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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
ラブ・カルテット編

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65/92

65.見える心、見えない気持ち。


「お待たせ。オレンジジュースとかで良かったかな?」


「ん、それで合ってた」


 ヒロがわたしのためにジュースを持ってきてくれた。その時は一瞬だけ七瀬の手が離れたけれど、彼が席に着いたらまた手を繋いできた。それって、どういう意味? 単に寂しがり屋なの?


「それでさ、週末のことだけど泉さんは来られないんだっけ?」


「うん、残念」


「シフト入ってたみたいなんだよね。残念だけど、3人で行くしかないかな」


「おい、上城わいじょう。ホントに残念って思ってんの? 思ってんなら、誰かに頼んで泉さんも行けるようにしろよ。出来んだろ?」


「は? シフトのことを何で俺が出来るんだよ。ってか、残念に決まってるだろ」


 出来るんならやっぱり由紀乃も来て欲しい。そうじゃないと、ヒロはきっとまた気を悪くしそうな気がする。展望台に登ったら、七瀬はわたしに話があるって言ってた。わたしも七瀬と話がしたい。たぶん、これはわたしの気持ちの問題。そこにヒロだけいたら、傷つけてしまう。そんな気がする。


「ヒロ、由紀乃のこと何とかお願いしたい。出来る?」


「うーん……期末でも何でもないけど、店長に話してみる。だから、綾希さんは彼女に聞いてみて」


「分かった」


 せっかく席に着いたのに、ヒロはまた立ち上がって、奥の方に歩いて行った。


「由紀乃に連絡……あ、スマホ持ってきてなかった」


「お前、相変わらずだな。滅多にいないぞ、お前みたいな女子。まぁ、いいや。俺が連絡しといてやるよ」


「ん、任せる。でも、由紀乃の連絡知ってた?」


「あぁ、まぁな。この前の昼に聞いといたんだよ。綾希の代わりに連絡出来る係としてな」


「あー……それで握手してたんだ」


「……まぁ、そんなとこな」


 そう言うと、七瀬の手はわたしから離れた。その手で由紀乃と連絡してた。何だろ、何か……嫌だ。


「行けるって」


「だと思ってた」


「ホント、お前って変わんねえな」


「……ん?」


「いや、別に。だからこそ……」


 何かを言おうとしてたけどやめた? 聞こうとしたけれど、たぶん無駄だから黙っておいた。そうしたら、丁度よくヒロが戻って来た。表情を見る限りは、どっちとも取れる感じ。


「どうだった? 泉さん、休めんの?」


「まぁ、うん。一応許可出た。ただ、来週の土日は休めなくなった。今のところ予定ないからいいけどさ」


「ありがと、ヒロ」


「うん、そうだね。最初からこうしとけばよかったんだよね。そうすれば俺も変に迷わずに済んだかもしれないし」


「――?」


「何でもないよ」


「うし、じゃあ……俺らは帰るわ。綾希も大して食べなかったし」


「お前だけ帰れよ。何で綾希さんも帰らせるんだよ?」


「夕方だし、送って行くんだよ。それに、俺らは客だけどお前は一応、店員だろ? 奥の方の偉そうな人が何かこっち気にしてんぞ。バイト先でご飯食べるとか、それって結構……」


「……あ」


「ヒロ、ごめんね。ありがと。週末、楽しみ。だから、また」


「う、うん。そうだね。じゃ、じゃあ俺、行ってくる。七瀬、きちんと送れよ?」


「当然だろ」


「バイバイ、ヒロ」


「またね、綾希さん」


 ヒロは慌てて、奥の方に戻って行った。夕方だからか、結構席が埋まってた。だからきっと、呼ばれてしまったかもしれない。何だか悪いことしたかも。


「じゃ、行くか。綾希の家まで送る」


「分かった」


 帰る時、さすがに外では手を繋いで来なかった。ファミレスでのアレはどういう気持ちだったのだろう。でも今は、深く聞かないことにした。週末の展望台で分かることだから。今度こそ、彼の気持ちが。

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