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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
ラブ・カルテット編

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60/92

60.すれ違う日々の始まり


「え? あ、綾……葛西。今、俺のことなんて? それに、今までありがとう? ど、どういう意味なんだ」


「……課題ノート。もう、借りられないからありがと。何かおかしなこと言った?」


「あ、あぁ~。そうか、そうだよな。先生にバレタのか。だよなぁ……いや、葛西が俺のこと七瀬くんって、何か新鮮だから驚いた」


「あ、あやきち、成長したねぇ……うんうん」


「……もうすぐHR始まるけど、七瀬、席戻らないの?」


「あ、あぁ、戻る」


 由紀乃はまるで親の様に感心してたけど、七瀬は現実を受け止められていないみたいだった。課題ノートのことよりも、たぶん、くん付けで呼ばれたことに違和感を覚えたんだと思う。そして、七瀬に席に戻るように促してくれたヒロはもしかしたら、わたしと彼のことに気付いたのかもしれない。


 授業の合間の休み時間、ヒロとわたしと由紀乃で話すことが増えた。その中には、席の離れた七瀬は含まれていない。それ自体は、席替えをしてからそうなったことであって、特別七瀬と話さなくなったわけじゃ無い。だけど、あざとく気付く彼女たちは当然ながら、チャンスをうかがっているみたいだった。


 窓側の席辺りは視界の中に少しだけ入って来る。全く気にしないと言えば嘘になる。でも、以前ほどじゃない。だって、彼の周りには沙奈とさとると、彼女たちが群がっていたから。


「輔、綾希とマジで別れてたんやな。てっきり、芝居かと思ってた……でもこれで、あたしも本気で挑めるな」


「ん? そうなのか? おい、七瀬! 芝居ってマジか? で、今は本当に別れたんだな。それならお前に気を遣うことしなくていいな」


「お前、俺に気を遣ってたのか? ゆずりは。悪ぃけど、芝居でもないし別れても無いから。だから、沙奈。お前が俺にどんなに挑んできても無駄だから、手っ取り早くそこの楪でもゲットしとけばいいんじゃないか?」


「タイプ違うし無理やわ。別れてないんなら、何であんなに余所余所しくなってん? 何か誤解でもさせたんやないの? 言っとくけどああ見えて、綾希は頑固な子なんよね。今のままやと、比呂と付き合うかも」


「……」


 昼休み。いつもは七瀬と由紀乃と3人で話をしながら食べていたけれど、わたしは屋上でヒロと食べることにした。七瀬と由紀乃は少しだけ、顔を引きつらせながらカフェに行ったみたいだった。


「ちょっと、七瀬くん。あやきち、どうしたの? もしかしなくてもひろくんと仲良しになった? 嘘でしょ!? まさかのあやきち裏切り行為ですか? ど、どうすればいいかな、七瀬くん……」


「いや、俺も泉さんに相談と言うか話があるし、そのまま席に座ってもらっていいかな?」


 わたしとヒロ、七瀬と由紀乃。それぞれの想いと気持ちが互いに知らない所で動き出したかもしれない。

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