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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
わたしと彼の始まり編

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80/92

80.彼のお部屋と高鳴りと


「お、お邪魔しまーす」


「……ん? どした、綾希」


 七瀬の家に来たはいいけれど、何となく玄関で立ち止まってしまった。いつまでも前のことを思い出して、家の中に入れないとか弱すぎかもしれない。それに引き換え、由紀乃はすぐに靴を脱いでるのに。


「七瀬、お手」


「ほら、掴まれ。引っ張るから、靴脱いどけよ?」


「……ん」


 彼に引っ張ってもらわないと、なんか無理っぽくて「お手」とか言ってみたけれど、すぐに分かったみたいで、文句も言わずに家の中に入れてくれた。


「あやきちはアレか。彼に触れないと安心出来ないのかー。分からなくも無いけど、私の存在を忘れないようにしてくれたまえー」


「見えてる」


「それなら許す! 七瀬くんの部屋に進もうじゃないか」


 七瀬の家。前は外から少しだけ見えただけで、彼と元カノ以外見えなかった。だから本当に初めて来た。それに、わたしよりも七瀬の方が中々呼んでくれなかった気がする。


「七瀬の部屋は2階の奥」


「違うぞ。突き当りの奥だ。2階は親の寝室だ。悪いな、そこは綾希の想像と外れてる」


「何で来てないのに答えられるのなんて思ったけど、あやきちの妄想だったのか。残念だったね、あやきち」


「そうだと思った」


 七瀬の家に入るだけでもホントはすごく動悸を激しくさせているのに、彼の部屋に入るとか本当のことなのかどうなのかって思っていたら、キレのない妄想を言うしか出来なかった。


「綾希、なに? 緊張してんの?」


「してないし」


「あやきちも、女子だったんだね。うんうん、よしよし……」


「撫でなくていいから」


「あー! この役目は七瀬くんだったか。すまん!」


「……どうかな。ほら、さっさと入って」


 七瀬の手に押されるように、わたしと由紀乃は部屋に入った。入ったからといって特別にどうこうなるわけじゃない。でも、七瀬を感じられた。


「七瀬の匂い……」


「え? マジか!? 臭かったか? いちお、掃除したんだけどな」


「違う。七瀬がいる場所って感じられた。体育祭のタオルと同じ……」


「あー……アレか。ってか、アレは汗とか掻いてたし、だから、なんつうか……」


「好きな匂い。これでいい」


「それならいいんだ、うん」


 わたしと七瀬のやり取りをガン無視じゃないけれど、由紀乃は七瀬の部屋を隅から隅まで観察してた。時折、頷きながら何か納得してた。


「スゴイね、七瀬くん。見事に何も無い! テレビも無いしポスターも貼ってない。ベッドと机くらい? てっきり、あやきちグッズがどこかにあるかと期待していたのに」


「ねーよ!」


「わたしのなに?」


「いや、気にすんなよ。泉は何に期待してたんだよ? 別に俺は、眠れて勉強出来れば他は何もいらないし、それにポスターとかより綾希にしか興味無い。ネットも別に普段は使わないしな」


「ほほー? マジで真面目男子だったわけか。なるほどね~あやきち的には七瀬くんは合ってるわけか」


「なにが?」


 七瀬に感じる安心感の正体が何となく分かった。それでもやっぱり、七瀬の部屋にいるだけで動悸がおさまらない気がする。ただの部屋なのにどうしてこんなにも胸がいっぱいになるんだろう。

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