建国宣言
『忌々しいな、奴はまさにこの世界の神となった。』
一つの影がその怒りをあらわにする。
『遥か昔、奴はトップとなる者を転生者に置き換えた。反対に我らの力は衰えた。』
『再び同じことを繰り返すというのか?』
『仕方あるまい、この星の全ての知的生命体が協力せねばならぬ、ゆえに今の知的生命体のトップを転生者へと変え、協力しやすい環境を作るのだろう。』
『我等も何かできぬか?あ奴ばかりに主導されるのは気に食わん、僅かでも脅威を駆逐する手助けが出来ぬか?』
集まる影共は沈黙する。
『一人なら呼べなくもない。』
同じ神とあがめられたころと比べて大きく差が出来たものだ。もはや我らは傍観し、奴一人が神として振る舞う。
たった一人の召喚、それが何を呼び出すのか、たとえ全知全能の神ですら想像できぬだろう。
「死んだはずだが生きているな。」
他の天皇家は月に皇居を移している。地球連邦議員も月の宇宙港で活動している。要はこの日本に頭となる存在はいない。
「私だ、運転手を呼べ、テレビ局を手配してくれ。」
移動中に、コネではなく友人を使って警察署や宇宙港、気象観測所で調べはさせてみたが、結論から言うと、少なくとも月は存在してないそうだ。
「連邦国民に次ぐ、これは夢ではない、我が国は月の宇宙港から隔絶された。すなわち、月や、宇宙にいるはずの地球連邦軍との通信が途絶した。存在も確認できない、理由は不明だが原因が明らかに先程のトラック(宇宙船の名称)の落下がであろう。滅びを自覚せよ、それは目の前に迫っているぞ、もしかしたら、我々はすでに死んでいるのかもしれないが、今こうしている以上、生きるために動く、だが今から選挙を行うか?無理だ、それより先に国が滅ぶ、故に十年後選挙を行う。天皇である私が国家元首となり、国を動かす以上だ。」
今日で実権を握り、本物の王となる。
「やあヤマダ、大学以来だな、早速相談が有るんだが、日本国警察署所長の君にしか頼めないんだが、警官組織を動かして、治安維持を行って欲しい、すでに暴動が起きている。それに、これから押し寄せる記者群に、演説を頼む。私は二百歳(平均寿命は百五十歳)までは生きていたいのでね、国としての形ぐらいは維持したいのだよ。」
「わかった、全力を尽くそう。せっかくお金をもらうだけでだらだら出来ていたのに忙しくなりそうだ。」
「少し楽しんでいるだろう?」
声でわかるぞ、バレバレだ。
「バレたか、」
「さてサイトウ、いや小佐と言うべきか、」
「おい、からかうな、」
軽く笑った後、声を低くして口を開く。
「さて、国内の連邦軍を纏めて一つの軍として動くようにして欲しい。」
「やってみよう。」
「ついでに信頼できる人員を数人紹介してくれ、他にも日本に戻ってきていた地球連邦議員も呼ばなくては、連邦の中で働いていた彼らの力は必要なものだ。それにしても、国家転移でも国を掌握するとこからとは、ハード過ぎやしないか?」
そんな事を口にしながら、車に乗った。
「これより余は、日本を一時的に国として、日本帝国とする。確かに日本は、まあ日本に限らず連邦すべてい言えるのだが、月に食料を送るために、食料自給率800と、餓死の心配もなく、エネルギーも、地面に穴を掘ってパイプを通し、特殊な液体を熱しその熱で発電する……あれなんだっけ?」
そっと黒服を呼ぶ、生放送だが仕方ない、それにしても原子力発電所を大きく上回る発電量で、何処にでも建設できて自然にあまり影響を与えない、2000年代の地球では考えられないな。
「すまない、地殻熱発電施設だったな、この施設により解決はしている。例えこの島が水没しても、防水工事により対応できるし、隕石とて迎撃できる。」
ここで一呼吸おき、
「だが 空をみて欲しい、月が2つある。赤い方の月から飛来した何かが、海に墜ちて、人類を敵対視して攻撃を始めた、この生物らしきものは、個々が平均でも2400年代の戦車と同レベルの戦力を持ち、無限にも近い物量で海から進行してきた、明らかに連邦の頃ではあり得ない現象であり、先の天使の件もある。これ以外にもどの様な危険が有るかわからない、故に、私が死にたくないし、ここに生きる者すべてに死んでほしくないので、余は天皇の一族の責として王になる。」
この日本について調べてみた、人間の欲望は限界がない、それゆえに、物資の消費を恐れた連邦政府はなるべく物資のかからない娯楽を広めた。
日本はアニメやマンガ小説等のサブカルチャーを特に前面に押し出し、当時連邦内で最もその文化が洗練された日本を聖地のように扱った。
それから年月がたち国と国の境界が曖昧になった頃、アニメの世界を現代技術で再現しようとした人が集まり、日本を拠点にして頑張り過ぎている。そうして、日本は地球上で最も科学者や技術者が集まった場所になってしまった。よし、これらの施設を国営軍事工場にしよう。