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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
ラブ・カルテット編

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67/92

67.カノジョはそれでも、恋をする。


 七瀬の手に触れながら、展望台入口に向かって歩き出した。誘ってくれたカレに見せてしまうのは良くないことかもしれない。それなのに、もうわたしの隣には彼がいて、わたしの左手には彼の右手がしっかりと繋がっていた。


「あやきちー! 遅いぞー」


「遅れた」


「悪気なく全くもう!」


「綾希さん、それに七瀬。今まで何やって……!」


 ヒロの視線はわたしと七瀬の手繋ぎにきていた。ヒロに見せるつもりなんて無かった。でも、もう隠しても仕方ない事なのかもしれない。そして分かってた。今日の誘いがわたしとふたりで行きたかったことも。


「な、何で……」


「ひろくん……と、とりあえずチケット買ってあるんだし、昇ろうよ! ほら、エレベーター来てるよ」


 言葉を失いかけたヒロに、由紀乃は咄嗟に彼の腕を引っ張って、エレベーターに飛び乗った。わたしにも、七瀬にも手を振って、苦笑しながらも先に上がって行った。


「七瀬、何でそんなことするの? どうしてヒロに……」


「お前も分かってんだろ? あいつの気持ちと泉さんの気持ち。そして俺の気持ちも……もう迷うのやめろよ。はっきりさせればこの先、誰かが傷つくことは無くなるはずだろ」


「七瀬も迷ってる?」


「いや、もう迷わない。てか、お前気付いてないのか……」


「なにが?」


「……泉さん行っちまったし、俺らも上に行くぞ」


 迷わせたのはあなたの方だよ。わたしを離したのにそれでも離れなくて、また近づいて来てこうしてまた、わたしを迷わせる。こんな気持ち、忘れられるわけがないよ。嫌いになんてなれなかった。


 終わったと思った。だからヒロの気持ちを受け入れようとしていたのに……どうして、七瀬はまたわたしに恋をさせようとしているの? もう一度、聞かせてくれるの? 七瀬の気持ちを。


「上、行って、話をしてくれるの?」


「する。それがお前との約束だから」


「分かった」


 満員のエレベーターに乗っている時も、七瀬はわたしの手をしっかりと握っていた。そして一番上の階に着いて、扉から出ると由紀乃とヒロがわたしたちを待っていた。ヒロは顔を背けていた。


 由紀乃は、顔を背けていたヒロの服の袖口を遠慮がちに掴んでた。きっとカノジョも、今日の誘いで覚悟を決めて来ているんだ。由紀乃の表情はそんな感じに見えた。


 由紀乃。わたしの大事な友達も、好きな人に今まで気持ちが届いて来なかった。でもそれでも、カノジョは恋をしているんだ。わたしも、恋をしたい。だから、決めなくちゃ。

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