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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
わたしと彼の始まり編

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79/92

79.七瀬の家への誘い


「なぁ、綾希。今日、俺の家に来るか? それと……」


「行く」


「はいはいはい~じゃあ、私も行きたい!」


「ちょっ、由紀乃さん。邪魔したら駄目でしょ」


「いや、泉も……と言おうとした。綾希の返事の方が早かったけどな。上城わいじょうはどうする?」


「俺はバイトがあるから。ってか、綾希さんとふたりじゃダメなのか?」


 嫌と言うわけでもないけれど、どうして由紀乃も誘うのだろう。なんて疑問を抱いていたらすぐに答えが分かった。


「駄目じゃないけど、まだ俺の心の準備が……な。それに、俺の家はどっちも仕事行ってて静かなんだよ。だから、泉もいればにぎやかになるだろうなと思った。綾希とふたりになる時は、お前らがいない時に言う」


「うんうん、七瀬くんは寂しがり屋なんだねぇ。さっき言ってた我慢が~っていうくだりもあるし、そこは守りたいわけだね。理解した!」


「ちげーし」


 確かにわたしとふたりだけでってことなら、わざわざみんながいる前では言わないはず。七瀬的に、由紀乃って頼りたい存在なのかもしれない。歯止め的な。


「……行ったことない七瀬の家の中に、由紀乃と行って慣れたい」


「別に何も出ないけどな。ただ、なんつうか、誤解させた場所だし……泉と来た方がいいかもって思っただけだから。綾希が前に来た時のことは悪いと思ってる。だから、な」


「七瀬の家の前に元カノさん……いないよね?」


「いない。あいつの……いや、俺の前の学校は近くでもないから平気だ」


 やっぱりそうだ。わたしひとりだけで行った時のことを気にしてくれてるんだ。怪しくなかったし、誤解だったことだけど、それでも七瀬と元カノが会ってた場所でもあったし、何となく躊躇したかもしれない。


「なるほどね。七瀬くんは、あやきちが大事なんだね。泣かせた場所でもあったわけか~」


「……ごめん」


 悪いと思ってるのか、七瀬は素直に謝って来た。そういう意味ならわたしも謝りたい。七瀬にそのことをずっと気にさせていたなんて思わなかった。


「いい。それに、由紀乃いるからきっとそれも忘れるはずだから」


「そっか、サンキュな」


「あやきちも七瀬くんも、私を嫌なモノを打ち消す便利なキャラだと思ってるだろ? 全く、仕方ないふたりだなぁ。いいけど」


 わたしと七瀬と由紀乃のやり取りに、ヒロは入って来れないのか静か。そう思っていたけど、彼は焦りながら、廊下の方で手を振ってた。


「うおっ!? 昼終わってんぞ! 綾希、泉、急げ!」


「ひろだけ真面目か! や、ウチらだけ話に夢中になりすぎたのか~ごめんね」


「いいよ、ほら、走れ綾希!」


 慌てながらの七瀬の手がわたしの右手を掴んできていた。こうして七瀬の手に触れることが、わたしには落ち着けることになるだなんて前は思わなかったけれど、今は全然違っているんだ。今度はもっと……。

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