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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
わたしと彼の始まり編

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73/92

73.七瀬の想い


 前をよく見ないまま、ズンズンと進んだら七瀬の胸元に飛び込んでた。しばらく彼に抱きついてた。ということは、結構危なかったってことらしい。


「お前、俺がいなかったら今頃、空にいたかもしれなかったんだぞ? 分かってんのかよ、全く」


「ん、空を見上げたら七瀬がいたから。分かってた」


「ちげーし」


 七瀬とのやり取りが好き。別に彼をからかうつもりで言ってるわけじゃ無い。でも、わたしの言葉に彼は、仕方ねえなって感じで返してくれる。そういう優しさを初めから出してた人。だから好きなんだ。


「と、とりあえず、電車乗ってそこから綾希の家な」


「分かった」


 空気を読まなくてもいいけれど、七瀬はわたしの手に触れて来なかった。けれど、傍を離れずにいてくれた。彼なりに、何となく恥ずかしくなっていたのかもしれない。そこがまたわたし的に可愛く思えた。


 駅に着いてからまた歩くわたしたち。歩きながら、それまで黙ってた……と言うよりは、我慢していた言葉を次々と出してきた七瀬。その言葉を聞かされたからといって、どうということはないけれど、黙って聞くことにした。


「席替えのことだけど、俺は何て言うか……先生に頼んでた。これ、オフレコな! でも、特別扱いは出来ないって言われた。それが事実。だから、別にお前と離れて良かったとか思ってないから」


「……ん」


「あと、お前の元カレのあいつ。アレは相手にならないから気にしてないけど、綾希もそうなんだろ?」


 それについては何度も無言で頷いて見せた。


「だよな。沙奈が変な事言って、俺らを別れさせようとしてたらしいけど、無駄ってことだ」


 そういえば、どうして沙奈はさとるのことを知ってたんだろ。どうでもいいことだけど、気にはなった。そう思ってたら、答えを教えてくれた。心でも読まれた?


「あいつら、塾が同じらしい。だから知ってたってか、知り合ったらしいな。波長でも合ってたんじゃねーの? その割にはゆずりはは相手にされてないけど」


「うん」


「安心した?」


「何となく?」


「そこは断言しとけよ! なんつうか、涙流させてごめん。そんなつもりなかった。綾希が大事すぎた。だから、その……」


 優しさを大胆に出して来る割に、結構不器用なんだ。わたしへのキスも、まだ分かる様な感じでして来てない。やっぱり恥ずかしいってことなのかもしれない。焦らずにわたしも七瀬も、これから……これから。

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