第3話
「という訳で、新しくマネージャーとして鎌学の野球部の一員になった榎本萌絵と野口優だ」
関監督が新しくマネージャーが加わったことを伝えると、2人の自己紹介が始まった。まずは萌絵ちゃん。普段は長い黒髪だが、この日は髪を束ねている。
「普通科1年5組の榎本萌絵です。父と兄が本校の野球部に在籍していたこともあり、マネージャーとして支えていきたいと思いました。若輩者ですが、よろしくお願いします!」
続いてあたしの自己紹介。普段から髪型はおさげなので、部活でもこの髪型でいいのは助かる。
「普通科1年6組の野口優です。小さい時からずっと、甲子園で活躍する鎌大の野球部を見てきたので、憧れのマネージャーになることができて嬉しいです。まだスコアも書けない未熟者ですが、よろしくお願いします!」
あたしの自己紹介が終わると、野球部主将の葛西さんから声をかけられた。萌絵ちゃんがタイプだと言っていたサードの人は、この人のことである。
「萌絵ちゃんと優ちゃんだっけ。まあ、詳しいことはこっちにいる先輩マネさんから色々話を聞くんだな」
葛西さんが向けた指先には、3人の先輩マネージャーがいた。
「はじめまして。普通科3年4組の藤原春香です」
「普通科2年5組、梅沢桃菜です」
「普通科2年6組、森岡結衣です」
私と萌絵ちゃんは唯一の3年生である春香さんを中心に、マネージャーの仕事について色々説明してくれた。道具の手入れとか、洗濯とか、食事のこととか色々……やること多くて困るよ。
「私も結衣も、最初はやること多くて色々怒られたわ」
「そうそう。でも一年たった今は何でもできるようになったよね」
桃菜さんと結衣さんが2人に色々言っている。それに対して、春香さんは「それだったら私も……」と小言を言っている。
結局私のマネージャー初日は、先輩から色々説明を受けるだけで終わったのであった。
◇ ◇ ◇
鎌大のマネは想像を絶するほど過酷だった。先輩部員からは、道具の手入れしろとか、ユニフォーム洗えとか食事作れとか色々要求されることがあった。それに、先輩マネージャーからは「遅すぎ!」と言われることは日常茶飯事。正直、弱音を吐きたいと思ったことも多々ある。
「萌絵ちゃんはしっかりできて羨ましいわ。それに比べてあたしは……」
部活が終わり、帰りの電車で私は萌絵ちゃんに色々愚痴を漏らしていた。あたしの愚痴を聞いた萌絵ちゃんは、「私にだって、辛いことはいっぱいあるわ」と言っている。そして、
「優はどうしても鎌大のマネージャーになりたかったんでしょ?だったら少しくらい辛くても頑張ろうよ。先輩だって本当は優しい人だと思うよ」
とあたしに向かって言う。あたしは、
「……そうだね。あたし、決めた!少しのことくらいでは、挫けない。へこたれない」
と萌絵ちゃんに言ってやったのだった。そして、春香さんから『優ちゃん、辛かったら私に訴えてもいいんだよ?いつでも相談に乗るよ?』というLINEが届いたのも書き足しておこう。
◇ ◇ ◇
・藤原春香
誕生日・・・4月4日
年齢・・・18歳(高校3年)
出身地・・・神奈川県
血液型・・・A型
身長・・・160cm
体重・・・50kg
・梅沢桃菜
誕生日・・・3月3日
年齢・・・16歳(高校2年)
出身地・・・神奈川県
血液型・・・A型
身長・・・158cm
体重・・・50kg
・森岡結衣
誕生日・・・10月1日
年齢・・・16歳(高校2年)
出身地・・・神奈川県
血液型・・・O型
身長・・・153cm
体重・・・45kg