肩パン大会
今でもあるのかな。肩パン。
知らない人もいるかもしれないから、簡単に説明すると肩パンは肩にパンチをくらわせることだ。
肩キックなるものまで派生してあったがそれは置いておこう。
でだ。高校生の時、私の地元では肩パンが流行りに流行っていたわけだ。
今思うと何故肩にパンチするのが楽しいのかもわからないがね。
そんな中で伝説となったヒーローを紹介したいと思う。
季節は冬。
場所は、公園。
時間は19時ぐらいだっただろうか。
公園にいた人数50人。(男のみ、基本皆んなシャカシャカを着ている)
よくもこんな人数が集まったものだ。
何かの集会じゃないかって思うぐらい人数がいた。
そして始まったのである。。
肩パン大会が!!
ルールは至って簡単で、ジャンケンで負けた1人が49人から肩をパンチをされる。ただそれだけ。
一気に50人がジャンケンしてもアイコになってしまう為、5つのグループ(10人×5グループ)に分けて10人でジャンケンをし、負けた1人を5グループから選出して、5人でジャンケンをさせ更に負けた1人が犠牲者となる。
場の空気は、冬という事もありヒリついていた。
肩への打撃とはいえ、49人からの手抜き無しパンチだ。皆んなそれ相応の覚悟をしていたかもしれない。
グループ分けが始まった。
近くにいる10人で固まってジャンケンをする。
さて、ジャンケンを始めようと思った時にヒーローは原付で来たのである。
そう。ヒーローは遅れてくるものだ。
ヒーローは、状況の把握ができていなかった。
そりゃそうだ。単純に遊ぶってだけだったのだから。
それが見るうちに人数が膨れ上がり肩パン大会になっていようとは。。
周りからの理由の無い歓声が上がる。
“ヒーローが来たぞ。待っていたぞ!ヒーロー!”
今から肩パンをしますって時にそいつが来たものだから、ヒーロー扱いされたのだ。
兎にも角にもこれで51人となった。
10.10.10.10.11人で犠牲者選抜ジャンケンが始まった。
私はグループで最初に勝ち叩く側となった。
各々のグループから選抜された5人が前にでてきた。
あれっ、ヒーローが選抜された5人に残っている。
まさかな。さっき来たばかりだぞ。
ヒーローも含め、どの5人も真剣な眼差しでジャンケンをした。
勝負は八百長かと思うぐらいアッサリと一発で決まった。
4人がパーを出し、1人だけがグーを出している。
あぁ。ヒーローがだ。
5分前まで何も知らず、今は肩パンの犠牲者となる。
1人目の肩パンが始まった。
肩パンはその場で叩くのと走って叩く2種類が地元ではあったのだが、今回は後者だった。
1人目が助走距離をとり、全速力で走り出す。
ヒーローは肩を前に出してそれを受ける体制をとる。
綺麗に肩に当たった。ヒーローの顔は歪んでいた。
肩パンといってもパンチ力が無いものはさほど痛く無い。厄介なのは、重量級の奴らだ。特に背が高いと更に厄介である。
上からの重力と走ってくるスピードでパンチが重くなるのだ。
そんな奴らが順番の中に入っていると思うだけでかなりメンタルがやられる。
そんな事を考えているうちに2人目が3人目がと進んでいった。
20番目ぐらいだっただろうか。私の番が回ってきた。勿論手加減は抜きだ。
やる方もやられる方も手加減してしまっては、つまらないのだ。
ゲームにおける手加減はゲームを壊す事と同一である。
あのヒリついたジャンケンで勝ちたいと思う気持ち。負けたくないという気持ちは、手加減が無いという認識の上で成立しているのだ。
私は、思いっきり走りヒーローの肩へパンチをねじ込む。
私の番が終了した。残り30人。
まだ、半分も終わっていない。
ヒーローは大丈夫なのだろうか。
残り10人になった頃、ヒーローの顔はかなりきつそうだった。
まぁ全員が全力でやってるんだ。そりゃきついだろう。
全員の肩パンが終わった。
50人のスッキリした顔、1人のゲッソリした顔がそこにあった。
ヒーローは、乗ってきた原付にまたがり誰よりも先にすぐに返って行ってしまった。
ヒーローがいた時間およそ15分。
ウルトラマンの5倍だ。
その夜、彼は肩パンのヒーローとなった。
後日、ヒーローは病院に行ったそうだ。