8.そこは意識するとこじゃない
「葛西って、何でもイケる?」
「肌弱いからアクが強い奴以外で」
「分かった」
予算不足でした。ごめんなさい。奢ると言っておきながら、結局自分たちそれぞれで支払ったという事実。それもあったけれど、七瀬が奢ることをよしとしてくれなかった。たぶん、プライドって奴。
「はぁ~~生き返った。悪ぃな、付き合わせて」
「元はと言えば、だし。平気」
「てかさ、あいつらって何なん? 読まねえよな。やっぱり合わねえわ」
「沙奈は悪気なかったと思うけど、彼はちょっと不明。あんまり話したことないけど、確かに合わないかも」
「他にいないの? 仲いい奴」
「春眠」
「人、な。それ、違うから。面白いな、お前」
「あぁ、うん。ウチの学校って一年ごとにクラス変わるから、仲良くなっても続かない」
「いや、続くって! 同じとこにいるだろ? 話くらいするはずだ」
距離感の問題が出てくる感じかもしれない。それか、結局のところわたしが冷めてるだけ。
「なぁ、葛西って……」
「なに?」
「いや、いい。やめとく」
「言いかけると気になるとでも? ごめん、その辺気にしないです」
「だと思った。そのうちでいいや。葛西は時間かかりそうな気がするし」
「……綾希でいいし」
「お? なに、名字は気に入らない系?」
「担任っぽいから好きじゃない」
わたしのことを名前で呼ぶのは限られてて、ほとんど女子だった。あまり気にしていなかったというのもあったけれど、名字呼びは大概は教師とかが呼んで来るから好きじゃない。それよりは、名前呼びの方がマシ。名前で呼ばれたからってどうということはないわけで。
「じゃあ、俺のことも……」
「それは別なのでいいです」
「あぁ、うん。ですよね」
なんかがっかりしたような表情を見せている七瀬。だけど、わたしの名前を呼ぶのとはきっと意味が違うはずだし。
「綾希は、ずっとそんな感じか?」
「どういう意味で?」
「何て言うか、話し方とか?」
これが自然です。とでも言うべきなのかな? 本当はそうじゃないけど、そうなるまでってどれくらいなんだろうか。そもそも席がお隣さんなだけの男子に、馴れ馴れしくすることは正しいのだろうか。
「あーうん。そうじゃないけど、それが?」
「ま、それがいいって奴もいるから気にすんな」
「そうする」
元カレとのやり取りってどうだったかな。こんな感じだったような気がしないでもないけど。そもそも意識の欠片もなかったし、手を繋いだことなんて無かった気がした。そんな機会が今後あるのかは不明だけど。変われるのかな。そうならいいな、それがどこの誰かは知らないけれど、七瀬を見ながら何となく。




