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転生した私の飼い主は大嫌いなアイツだった!?  作者: 雪村まりあ
第一章【早すぎる死、そして転生。】
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第一話【運命の始まり】

「お疲れ様でした~!お先に失礼します!」


私の名前は志穂。

大学生でたった今、居酒屋のバイトが終わったところだ。


(今日は観たいアニメがあるから早く帰らなきゃ!)

意気揚々と帰路を急いでいた。


その日は運が良く、横断歩道の信号がすべて青で


(これは早く帰れるように神様が導いてくれているんだわ!)

なんて呑気に考えていた。

家の近くの横断歩道もしっかり青だった。

想像以上に早く家の近くまで来ることが出来たので、とても幸せな気持ちだった。


しかし、事件はその最後の横断歩道で起きたのだ。


車が猛スピードでこちらにやってくる。

信号ではちゃんと止まるだろうと思っていたが、何だか様子がおかしい。

もう間もなく信号という距離になっても車が止まる気配はない。


これは流石にマズいと思った私は急いで渡ることにした。

しかし、車はおそらく80キロは出ていたのだろう。

横断歩道の真ん中まで来た時、車は既に目の前まで来ていた。


車を見ると、運転手は寝ていた。

これはもう無理だなと私は死を覚悟した。


とても楽しく、幸せな人生だった。

でも欲を言えば、もっと生きていたかったな…。

親より先に旅立ってしまう子供なんて親不孝者でしかないよね。


私は天国か地獄、どっちに行くんだろう?

困っている人は誰でも助けていたけど

親より先に死んでしまうから地獄になるのかな?



中学の頃にアニメや声優さんを好きになって

同級生から「オタク~」なんて馬鹿にもされていたけど

それと同時に友達もできた。


友達と色んな所に推し活をしに行っていたなぁ。

来週、推し活をする約束をしていたのに…行きたかったな…。

約束守れなくてごめんね。


というかこれって走馬灯ってやつなのかな?

意外と後悔が多いな。

いや、どちらかと言うと願望か。

あれがしたかった、これがしたかったっていう考えしか出てこないや。


そんなことを考えていると凄い衝撃で私は宙を舞った。

あ、跳ねられたのね。

なんか色んな骨の折れる音が聞こえた。


これはどれだけ医者が頑張って治療してくれても

助からない気がするな…。


生きたいと願っても、きっと私の願いは叶わない。

まだこれからも仲良し家族として

沢山の思い出を四人で作りたかったな…。


切なる願いってこのことか。

この事故が無ければ、私はこんなことを願わずに生きていたのに。


信号が全て青じゃなくて

一つでも赤信号があればこの車の運転手に出会うことなく

これからも推し活をいっぱい出来たのに。



先程まで早く家に帰れる!なんて呑気に思っていたのに

そんな気持ちは既に消え去っていた。

まだ生きたいという感情しか湧いてこなかった。


この車の運転手が寝てさえいなければ、信号が全て青でも

私が死ぬことはなかっただろう。寝不足なら車なんかに乗るなよ。

私は死んで、この人は生き残るんだろうな。

せいぜいお迎えが来るまでずっと後悔の念に駆られるといい。

自殺しようとしたら絶対に止めてやる。


意外と私って腹黒いのかもしれないな。

でも未練が残ると成仏できないからあまり考えないようにしないと…。


身体中が痛い。

交通教習で車に跳ねられているスタントマンの人は凄いな。

どれだけ跳ねられても無傷だもんなぁ。

私もスタントマンだったら助かっていたのかな?


そんな馬鹿なことを考えていると声が聞こえてきた。


「大丈夫ですか!?分かりますか!?今、救急車を呼びましたから!

すぐ来るから大丈夫ですよ!」


私は必死にその人に声を掛けた。


「横断歩道を渡って右に少し行った所が家なんです…。

苗字は澤田です…」


「分かりました。きっと伝えます。だからまだ諦めないで!」


諦めないでと言われてもなぁ…。


私だって諦めたくないよ。生きたいよ。

でも本当に身体中が痛いのよ。

骨だってバキバキに折れる音が聞こえたのよ。


そんな状態で、助かる見込みなんてないよ。


というか諦めないで!っていう言葉はおかしくない?

事故に遭って身体中、大怪我してる人間にそんなこと言う?


ごめんね。通報してくれた人にこんなこと思って。

身体中が痛すぎて

ちょっとしたことでイライラしてしまうんだ。


しばらくすると、サイレンが聞こえてきた。

あれ…?救急車じゃないじゃん。パトカーじゃん。

あの運転手、逮捕されるんだろうな~。というか起きたのかな?


声を掛けてくれた男性が警察と何かを話してる…。


「この横断歩道を渡って右に少し行った澤田という家が

この子の家らしいんです。俺が御家族を呼びに行きたかったのですが

怪我人を置いては行けなくて…」


「澤田という方のお宅ですね。分かりました。我々が行きます」


なんだ、この男性ってただの良い人じゃん。

悪く思ってごめんなさい。


にしてもこの状態をお母さんたちに見せるのか…。

親不孝な娘でごめんね。

これから辛い思いをさせてしまう娘をどうかお許しください。


少しも経たないうちに救急車が来た。

それと同時に聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「志穂!!志穂!!いやぁ…死なないでぇ…」

お母さんだ。

「落ち着きなさい、志穂はきっと助かる。きっと…」

お父さんも来てくれた…。


最後に喋りたいけど、もうそんな体力も残っていなかった。

でも一言だけと大好きな二人に声を掛けた。


「お父さん、お母さんごめんね。大好きだよ」

これが限界だった。

両親は二人とも号泣していた。


「姉ちゃん…?嘘だろ…?」


弟の遥翔も少し遅れてやってきた。母が連絡していたのだろう。

塾から急いで来てくれたのかな?かなり息が上がっていた。


「はる…二人を守ってね、頼んだよ。」


家族が勢揃いじゃないか。

最後に皆の顔が見れて本当に良かった…。


お母さんもお父さんも遥翔も私の誰よりも大切な人たち。

私は三人の笑顔が大好き。

どうか私の死を乗り越えてまた三人が笑えますように。


どうか皆が幸せになれますように。


もう限界だ…。そろそろ寝よう。




そして私はあの世への旅に出掛けた。



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