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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
ラブ・カルテット編

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68/92

68.好きでいてもいいよね?


 七瀬と手を繋いだまま、みんなと合流した所までは良かったけれど、そのせいでヒロは機嫌を損ねてしまった。もちろん、彼の気持ちに気付いていないわけじゃ無かった。ヒロに心が傾こうとしていたのも事実。


 でも、離れたはずの七瀬がわたしを引き戻した。わたしも彼も悩んで迷って、その言葉を放つためにここに来た。だから、ヒロにもはっきりと言わなきゃ駄目なんだ。


「えーと、あやきちたちは屋上にも行く?」


「おー、行くよ。すぐには行かないけどね。だから、泉さんと上城とで一緒に見て回ろうかなと思ってるよ」


「おけおけ、ひろくんもいいよね?」


「……どっちでもいい」


「あ、あはは……ほら、あやきちもひろくんに何か言って」


「ヒロくん。一緒に回ろ?」


「――!?」


 なんか顔を真っ赤にして背けたヒロ。なんかおかしなことしたかな。 


「ちょっ! あやきち、上目遣い禁止!!」


「そ、そうだぞ! それは誰にでもやってはいけないんだ。それにヒロくんもおかしいだろ! ったく、分かってんのかよ、綾希」


「なにが?」


「お前なぁ……それ、天然じゃなかったら完全に小悪魔系じゃねえかよ」


 小悪魔? それに七瀬も顔を赤くして怒ってる? 何でかな。


「ははっ、あははっ! いいなぁ。綾希さん……君のそういうとこに惹かれたのかもしれない」


 黙っていたヒロが何かすごく無邪気に笑った。そう思ってたら、わたしの前に立った。隣に七瀬がいても関係なく、彼はわたしを真っ直ぐに見つめながら口を開く。


「綾希さん、俺、君が好きでした。だけど、分かってた。俺じゃないんだってこと。最初が肝心って言うけど、最初に失敗っていうか、席が隣じゃなかったことがダメだったかもしれない」


「……」


「ごめんね、こんなこと。でもさ、これからも好きでいていいかな? もちろん、友達として……だけど」


 ああ、そうか。由紀乃がいる前でも関係なく、ヒロはわたしに気持ちを伝えたかったんだ。七瀬も由紀乃も黙ってた。彼が本気だったってこと、知ってたんだよね。気持ちが届かないってことも知ってたんだ。


「うん。ヒロと友達。ずっと、友達」


「……ありがとう、綾希さん。俺、ちょっと自販で何か買ってくる。七瀬と綾希さんは適当に回ってていいよ」


「いってらっしゃい」


「行ってくるね」


 ヒロは最後までわたしに笑顔を見せたまま、自販のある方に歩いて行った。由紀乃も彼の後に続いて付いて行った。ごめんね、ヒロ。こんなわたしに好きとか言ってくれるなんて、ごめん。

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