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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
わたしと彼の始まり編

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71/92

71.友達の笑顔


 いくら鈍すぎるわたしでも、七瀬が気を遣って屋上に来たことくらいは理解してた。七瀬が夢で片付けたことも覚えてる。時間にしたら結構経ってたけれど、それでも由紀乃とヒロの様子は気になった。


 由紀乃が好きな人はヒロ。ヒロが好意を寄せていたのはわたし。面と向かってしかも、当事者がいる前で好きと言われて気にならないわけがない。友達として……そう言わせたのはわたし。嫌いじゃないから、だから直接的な言葉をかけられなかった。


「綾希、気にすんなよ」


「なに?」


「お前の顔を見れば考えてることが分かるんだよな」


 またそうやってわたしの心を奪おうとする。だから、ひねくれた答えを出す。


「何で分かった? 揚げ物が大好きだってこと」


「えっ? い、いや……そうなのか。じゃあ……って、誤魔化すなっての! 由紀乃と上城わいじょうのことだろ。綾希が気にかけてんの、分かるんだよ」


「呼び方変えた? いつから由紀乃に……」


「まぁ、友達だから、さん付けってのもさ……」


 分かるし。七瀬と由紀乃はすごく仲がいいから、その部分も何となく妬ける。


「あいつらなら大丈夫だから、綾希も笑顔を見せればいいと思うよ」


 七瀬に言われるまで、自分がどんな顔をしていたのか気付いてなかった。たぶん、自分では気付かないくらい、落ち込んだような表情になっていたんだと思う。そこまで見られてしかも、気付かれたなんて何か悔しくなった。


「七瀬」


「……ん?」


「手を出して」


「いや、だからそれは……って、いてててて!?」


 手を繋ぐでもなく、握るでもない。何となくの抵抗で、指を引っ張った。


「お前なぁ……小指だけ伸びたらどうしてくれるよ?」


「うるさい」


「何で怒ってるんですか? 綾希さん」


 そんな感じで屋上の階段を降りて、屋内展望台に戻ったわたしと七瀬。出迎えてくれたのは、友達。


「あやきちーー! いちゃついてんな、こらー」


「してないし」


「くっ、反抗するようになりおって……七瀬くん、何とか言ってやってよ」


「今は勘弁」


 そんなに痛くしたわけじゃ無いけれど、小指をさすりながら気にしてた。もちろん、ヒロのことを。


「ははっ、七瀬は綾希さんには形無しなんだな。マジでウケる!」


 ヒロの言葉が初期に戻ってる。でも、嫌な感じじゃない。良かった、由紀乃もヒロも笑ってる。


「てか、あやきちも七瀬くんも抜け駆けで屋上にいきおってー! 罰としておごれー」


「ご、ごめん、由紀乃。上城の分とで奢るから、許してくれないかな? 綾希のことを」


「なんでわたしだけ?」


「この通り、綾希も頭下げてますんで!」


 七瀬の手がわたしの頭の上に乗っかって来たと思ったら、わたしも謝ってた。


「そういうことなら許してあげようじゃないか! じゃあ、ひろ! ウチらも上へ行こうか」


「そうだね。七瀬、綾希さん。そんなわけだから、俺らの後ろを付いて来て」


「分かった、行くよ」


 結局、また屋上に行くことになった。でも、由紀乃とヒロの距離が縮まったように見えた。いつもの明るいキャラの由紀乃なのに、彼女の手はヒロの服の袖口を遠慮がちに掴んでいた。たぶん、そういうこと。

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