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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
ラブ・カルテット編

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64/92

64.繋ぐその手の意味は?


 ヒロが働いているファミレスに誘われて、わたしは店内の奥の席へ案内された。わたしの後ろには七瀬も付いて来ていて、背が高い七瀬の顔がわたしのすぐ後にいたことに、ヒロは何度も首を傾げていた。


 わたしの隣には七瀬が座り、わたしに向き合うのはヒロひとりだけ。でも、視線は常に七瀬を気にしていたけれど。やっぱり敵?


「綾希、何でも食えよ?」


「そうする。七瀬は水?」


「まぁな。水だけだ。今回は冗談じゃなくて、マジな」


「犬だから?」


「そういうことだ」


 わたしと七瀬のやり取りに、中々入って来れないのか、ヒロはどんどん機嫌を損ねていた。何だか悪い事をしてしまったかもしれない。


「ヒロ、ごめん。なんか、勝手について来た。でも、ヒロに負担かけたくないし。それよりは七瀬に負担かけさせたほうがいいって思った。だから、ごめん」


「綾希さんが謝ることじゃないよ! 俺が誘ったことだし。話をしたかったのは事実だからね。週末のこととか、その先のこととかも話せればいいなって思ってた」


「ん、ごめん」


 何度も謝りたくなるほど、ヒロの表情は回復しなかった。でも、わたしとふたりだけで話をすることがそんなに楽しいのだろうか。これといって話題も無いのに。


「何か、何度もごめんって言われると俺、何も言えなくなるよ。えと、ドリバー行ってくる。綾希さん、何か飲む? 七瀬が奢るのは食べる物だろ? 俺はドリバーくらいなら出すから」


「じゃあ、オススメ? を」


「うん、任せて! じゃあ、ちょっと待っててね」


 さすがに謝りすぎたのか、それとも一度席を立ちたくなったのか、ヒロはドリンクバーの所に行ってしまった。わたしの隣に七瀬がいる。それだけでも席を立ちたくなったのかもしれない。


 七瀬と少しの時間、ふたりだけになった。学校の時みたく、少し離れた隣の席じゃなくて、真横に彼が座ってる。わたしの手はどこに置いておけばいいのだろう。そう思って右手はお水の入ったコップを手にしていたけれど、左手はファミレスソファの所に置いておくしか無かった。


「――?」


 気のせいとかでも無くて、何か左手に右手が乗ってたと思ったらそのまま、繋いできてた。これはどういう状況なのだろう。右手の主は隣にいる七瀬。だけど、彼の顔を見ても何も言ってこない。


「なに? なんで?」


「いや、別に……お前とそうしたくなっただけ」


 離してなんて言葉が何故か出て来なくて、ヒロが戻ってくるまで無言でそうしてた。何でか知らないけれど、繋いでる時何も不安を感じなかった。慣れってことなのだろうか。


 しばらくということでもないけれど、誰かの手に触れることが無くなっていて、不安を抱えるようになっていた。だけどそれが消えていた。


「……ん、分かった」


 七瀬は何を考えているんだろう。そして、わたしも七瀬とどうなりたいんだろうか。でも、間違いなく思っていることは、わたしの隣には七瀬にいて欲しい。


 いつもより口数の少ない七瀬だったけれど、なんか気持ち、伝わって来た気がした。そして心の中で、何度もヒロに謝ってた。「ごめんね」って。

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