということです。
その優しさを踏みにじることがないように誓約書を書いて頂くことになりました。
それにサインをして頂きますと、新たな儀式に入ります。
最初にして貰うことは、驚かれるかと思いますが
お風呂に入っていただきます。
「お風呂ですか!?」
――はい、お風呂です。
人間界に居た人は大抵の人がその反応を示します。
お風呂には好きなだけ入っていただいて構いません。
すぐに上がっても大丈夫です。
縛りはなく、全てあなたの自由です。
お湯に浸かるということに意味があるのです。
この世界で転生前にお風呂に入るのにはちゃんとした理由があります。
それは、リセットです。
「リセット?」
――はい。
亡くなる時に感じた恨みや痛みや苦しみ。
そういった感情をこの世のお風呂に入って清め、リセットするのです。
転生した後に自分を殺した犯人を偶然、見つけたとしても
殺めたりすることが無いようにするためです。
「なるほど、分かりました」
長く入れば入るほど身体や心が清められて
気持ち良く、転生することが出来ます。
お風呂に入った後にしてもらうことはお食事です。
これにもちゃんとした理由があります。
転生というものは簡単に出来るものではありません。
とても長く、とても体力を使います。
そのために転生前の食事が必要なのです。
そしてその食事はしっかり摂ることをお勧めします。
中には少量だけ食べて転生をしようとする人がいらっしゃいます。
しかし、そういう人に限って
途中で体力が無くなり、亡くなってしまいます。
「え…?亡くなるんですか?」
――はい、亡くなります。
転生に失敗するともう一生、転生することは出来ません。
ずっとこの世界に留まることになります。
あなたはまだ若くて未来のある方です。
そんなことにならない様にしっかりご飯を食べて下さいね。
「分かりました」
――その後、この世にいる全ての神様に会っていただきます。
お会いする前に書いて頂くものがございます。
それは神様に捧げるお祈りです。
お祈りをするのはキリスト教だけだと思われていますが
この祈りは宗教など関係ありません。
転生される全ての人が最後の祈りをしてから旅に出ます。
旅とは転生後までの道程の事です。
キリスト教の人は紙などに書かずに直接、祈られる方が多いです。
それが難しい方には紙に書いてもらっています。
希望する方をお選びください。
その祈りが終わると
とある部屋へご案内致します。
そこに全ての神様が待っておられます。
全ての神様に会う理由は
何に転生するのかを教えてもらうためです。
「何に転生するか教えて貰えるのですか?
こちらに来る前に一人の神様とお話をしましたが、神様は
何に転生するかは教えられないと言っていましたよ?」
――それは転生前に行う最後の儀式で伝えるので
今はまだ言えないという意味で
教えられないと仰っていたのだと思われます。
「なるほど、そういうことだったんですね。
神様へのお祈りは何を祈っても構わないのですか?」
――はい、何でも構いません。
神様にお伝えしたいことをそのままお祈りください。
神様から何に転生するか聞いた後、最後にこの世界におられるあなたの
親族の方に会ってもらいます。
おじい様、おばあ様は志穂様がこの世に来たということはご存知です。
親族の方と好きなだけお話し下さい。
それが終わりましたら、いよいよ転生へと参ります。