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人々の願い
『黒い雪』事件から幾許かの時が過ぎていた。
異世界に出奔した者、魔術師連盟に匿われた者、隠遁生活を強いられる者…
クエスター達の運命がまた、動き出す。
戦いは終わった。
陽堂真嗣はクエスターとしての記憶と数々のレリクスに関する知識を奪われ、いち教育者に戻った。七瀬市の人々を密かに苦しめていた黒い雪はもう降らない。
ペイルライダーは解散をし、七瀬市の人命を脅かすものは山に住む害獣くらいになった。人が生贄に捧げられることも、建物が爆散し崩れることも、もうない。
ヴァリウス=バーデンハイルは姉を救いたいという想いを胸に、ブルースフィアを去った。人工的に奈落化させられる人間はいなくなり、人ならざる力を手に入れる者はいなくなった。
戦いは終わった。
クエスターはまた細々とした奈落狩りに、ブルースフィアの均衡を保つ日々に帰るだけだ。
誰もがそう信じていた。
あの日までは。