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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
わたしと彼の始まり編

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77.内緒話とウワサ話


 授業中、いつものように机に伏しながら眠るわたし。眠っていると基本的には、話し声なんて聞こえて来ないものではあるけれど、この日に限っては不思議なことに意識の中にその声が入って来ていた。


「……葛西さんって、どっちが本命なんだろうね?」


「さぁ……? でも、沙奈やゆず君がゆってる限りだと、七瀬くんは今フリーっぽいよ」


「マジで? じゃあ、狙おっかな」


 あー……沙奈もさとるも懲りてないんだ。他の女子たちを巻き込んでまだ何か企んでるのだろうか。でも、そう言われても不思議でもないのかもしれない。


 七瀬と席が離れてるし、普段はあまり話をして来ないからそう思われても仕方ない。それに敵じゃないけど、由紀乃の方が七瀬とよく話をしてるようだし。わたしはわたしで、ヒロと普通に話が出来るようになったから、どっちが本命かなんて思われてもしょうがないことなのかもしれない。


 聞こえてるし実は眠ってない。それに気付いているのか、隣の席のヒロがわたしにこっそりと声をかけてきた。


「(綾希さん、気にしちゃダメだよ。知らない人は勝手に言うんだしさ)」


「……」


「(俺の好きな人は綾希さんじゃなくなったけど、でも俺は味方だから。だから、頼っていいから)」


「ありがと」


 ヒロはわたしに告白したけど、わたしを諦めてくれた優しい人。今は席が近いこともあって、いつもこうして小声で優しいことを言ってくれる。それこそ由紀乃には聞こえないくらいの小声で。


 そっか。わたしが由紀乃に抱いていた嫉妬は、由紀乃も感じることだよね。ずっとヒロの傍にいたのは由紀乃だったのに、カレはわたししか見て来なかった。そういう意味じゃ、敵なんて言う資格なんて無かった。


 お昼休み。以前と違ったことと言えば、4人で座ってご飯を食べるようになったこと。そういう時間になると、寂しさなんて無くなるくらいに七瀬はわたしの隣にいるし、距離も近くなるのにどうしてその時だけなのかが理解出来なかった。


「やっぱ、土曜に休み入れたから店長にどやされた」


「あー、泉の分も含めてだろ? じゃあ何、お前らしばらくバイト漬け?」


「そうなるね。だから、期末の対策だけど……七瀬は綾希さんに付きっきりで教えなよ?」


「うんうん、あやきちには七瀬くんの個人レッスンがいいと思う!」


 期末対策……なんて嫌なワード。でも、七瀬とふたりでやるなら頑張れるかもしれない。


「まぁな。てか、最初からそのつもりしてた。悪ぃけど、上城わいじょうも泉も呼ぶつもりなんて無かった」


「七瀬とふたりがいい」


「ほら、な?」


「あーはいはい、分かってました」


 由紀乃もヒロもバイト三昧。なんてことを言ってるけど、さすがに期末の時はバイトも休みになることくらい知ってる。だけど、ふたりが気遣ってくれてることは何か嬉しい。


「でも、七瀬……」


「……ん? どした?」


 どうしてか分からないけれど、きっと他の女子たちからの声が気になってしまったからだと思う。こんなに七瀬に傍にいて欲しいだなんて、以前はこんなことはっきり言わなかったのに。


「いつも傍にいて欲しい」

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