83.わたしの味方
普段、教室や外でも話す人は固定だったわたし。沙奈と元カレに関しては、七瀬との事があって以降は全く話してないし、関わることも無い……そう思っていた。でもやっぱり七瀬は、女子人気が高いってことが改めて分かってしまった。
「あやきち、すまぬ~。まさか彌生と会うとは思ってなかった。普段もそんなに話してなかったのに、どうしてまた声かけてくるかな……」
「由紀乃は謝る必要ないから」
「んー……それにしても、ウワサとか流すなんてあやきちの元カレって、ネチってるね。ホント、七瀬くんと付き合ってて良かったよ」
「ヒロとのことも、ごめん」
「あやきちも謝らなくてよい。あやきちは、ちゃんとひろに返事してくれたし。だから私と……」
「進行形?」
「んむ! とは言え、最近は彼のシフトが多めだから会えてないけどさ」
ヒロの告白に対して、きちんと断った。そんな感覚は無かったけれど、カレも由紀乃もわたしの返事をそういう感じでとってくれた。だから由紀乃とヒロは進めたかもしれない。そう思うしかない。
「大丈夫。あやきちには七瀬くんがいるし。誰かに何を言われたって、もう安心していいと思う。そもそも七瀬くんがあんな感じで気持ち出してるのも、あやきちにだけだし」
「……ん。でも、あいつが……」
「元カレかー。まさか何も知らない女子に吹き込んでるとは予想外だったなぁ。器ちっさ! だから、別れた?」
「正解」
「うんうん、あやきちを受け止め切れるのは七瀬くんだけだろうな~」
七瀬も由紀乃も、ヒロもきっと味方。だけど、教室でいつも傍にいられるわけじゃない。特に七瀬は席が離れてるし、我慢もしているはずだから。
「あやきちは私が守る! や、ひろもいるし、七瀬くんもだけどね。それに、あやきちはウワサとか気にしないでしょ? 普段寝てるし?」
「しない」
「それなら、あやきちは今は何もしなくてよし! 敵は勝手に動いて来るだろうけど、あやきちはそのままでいいよ。ウチのクラスの女子って、沙奈以外はあんまりアクティブじゃないはずなんだけどね。ちょっと分からないけど、様子見とこ?」
「見とく」
「あやきちはキツくないんだけどな。単に面白くて天然なだけなのに……」
「由紀乃は悪魔?」
「ちがーーう!! ま、とにかく、そういう所を他の女子は分からないんだろうね。明日、平気?」
「問題ない」
「おけおけ! 女子同士、目立っていじめとかないからいいけど、器ちっさい男が問題かな。それじゃ、明日会おうね。またね、あやきち」
「ん、ゆきのん。また」
「おおぉ!? 守ってやるぜー!」
由紀乃は面白い。ヒロとのことが無ければ、もっと親しみを込めて話が出来るし、そうしたいって思ってるけど、まだそう出来ないのが寂しい。他の女子とか気にしないで、わたしはわたしらしく過ごそう。




