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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
隣の席のカレ編
6/92

6.子犬の様な表情に何かが上がってきてた


 クラスの女子の中で、比較的真面目な方。それが自称、わたし。でも、春だけは許して欲しい。結局、昼まで勝てずに眠っていた。


 隣をチラっと見てみたけど、彼も眠ってたのが何となくの仲間感。ホント、しょうがないこと。


綾希あやき、昼どする?」


 最近話をしていないなと思っていたら、沙奈さなから声がかかった。もちろん、断る理由なんて無くてすぐに返事。隣の七瀬はまだ寝ていたので、さすがに起こさずにしておくことにした。多分、それが思いやり。


 ウチの学校は元々女子高。そんなこともあって、いわゆる学食がカフェと一緒になってたのが救い。見渡す限り、男子はいなかった。そんな中に、沙奈と上城くんとわたしで食べることになった。不思議な組み合わせだったけれど、特段注目を集めるわけでもなかったのが良かった。


「綾希、初めてじゃん? 比呂と話すの」


「そう言えば、うん」


 何となくこの時点で気付いたことがあって、沙奈はこっち側男子が好きっぽい。そんな感じ。


比呂ひろっす。上城わいじょうって覚えにくいし呼びづらいって、コイツに言われたから比呂でいいよ。よろしく。えーと、綾希だっけか?」


「葛西です」


「あ、あぁ」


 コイツ呼びって、早くない? 七瀬が言ってた沙奈の慣れてるって、そういう意味だったのかな。


「……で、綾希はたすくと話せてる? きっかけ作っといたけど気になってた」


「や、別に」


 沙奈が作ってくれたらしい七瀬とのきっかけは、春眠で終わってました。それにしても、沙奈ってわたしの知らない顔でもあるのだろうか。あんまり他人を気にしたことないけど、友達だから気にはなった。


「そうなん? でも、悪い奴じゃないっしょ?」


「多分ね」


「てか、起こさなかったんだ? 今頃泣いてるかもよ」


「寝てるのを妨害はやっぱ、良くないし」


「昼だし、そこはさすがに。それに綾希に起こされるのを夢に見てるかも」


 わたしに関係なく夢は見てるかもだけど、わたしが起こさなくても誰か他の女子が声をかけるかもだし。


「葛西って、結構冷えてんな。コイツの友達だからか? そういうとこ、嫌いじゃないけどな」


「綾希って、面白いよ。普段は真面目系女子だけど、それだけじゃないのがいいとこ」


「へぇ、真面目系か。それもいいな」


 なんて、何か勝手に話のネタにしてるっぽいけど、それよりも昼休憩が残り20分くらいになって、何となく罪悪感みたいなものが込み上がって来て、沙奈に声をかけて先に教室に戻ることにした。


 まさかまだ眠ったままじゃないよね。なんて思ってた。


「マジですか~……」


 一気に罪悪感。女子の人気者だったはずの七瀬は、一度も起きていないっぽかった。これはさすがに。


「ちょ、七瀬……」


「んーー? あれ? どした?」


「や、時間やばいけど」


「はぁぁ!? え、何で? 何で起こしてくれなかったんだよ~……」


「ご、ごめん。妨害したら悪いかなって」


「葛西に起こされるのを待ってたのに~~……マジで泣く」


 七瀬の顔を初めてまともに見れた。見れたのは良かったけど、まるで子犬がキュンキュン泣いたみたいな泣きそうな顔が、何となくヤバい。


 眉毛自分でカットしてんだってくらいに揃えてた。ホントに泣きはしなかったけど、ウルってた瞳が……やばかった。しかも男子なのに肌綺麗だったし。あんまりじっくり眺める余裕無かったけど。


「えと、時間やばいけど付き合うから」


「いい。我慢する。そんかわし、帰り付き合ってくれればいい」


「ごめん、じゃあ帰りなんかオゴるから」


 やっぱり罪悪感。そして、思わず何かが込み上がった。それの正体は自分でも不明。そんな感じで、午後の授業は七瀬のお腹が鳴りっぱなしだった。今度は確実に起こそう。そう思った。

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