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後編

 私はマヤちゃんを雑に放り投げました。それから扉をしっかりと閉めました。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」

 マヤちゃんは土下座をして謝罪していました。もうさっき折った指は元通りになっていました。私はそばにあった鉈を手に取って、床に付いたマヤちゃんの両手首を同時に斬り落としました。

「ああぁあぁああぁ、手がああぁぁあ!」

「いい?マヤちゃん。あなたは私のおもちゃなの。おもちゃが人間を傷つけるような危ないものじゃ、いけないわよね?」

 マヤちゃんは苦痛に耐える顔をしながら、二度強く頷きました。

「じゃあ、もしマヤちゃんが私のされるがままに遊ばれてくれるなら、この手を返してあげてもいいかな?ずっと痛いままは嫌でしょ?」

 私は小さな小さなあの子の二つの手を両手でテキトーに手遊びていました。

「……なります。あなたのおもちゃになります……。だから……、だから手を返してください……。お願い……します……」

「うん、わかった。今度反抗したら、もっと酷いことするからね」

 私はマヤちゃんの両手を手首の切断面に合わせてあげました。すぐに繋がり、マヤちゃんの手は元気に動くようになりました。

「マヤちゃん、その机に手を乗せて」

 私は部屋に置いてあったニス塗りのされていない木机を指差しました。マヤちゃんの静かに白くて可愛い左手が机に乗りました。

 私はネイルガンを一発、マヤちゃんの手の甲に打ちました。純白の中に銀色が一点現れました。マヤちゃんは少し暴れましたが、すぐに耐えるように体を動かなくさせました。

「最初に爪剥がしちゃおっか」

「えっ?」

 マヤちゃんはちょっとだけ声を出しましたが、すぐに私との約束を思い出したようで押し黙りました。

 私はプライヤでマヤちゃんの鋭く伸びた親指の爪の先を挟み、自分の腕を強く引きました。メリッ、と音がして、白い蓋が開けられました。中から見えた肉のピンク色がとても綺麗でした。マヤちゃんは叫んで暴れて、少し机が揺れました。

 構わず私はすぐに人差し指指に取り掛かりました。ですが、剥がす直前に机が揺れた所為で、手元が狂い、爪が半分ぐらいのところで割れてしました。

「もう、暴れないでよ。マヤちゃん」

 私は中途半端な状態のマヤちゃんの指が気に入らなくて、何とか最後まで剥がし切ろうと思いました。そして、ふと目についたマイナスドライバーを見て、この願望を叶える方法を思いつきました。

 私は半分顔を出したマヤちゃんの指の肉と半分だけの爪の間にマイナスドライバーを差し込もうと思ったのです。ですが、爪と肉の間はぴったりくっついていて、思うように入り込まなかったのです。何度も突く度にマヤちゃんはひっひっと歌っていました。

 いつまでも進展しない状況に焦れったく思った私は、ドライバーの尻をハンマーで叩きました。上手くいきました。マイナスドライバーの先が爪と肉の間に挟まって、半透明の爪から銀色の板がうっすらと確認できました。マヤちゃんの歌はサビに入り、パワフルな声に変っていました。

 もうここまでくれば、あとは一押しです。私はドライバーをぐりぐり揺らして、半分の長さの爪を起こすことに成功しました。そしてプライヤーを使って半分割れた爪を上に引っ張り上げました。

 爪が無くなった指はまるで裸の子供のようでした。弱い子供の衣服を無理矢理脱がして恥ずかしいところを見る。そして子供は恥ずかしさに震える。この時マヤちゃんの人差し指は、そんな子供のように小刻みに震えていたのです。

 私はふぅ、一息つくほど体力を消耗していました。額に汗が滲むのが分かりました。人左飛指の周りだけやたらと出血が多く、かなり苦戦したことが分かりました。

 でも休んでる暇はありません。マヤちゃんの爪はすぐに再生しました。私はそれをもう一度剥がしました。マヤちゃんの悲鳴がさっきと違っていたのが面白かったです。今度はマヤちゃんが暴れた時の振動が机に伝わらないように、体重をかけてマヤちゃんの手を机に押し付けました。爪を剥がそうとしても机が揺れませんでした。大成功でした。私はリズミカルに残りの爪を全て剥がしました。

 釘で固定された子供の手。鋭く伸びた爪が指先から起き上がっていました。全てが同じ状態であることのなんと美しいことか!半分割れた爪をわざわざ取って再生した爪をもう一度剥がした手間は、全てこの状態を作り上げることにあったのです。

 私はこの芸術作品を残すためにスマートフォンに写真として記録することにしました。ここで私はあることを思いつきました。

「そうだ、悲鳴がさっきと違うなら、同じ悲鳴は二度と聞こえない……。なら記録に残す必要があるわね……」

 私はスマートフォンを動画モードに切り替えて、次の遊びの準備に取り掛かりました。


私はマヤちゃんの爪を元の位置に戻して、指にくっついたことを確認した後、手に刺さった釘をバールで引っこ抜きました。

「マヤちゃん、椅子に座って」

 私はマヤちゃんを木机とセットで購入した椅子に座らせました。そして背もたれにマヤちゃんの腕を回して手の甲同士を合わせて、両手の平が外側に向くようにしました。

「普通に縛るんじゃ、面白くないわよね……」

 私は床に置いてあった、少し大きめの道具箱の中から、電動ドリルを引っ張り出しました。二、三度引き金を引いて、回ることを確認した後、ドリルの刃をマヤちゃんの手の平にあてがいました。

 私は電動ドリルのスイッチを入れました。駆動するモーター音が掻き消えるぐらいの悲鳴で部屋が満たされました。ドリルに飛ばされた血が一、二滴私の顔にかかりましたが、構わずに押し当て続けました。

 やがてドリルの先端が反対からこんにちはしたので、私は素早くボルトを、さっき空けた穴に差し込みました。ナットを回し嵌めて両手の螺子止めが完了しました。螺子頭から血が滲んでポタポタと床に落ちました。

 有機物の中から無機物がひょっこり顔を出す奇妙な光景に、私はわけもわからず胸が高揚するのを感じました。動画モードのスマホを手に、あらゆる方向からそれを撮りまわしました。

「はい、今マヤちゃんの手はこんな感じになってまーす」

 私はマヤちゃんの正面に立ってレンズをあの子の顔に向けました。

「マヤちゃん、手にボルトが刺さってるけど、どんな感じ?」

 マヤちゃんは泣いたまま何も答えませんでした。

「何か言ってよ」

 私は隠し持ってたスタンガンをマヤちゃんの脇腹にちょこっとだけ当てました。

「ひぎぃっ!…………苦しくて……痛いです……」

 パパから護身用に買ってもらったそれは、本来の目的で使われたことは一度もありませんでした。


「マヤちゃん、顔を上げて?」

 改めて見ると、やっぱりかわいい。泣きすぎて目が赤く腫れてるところなんか最高にキュートでした。この綺麗な顔をどうしてやろうか、と考えた私はまず目を抉り出してやろうと思いました。

 使った道具はスプーンでした。

「前に読んだ漫画で、こういうのやってたんだよね。スプーンなんか使ってなかったけど、まあいいか」

 最初は私が何をするつもりなのか分からないような顔をしていたマヤちゃんは、スプーンの先が目に近づくと急に慌てだしました。

「いや、うそ……お願い……やめて……」

 私はマヤちゃんの左目の眼球と下瞼の隙間にスプーンを差し込みました。

「――――――――ッ!」

 マヤちゃんの息を吸う悲鳴を少し堪能した後、スプーンの曲面を眼球に沿わせてぐるりと一周させました。マヤちゃんの左眼球は見事に眼孔から外へ飛び出し、神経だけでぶら下がった状態になりました。

 私はスプーンを投げ捨て、急いで眼球を手の平で支えました。ゆっくりとそれを自分の顔に近づけました。

 指先でつまんで、くるくると回していろんな角度から眺めました。白い球体に黒い円が描かれていて、全体的に濡れて光っていました。神経が繋がったところから細く枝分かれした毛細血管がうっすらと見えていました。大きさは十円玉と同じぐらいだったと思います。回しながら、私は不意に沸いた疑問をマヤちゃんに投げかけました。

「ねえ、今マヤちゃんにはどういう風に見えてるの?」

「う~~……世界の半分ががぐるぐる回ってます」

「ふーん、そうなんだ」

 聞きたいことは聞けたので、私は指先に思い切り力を込めて、眼球を潰しました。

「ああぁぁああぁぁあぁぁあ!」

 中からゼリー状の無色透明な物質が出てきて、眼球は潰れた紙風船のようになりました。

「本当に出てきた……。これが硝子体……。血とは随分違うものね……」

「あたしの……あたしの目がぁ……」

 私は敢えて眼球をそのままに、外にぶら下げた状態にしました。

「いっそ目をちぎって……。その方が早く治るから……」

 苦しそうにマヤちゃんはお願いしてきましたが、すぐに私は断りました。

「駄目よ。全部終わったら元に戻してあげるから」


 私はショートケーキのイチゴは最後まで取っておくタイプで、この時マヤちゃんにしようとした事は、最もやりたかった事でした。

 マヤちゃんの首を切る。普通の人間なら死んでしまうこの極限の加虐行為を、不死身のサキュバスであるマヤちゃんにやっても何も問題ありません。おまけに一度斬った首を元に戻せば、何度も同じことを繰り返せます。

 私はスマートフォンのカメラをインカメラに変えて、木机の上に置きました。そして画面に映る私とマヤちゃんの姿を確認しながら、彼女を椅子ごと動かし、二人がしっかり映るようにしました。

 私はマヤちゃんが座っていた椅子の後ろに立ちました。マヤちゃんは覚悟を決めたようで、片目を強くつぶり、歯を食いしばってこれから襲う激痛に耐えようとしているようでした。

「いくよ、マヤちゃん?」

 私は金鋸をマヤちゃんの細い首に当て、勢い良く引きました。すばやく刃を押し戻し、また引きました。鋸の刃がゆっくりとマヤちゃんのやわらかい肉に沈んでいくのが分かりました。私は夢中でマヤちゃんの首を切り進めました。

 しばらく続けていると、何か硬いものを切る感覚に変わりました。今、骨を切っているんだな、と私は直感しました。木材を切る時と同じような音が、私に幼女の首を切っている事を改めて実感させるのでした。

 骨を切り終わると、首の安定性が悪くなり、効率よく切ることが出来なくなりました。そこで私はマヤちゃんの顔面を両手で掴んで上に引っ張りました。プチッという快音が聞こえ、私はマヤちゃんの頭を持って天に掲げた姿勢になりました。

 私はマヤちゃんの頭を、あの子の顔が見下ろせるように抱き寄せ、血まみれの手で撫でました。撫でているうちに、どうしようもないくらい愛おしく思った私は、マヤちゃんの唇に自分の唇を重ねました。私のファーストキスでした。

 どれぐらいそうしていたか分からないほどの長い接吻の後、私はマヤちゃんの残骸の前に立ち、彼女の頭を彼女の膝の上に乗せました。手を後ろに回して座った胴体。首の切り口から流れた大量の血が胸元を赤く染め上げ、その下には潰れた片目が飛び出した童顔の少女の頭が鎮座していました。

 子供は世界の宝。それを傷つけることは許されない事。ですが私はそれを極めて凄惨な形で執行してしまったのです。その証拠が、今私の目の前にある。その事実が私をとてつもなくエキサイトな気分にさせました。

「マヤちゃん!」

 私は頭部のまだ綺麗な部分を汚し始めました。口の両端をナイフで耳まで切り裂き、右目を何度も刺突して縦に切りました。ズタズタなマヤちゃんの顔を見ながら自慰をしました。

 赤い胸に飛び込みました。勢いが余って、椅子ごとマヤちゃんに覆い被さるように倒れました。じゅるじゅると汚い音を立てて血を吸いました。吸いながらまた自慰をしました。血を通してマヤちゃんの純粋な、綺麗な魂が薄汚れた私の体内に入っていくのを想像した時、とうとう私は達して、気絶してしまいました。


 目が覚めた時、今が何時なのか見当もつきませんでした。口に血の味が残り、部屋が血の匂いで充満していました。ぼーっとしたまま首だけを動かして周りを観察するととんでもないことが起こっていました。

 マヤちゃんがいなくなっていたのです。私が気絶する前の状態のまま、彼女の姿だけがすっかり無くなっていたのです。私は心の底から愛した恋人に逃げられたような気持ちになり、大声を上げて泣きました。いいえ、私はあの子を心の底から愛していたのだと思います。


 それから数か月が経ちました。あの日録った動画を見て毎日自分を慰めています。毟り取った羽はガラスケースの中で大切に保管しています。もしかしたら、あの子が記念になるように、私に残していったのかもしれません。それを見て、私はいつも思うのです。なんだかいつかまた会える気がするな、と。


 そういえば、今日は月がやけに赤いな。

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