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いい人の中の悪い人。  作者: 九灯小膳(くとうこぜん)
1/3

1.彼の中に誰かがいる。(1)

はじめまして、小膳です。

短編BLは色々書いてきましたが本格的な長編はこれが初めてになります。

拙い出来ですが一生懸命書きました。よろしくお願いします!

毎日一話ずつ更新していきます(日付変更と同時に投稿。土日除く)。


note https://note.mu/kutokozen

Twitter https://twitter.com/kutokozen

 俺の渾身のパンチが相手の顎を捕らえた。

そいつが膝から崩れ落ちると、俺は鼻血を拭って叫んだ。


「まだやんのか?!」


 悪態をついて逃げていくチンピラどもを見送ると、俺は大きくため息をつき、路地にうずくまっている男に振り返った。

彼がさっきの連中に絡まれているのを見かけ、つい止めに入ってしまったのだ。


「まあ、こんな日もあるって」


 彼はおそるおそる顔を上げた。

二十歳の半ばくらいだろうか? 驚くほどキレイな顔をしていた。

切れ長の眼で細面、真っ黒な髪を肩に垂らしている。

不安げにあたりを見回し、さっきのチンピラがいないことを確かめると、おどおどした眼で俺を見上げた。


「お兄ちゃん、助けてくれたの……?」


「お兄ちゃん?」


 俺はまじまじと青年を見つめた。

だって俺は18才で、彼よりずっと年下だ。


「とにかく立ちなよ、ほら」


 手を貸して立たせたとたん、俺はぎょっとして一歩下がった。


(うわ、デケェ!?)


 180cm以上ある長身で、モデルのように見栄えするスタイルだ。

おかしなことに裸足で青いパジャマしか着ていない。

彼は涙をぬぐって微笑んだ。


「ありがとう。血が……」


 パジャマの袖で俺の鼻血を拭いてくれた。

妙に子供じみた喋り方と仕草で、体だけ大人になってしまったような感じだ。


「えっと、お母さんかお父さんは?」


 ついマヌケな質問をしてしまうと、彼は首を振った。


「いない」


「そうか。それじゃあな」


「行かないで!」


 彼は歩き出そうとした俺に抱きつき、泣きながら叫んだ。


「行かないでよおお……」



****



 俺は連川ツラネガワ狐々(ココ)、この財音ザイオン市で暮らす18才だ。

身長は170cmと少し、パーカーにデニム姿で、オレンジイエローの髪をニット帽に押し込んでいる。


 腕にしがみついて離れない彼をどうすることもできず、仕方なく家に連れ帰ることにした。

警察に押し付ければそれで済むんだけど、出来ればあいつらとは関わりたくなかった。


「お前、名前は?」


宵人ヨイヒト。ココ兄ちゃん、すっごく強いんだね」


「格闘家を目指しててさ。来月、大会に出るんだ」


「へえ~! スゲー!」


 尊敬のまなざしを向けられ、俺は照れて顔を掻いた。


「で、お前はどこから来たんだ?」

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