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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
わたしと彼の始まり編

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70/92

70.見上げた空に七瀬


 空は見上げればどこでも見える。だけど、その距離を少しでも縮められるからこそ、人は高い所に登って空を見上げるのかもしれない。ヒロが誘ってくれた展望台。今日は青い空がよく見える絶好の日。


 七瀬の手に引っ張られながら、屋上の外に出た。確かに風が強い。けれど、さすがに飛ばされはしない。少しだけ体がよろめく程度。決められた通路とスペースの中でしか、空や景色を眺めることが出来ないから飛ばされることもない。


「綾希、広い所に進むぞ」


「ん、進む」


 風に揺られながらも、七瀬が繋いでくれている手はわたしをしっかりと支えている。飛ばされるなよなんて言っていたけれど、そんな心配をする必要は無かった。


「おー! 天気いいし、見晴らしマジでサイコー!」


 しっかりと掴んでた七瀬の手はようやく離れて、すぐに両手を上げてはしゃいでた。こういう七瀬を見るのは初めてかもしれない。こういう一面があるというよりかは、あったけど出して来なかったと言うのが正しい。


「大きな子供」


「まぁな。いや、でもはしゃぎたくなるって! こんなに晴れてるし、風、気持ちいいし。綾希だって髪がなびいてんぞ」


「窓の席を思い出した。戻りたいかも」


「そっち!? あ、でも、気持ちは分かる。ここは教室の窓より全然高いけどさ、風はおんなじ感じがするもんな。だからと言って眠くなるなよ?」


 七瀬に言われる前に、思い出してたら眠くなってた。それと同時に、一瞬だけ強い風が吹いて来て気付いたら、体のバランスを崩してた。大げさになるほど、体が崩れたわけじゃ無かった。でも、咄嗟に瞼を閉じてた。


「……んー」


「おいっ、綾希! 起きろって。ここで寝るとか、マジかよお前」


 違うし。眠るために体を崩したんじゃないし、瞼を閉じた訳じゃないのに。でも何となくの抵抗。七瀬の声が聞こえていても、ほんの数秒だけ瞼を閉じたままにしていた。


 七瀬の両手はわたしの両肩に触れながら、支えていた。


「綾希、マジで寝たのか? 襲うけど、いいんだな?」


 あぁ、思い出した。これのくだりって確か、ヒロと一緒に図書館にいて、わたしが寝ていた時に言ったセリフだ。あの時は場所も悪いし、ヒロがいたし。とにかく却下したかった。


 今だって、そんなこと言って来てるけど屋上だし、誰かが見てる前だから冗談だと思う。そう思って、何も言わずに瞼をゆっくりと開けながら、青空を眺めようとした。


「……」


「襲う……いや、奪うから」


 奪うって何だっけ。そんなことを頭の中で思い浮かべながら、空を眺めた。そこには何故か、七瀬がいた。青空じゃなくて、七瀬が。


「……ん――……」


 奪われてた。嫌でも無ければ、拒みもせずに自然と奪われてた。再び、瞼をゆっくりと開けて見上げたら、青空だった。


「あれ?」


「綾希、夢でも見てたか? てか、手、引っ張るぞ。お前、どこでも寝れんのかよ」


「七瀬」


「どした?」


「青空に七瀬がいた」


「気のせいじゃね? とりあえず、そろそろ下に降りとくか。あいつらも気付いた頃だろうし」


「ん、分かった」


 夢で片付けられたけど、珍しく隠してるんだ。あれは気付くし。でも言わないんだ。いいけど。


「とりあえず、今は手繋ぎはやめとく」


「なぜ?」


「空気を読む。そんだけだ」


「七瀬の話っていつする?」


「んー……まぁ、あいつらが帰ってから」


「分かった」


 言葉なんていらない。アレが七瀬の返事だった。手繋ぎもそう。きっとそういうこと。起こす時の七瀬の声が、本当に初めて声をかけられた時のことと同じだった。


 その時から始まっていたのかもしれない。七瀬と、わたしの関係が。

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