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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
恋敵クライマックス編

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85/92

85.仕組まれた罠と微笑む男

 

「由紀乃」


「教室入らないの? って、どうしたの?」


「トイレ行く。先行ってていい」


「おっけ。先に教室入っとく。いい席期待してて~」


「ん、任せた」


 トイレに行っただけのわずかな時間だったのに、教室に戻るとわたしが座れそうな席が無かった。わたしの味方でもある由紀乃がいい席を取っていたはずなのに、何故かわたしとはぐれていた。


 由紀乃の隣には自称ライバル女子がすでに座ってて、わたしが来たことに気付いた由紀乃が申し訳なさそうな顔をしてた。たぶん、無理やり誘われたかもしれない。


 ヒロを探しても同様で、彼の周りには普段あまり話して無さそうな女子が近くに座っているし、七瀬も女子に囲まれてた。てっきり沙奈が邪魔してるかと思っていたけど、沙奈は教室にすら来てなかった。


 わたしが話せる人、味方は誰かの仕組まれによって離されたらしい。座る席がほとんど見当たらない中で、唯一がら空き……わざと空けといたらしい場所はあいつが座っている席の隣しか無かった。


 よく分からないけれど、嬉しそうに誰かに手を振っていた。


「綾希! こっち空いてる」


 他に空いてる席が無いか探したものの、どこも無かった。空いてる席が無いから、そのまま教室に入らずに出て行こうとしたら先生が入って来て、結局アレの隣に座るしかなかった。


「お前、視力が落ちたのか? それとも耳が遠くなった?」


「……」


「聞こえてるんだろ? 何で俺と話すらしてくれねえの?」


 むしろどうしてそこまでわたしと話がしたいのかが謎。楽しい話をした覚えなんてないのに。


「沙奈に聞いたけど、俺と別れてからしばらくへこんでたらしいな? やっぱ別れるつもり無かったんだろ? でもま、こうして同じ学校に通えるようになったし距離とか関係無くなったから、戻らねえ?」


「……誰?」


「うぉい! お前、綾希ってそんなことを言う奴だったっけか? 沙奈って女子と編入男子の話で盛り上がってた時はもっと、自然体だったって聞いたんだけどな。どうせ今もキャラ作ってんだろ?」


 それはこの人の大きな勘違い。沙奈とわたしがまだ仲良しな時は、彼女に合わせていた。元々人見知りだし、その辺の女子とすら話したことがないわたしにとって、沙奈の強い口調と喋りで引っ張られていただけだった。それこそ沙奈と一緒にいた最初のヒロのような感じ。


「何か用?」


「隣に座りたかっただけ。そうでもしないと話すらしてくれねえだろ? だから協力してもらった」


 あぁ、そっか。コレは見た目だけは良くて、そのくせ調子が良すぎるからあまり知らない女子は優しさを出してしまうんだ。そこいくと、沙奈はタイプが違うから最初からそれほど相手をしていなかったようにも思えた。


「沙奈はどこ……?」


「あいつ、ああ見えて体育系なんだよな。今は大会か何からしくて、学校にいないらしいぞ。って言うか、けんか別れしたんじゃなかったか? 俺もあまり話してないけどよ」


「さぁ……」


 隣から何かの雑音が聞こえて来ている。そう思うしかなくて、喧嘩はしたけどこういう時に沙奈がいてくれたら少しはマシだったのかもって思えて来た。それほどコイツはうるさくて、凄く嫌いすぎるから。


 彼の傍に行きたい。だけど、わたしはどうすればいいの? 授業時間の間だけは耐えるしかないのかな――ねえ、七瀬。あなたの隣に座りたい。

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